その日は土曜日で仕事が早く終わった
いつもの場所で小便をする
夕暮れ時の陽射しが 突き当たりの奥まで照らすが そこに少女の姿はなかった
アパートに着き 部屋に入りドアを締める
少女の姿が頭をよぎったが もう二度と ここには来ないだろうと考えながら
カチャリ
と鍵を閉めた
その夜 何度も ドアの向こうで少女が膝を抱えて泣いてる夢を見た
次の日曜日は 一度も外に出る事なく 部屋で過ごした
月曜日の朝 出勤時に空き地の横を通ると いつも誰もいないのに その日はガラの悪そうな男が三人 奥の方にいた
少女の姿は見えなかったが 男達のにやけた顔が その日一日 頭から離れなかった
帰りに小便をしに空き地へ行ったが 誰もいなかった
ガラの悪そうな男達も 少女も 誰もいなかった
その日 俺は小便を巻き散らかしてやった
ここは俺の縄張りだ 誰も来るな ガラの悪そうな男達も 少女も 誰も来るな
そう言いながら 巻き散らかしてやった
晩飯を忘れてたので 一度駅に戻りコンビニで弁当を買ってアパートへと帰路についた
チカチカと点滅しだしている街灯に照らされ 古びたアパートが侘しく浮かび上がっている
二階へと上がる階段に そんなアパートを更に惨めにさせる人影があった
俺の体中の毛が怒りで逆立ち始めた
階段の途中に少女が膝を抱えて座っていた
横をすれ違っても 少女は ただ遠くを見つめ俺の方を見ない
この前と同じだ 同じような目で遠くを見てる
ただ 違うのは 少女の服は汚れていた 泥まみれになっていた
服もズボンも髪も…
あんなに時間をかけて ハンカチで身体を綺麗にしていたのに
腕も顔も 泥がついていた
地面に転がされたように…
地面に押し付けられたように…
乱暴に服を地面に投げ捨てられたように…
少女は変わらない眼差しで遠くを見ていた
少女の横を通りすぎ 数段上がったところで 込み上げてくる怒りの矛先が解らずに足を止めた
少女は相変わらず ただ 遠くを見ていた
俺にはどうしようもできない そう呟き 涙が溢れてきたので 足早に部屋へ入りドアを閉めた
きっと少女は 無表情のまま遠くを見つめたままなのだろう
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