テーブルを挟んで 大人になった少女が喋っている
随分とお喋りになっていた
表情は悲しい顔をしてるが 目はあの時のような悲しい目ではなかった
「あの人は悪くないって言っても誰も信じてくれなかった。会いに行くって言っても、駄目だって許して貰えなかったの…」
俺もそうだ…だから忘れようとしたんだよ
駆け回る猫を檻に閉じ込め心の隅に隠したんだよ
「でも…もう自分で決めてもいい年になったから…会いに来たの」
そんな事 言うなよ
また 檻から猫が飛び出したじゃないか…
「ごめんなさい」
大人になった少女は 自分のせいで俺に迷惑をかけたと謝った
俺や俺達は あの少女に謝っても謝りきれないのに…
「ありがとう」
大人になった少女は 俺に沢山の愛を貰ったと感謝した
あんなもんなら 幾らでもくれてやる
しかし俺は あの少女に全ての愛をあげて 笑えるように願ったんだよ
だから…もう これっぽっちも愛は残ってないんだよ
だから 誰も愛せないんだよ
そして大人になった少女は
笑った
あぁ良かった…
俺の愛も無駄にならずにすんだ…
良かったよ…
本当に 良かった…
大人になった少女は 似合わないバッグから 本を取りだし俺の隣でページを開き動物を説明してくれた
「この子は、大きかったけど…あなたの方が私には大きく思えてた。この子は恐かったけど、あなたが側にいてくれたから平気だった。」
ページをめくり更に説明してくれた
「この子は寝てばかりだったから言ってあげたの。一人は寂しくない?私は、この人と一緒に寝てるんだよって」
俺は肩を抱き寄せた
大人になった少女は 更にページをめくる
「この子達は、空を飛んでたから、私も飛べるんだよ!高いところにあるハンカチに息を吹き掛けられるんだよ!って教えてあげたの」
大人になった少女は ずっと説明してくれた
ページをめくる度に 俺の手に涙をこぼしながら…
最後のページをめくると男の顔を書いた1枚の絵が挟んであった
「この人は、いつも言ってくれてたの。笑え 笑えって。いっぱいの愛をくれてたの…」
大人になった少女は俺を見て言った
「会いたいって、ずっと思ってた…あなたは?」
俺は答えた
「あぁ…忘れてたよ」
※元投稿はこちら >>