仕事が終わり 今日も俺は張り紙をつけて町を歩く
別に深い意味はないが こんな事ぐらいしか やる事がない
この町にもだいぶ慣れた
誰も知らないし 誰も俺を知らない
自分の事だけで精一杯で 誰も俺を見向きもしない
それが良かった
俺は この町に馴染み始めていた
この町も そう悪くはない
だがこの町には野良猫が多すぎる
俺は 野良猫 が嫌いなんだよ
野良猫に 餌を
与えないで下さい
俺は張り紙をつけて町を歩く
野良猫なんて いなくなればいい
そう思いながら…
すぐに野良猫達が 俺の足元に 鳴きながらまとわりつく
「もっと ちゃんと生きてみろよ!人に媚びずに生きてみろよ!」
俺は足元の野良猫達を足で蹴散らし 次の場所へ行く
遠い 昔の事だけど 立派な野良猫がいたんだぞ
もう思い出せないくらい昔の事だけどな…
歩いていると また前の方に野良猫が1匹いた
じっと俺を見てる
俺は野良猫が嫌いなんだよ 思い出せないんだよ
近づいて行くと 随分と綺麗な野良猫だった
やけに立派だな
野良猫じゃないのか…
なら俺に構わない方がいい
すぐに この町から出ていくんだな…
横を通りすぎたところで その猫が鳴いた
まるで あの時の少女が俺に動物の説明をするように 澄んだ声で鳴いた
やめてくれよ…
俺は思い出したくないんだよ 何も出来ないし 会っては駄目なんだよ
野良猫で無ければ 蹴散らかす必要もない
好きにすればいい
猫は黙って俺に着いてきた
毛づやを誉めてやりたかったけど ごめんな 涙が溢れて振り向けないんだよ
何も出来ないが お茶くらい飲んでいけばいい
猫を家に招き入れた
テーブルを挟んで猫が 一口お茶を飲んだ
綺麗になったな
けど そのバッグは似合わないな
昔 俺が捨てようと思っていたバッグに似てる
それは野良猫にしか似合わない
俺も 年をとっていたんだな
あの少女が こんなに立派な大人になっているとはな…
大人になった少女が鳴いた
「お久しぶり…」
瞳から涙を一筋 流して また鳴いた
「…やっと会えた」
俺も 泣いた
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