「行ってくるよ」
と告げ
「ただいま」
と声をかけ、口づける。
たまに廊下のアル中に声をかける。
また同じ繰り返しの日々が続いたが、秋になった頃 アベちゃんから仕事中にメールが来た。
仕事中は言われた事を素直にしているアベちゃんだが、仕事が終わると違うようだ。
「ドライブ行きたい!」
とメールで指示を出してきた。
この日は無駄話ばかりして、あまり質問はしてこなかったが、途中で聞いてきた。
「結婚はしてないんですよね…?」
「あぁ…してない」
「迷惑じゃないですか?…怒られないですか?」
嘘はつけないので、本心を答えてやる。
「大丈夫だ…怒られないよ。俺もドライブは好きだし、アベちゃんとのドライブは楽しい」
アベちゃんは、また無駄話を始めて、質問をしだした。
「どう思います?」
「これって変ですよね?」
「私、間違ってます?」
いつもの変わらない生活に、またアベちゃんとのドライブが加わった。
また雪が降る季節になった。
アベちゃんは相変わらず無駄話をして質問してくる。
「恋って何ですか?」
「その人を見ると胸が苦しくなる」
「愛って何ですか?」
「その人の為に自分が苦しむ」
「愛って良いもん何ですか?」
「あぁ…良い、とても」
この日は俺も質問してみた。
「クリスマスなのに彼氏とデートしないのか?」
「してますよ。主任と」
アベちゃんはニッコリ笑って帰って行った。
アベちゃんは、まだ恋も愛もよく解らないのだろう。
ケーキ屋に寄り、割引になったケーキを買って帰る。
昔、入院してから煙草も酒もやめたがコンビニでノンアルコールビールとメザシも買う。
アパートに着いて、廊下で寝ているアル中にノンアルコールビールをくれてやる。
この時だけは、起きてビールを受け取り嬉しそうに部屋に戻っていきやがる。
まぁいい。クリスマスだ。誰もが幸せであれば、それでいい。
ドアを開け、ただいまと言って手と顔を洗い、口づけをしてから、ゆっくり風呂に入る。時間をかけて湯につかり、上がってからマンガをペラペラと読む。
日付が変わった。
ケーキにロウソクを1本だけ点け、電気を消し もう一度 口づけてから、メザシをかじる。
ロウソクの灯を見詰めながら、ずっとメザシをかじり続けた。
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