なんなんだよ…
こんな健気で無邪気な少女が何をしたんだよ…
なんで心配してるメールがないんだよ…
空き地で膝抱えて寝てたんだぞ
泥だらけに アザだらけに されたんだぞ
自分のしてたブラが見つからず一所懸命探しても無くて 怒りもせず泣きもせず 無表情にただ
「探したけど無かった」
て言ってんだぞ
誰も助けてあげないのか?心配しないのか?
どれだけ見ても まともな内容など無かった
クラスメートからも お母さんからも
怒りからか…悲しみからか…虚しさからか…涙が止まらなかった
携帯を閉じると スッと手から抜かれ 少女が電源を切り バッグの底に入れた
そうやって 自分の心も切って 底に押し込んでいったんだな…
ごめんな…
笑えないよな…
泣けないよな 怒れないよな 感情を殺していかないと野良猫としても生きていけないよな……
少女が電球の下で背伸びをして 何かを引っ張り 洗濯バサミが一つ落ちてきて 俺の顔にハンカチがあてられた
止まらない涙を 少女は無表情に拭いてくる
自分の涙も拭いてたんだろうが その涙も枯れて もう泣くのも辞めてしまってるのに
ごめんな…
もう少しだけ 泣かせてくれ…
すごいな… このハンカチ… なんだか幸せな気分になってきたぞ…
宝物だな…
毎日 魔法の力を吹き込んで 揺れてたもんな…
俺は少女の顔に手をやり 親指で口の両端を押さえ 上に曲げた
でも 笑ってくれよ…
せめて この部屋では 俺の前では
少女も俺の口に手をやり上に曲げてきた 唇が僅かに動いた気がした
…なんか言ったか?
《 笑って 》
そう聞こえたぞ…
少女の口から手を離し 代わりに 少女の鼻を 上に押し上げてやった
無表情な少女の顔が子豚のような滑稽な顔に変わり 俺は思わず笑ってしまった
少女は慌てて 俺の手を振り払ってから 同じように俺の鼻を押し上げてきた
俺の顔も滑稽になった
少女は無表情だったが 口は大きく上に曲がったままだった
俺の膝の上でテレビを見ながら 時々振り向く少女の顔は いつまでも 口が上に曲がってた
親の分も友達の分も 俺が愛してやるよ いっぱい愛してやるよ
今夜もいっぱい愛してやるから 覚悟しとけよ
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