俺はベッドに横になると すぐに眠りについた
途中 目が覚め 少女を見ると 部屋の隅で膝を抱え頭を垂れて じっと動かなかった
あの体勢で寝ているのだろうか?
上体を起こし時計を見た
まだ夜中だった
少女がまるで 物音に驚いた猫のように ハッと顔を上げ俺の方を見た
ただ見るだけで動かない
俺はすぐに布団を被り眠りについた
またしばらくして目が覚め 少女を見ると さっきと同じように膝を抱えて頭を垂れていた
タバコを吸おうと体を起こすと 少女もまた ハッと顔を上げ こちらをぼんやりと見つめてた
タバコを吸い終わり 少女に背中を向け布団を被るまで 少女は ただずっと こちらを見ていた
布団の中でしばらく考えた
薄汚い野良猫のように空き地に済み オス猫に交尾をされて ハンカチで一生懸命 身体を拭く少女
唯一の持ち物である そのハンカチを取られ 必死に取り返そうとする少女
綺麗に伸ばされ干されたハンカチを じっと見上げる少女
少女はハンカチで身体を拭く事により 野良猫では無く 人であり続けようと
人としての本能を
ちぎれそうな糸を なんとか保ち続けようとしているのだろうか……
アイロンあったっけな?
そんな事を考えながら いつしか眠っていた
次に目が覚めたのは いつもの目覚ましの音が鳴ってからだった
部屋の隅に少女はいなかった
テーブルが 電球の下まで動かされていて 洗濯挟みが 二つ置かれていた
ハンカチは無く 少女の靴もなく 玄関の鍵が開けられていた
少女は野良猫の様に 音もたてずに どこかへ消えていった
次に少女に会った時には ハンカチで身体を拭くぐらいで 人で あり続けるなんて 無理なんだろうと思わされた
この少女を包んでいる 悲しみは ハンカチなんかで拭えるものでは無かった
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