「うちはオッチャンの女やぁ」
そう言ってまりあはニッコリ笑い、テーブルに黒いカバンを置いた。
「そしたらあいつ もう来んでええ言って奥に引っ込んで行きよった。なんやチンケな顔が更にチンケになっとったでぇ…」
俺は黒いカバンを見て聞いた。
「なんだ、これ?」
「玄関にあったんや。あいつ奥に行ったから取って来たったんやぁ。あいつの宝もんやぁ。いつも大事に持っとる」
俺は煙草に火を点け一息吸ってからカバンを取った。
嫌な予感がする。
まりあはあくびをしながら伸びをしている。
まだ長い煙草をもみ消し、目を閉じて考えた。
カバンの中には、白い粉が入った袋が大量に入っている。チンケな男が小遣い稼ぎにする程度の量では無かった。
「これは…返してやろう」
「なんでや!」
「こんな物に関わると、ろくな事がない…」
「なんで返すんや!棄てたったらええんや!」
険しい表情で俺を睨んできてる。
「…危険過ぎる」
「なんでや!棄てたらいいんや!あいつに返す必要なんかないわっ!……それのせいやっ!うちがおかしなったんは、それのせいやっ!!」
「俺達にはもう…関係ない物だ」
今にも唾を吐きそうな勢いで まりあは続ける。
「オッチャンええんか?うちがおかしくなってもええんか?ほかの人がおかしくなってもええんか?…あいつに返したら、また誰かおかしくなりよるで!それでもオッチャンはええんかっ!うちが棄てたるわっ!そんなもん!うちが棄てたるわっっ!」
しばらく カバンに目を向けていた。まりあは俺を睨み付けていた。
さっき消した煙草がくすぶり煙を出している。
まりあの側に行き抱きしめた。
「そうだな…お前の言う通りだ…こんな物は棄ててしまおう」
駅のロッカーにカバンを入れ、カギを交番の前に捨てた。
まりあは不満そうだったが、神社に着く頃には機嫌も直り、二人で詣でた。
おみくじを引くと二人とも、大凶だった。
二人でおみくじを破り捨て神社を後にした。
帰りに色々寄り道をしてると遅くなった。途中のホテルに入り、また何度もまりあを抱いた。
本当に最後の晩餐の様に……
あの時の まりあの肌が今も忘れられない………
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