ある日 まりあが言ってきた。
「なぁオッチャン、バクて ほんまにおるんかぁ?」
「夢 食いよるんやろ?うち見てみたいわぁ」
しばらくたった日曜日の昼をまわってから、車を飛ばし動物園へ連れて行ってやった。
他の動物には目もくれず、バクのとこに行って しげしげと眺めてた まりあは
「これかぁ…なんや、とぼけた格好やなぁ…ほんまに夢食いよるんかぁ?」
と聞いてきた。
「あぁ悪夢を食べるらしいなぁ」
「ほんまかぁ!…悪夢を食いよるんかぁ…その割には白い腹しとんなぁ…。腹黒にならんのかぁ?」
その時 バクがある方向を向いて口をパクリと開けモゴモゴと動かした。
まりあは、その方向に振り向き またすぐバクを見て言った。
「食いよったぁ!ほんまに食いよったでぇ!あの子の悪夢食いよったでぇ!!」
振り向くとベンチに腰掛け男と少女がお菓子を食べていた。
「オッチャン、帰ろかぁ」
バクを見て満足したのか、まりあは出口へと向かって行った。
動物園を出る時、一度振り向くと、リボンを付けた少女が男の手を引き また動物達を見て回っていた。
ある日、回転寿司に行くと酔っぱらった二組の家族が大きな声で話し、小さな子供がはしゃいでいた。
俺は少しイライラしながら寿司を取り食べていたが、まりあは お構い無しにパクパクとなん皿も食べている。
家族連れのオヤジが
ガハハハハ
と高笑いをして周りの連中が迷惑そうな目を向けた。
「ちょっと、トイレやぁ」
まりあは立ち上がり歩き始めたが、トイレには向かわずに家族連れの前で止まった。
「なぁ、静かにしぃーやぁ。うるさいでぇ。」
酔っぱらったオヤジが、まりあの襟元を掴み、まりあのほっぺをペチペチとしながら何か言い出した。
まりあは黙って睨んでいる。
俺は席を立ち まりあの所へ急いだ。
まりあは唾を吐きそうな剣幕だ。
オヤジの腕を掴み力を入れた。オヤジは顔をしかめたが更に力を入れてやった。
それまで楽しむ様に見ていた連れ達が、ようやく止めに入り、俺は手を離してやった。
「まりあ、帰るぞ」
まりあは俺の足元で子供とにらめっこをして笑っていた。
「静かにするんやでぇ」
子供の頭を撫でオヤジに背を向け出口へと歩いて行った。
その夜まりあは寝言を言っていた。
「次はトロとメザシ
握ってんかぁ」
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