この日の土曜日も仕事が早く終わったのですぐに帰る
空き地の横を通ると 工事車両が止まり そこにあったモノたちを車に積んでいて 工事の看板が立て掛けられていた
変わり始めた
小便をしていた場所が…
少女がいた場所が…
街が… 空気が…
全てが…
変わり始めた
アパートまで帰る間 ずっと気になってた事を考えた
少女の親はどうしているのだろう?
探しているだろう…
心配で夜も眠れずに 探し回っているかも知れない
近所の人やクラスメートや担任 いろんな人がビラを配り 声を張り上げ探しているかも知れない
警察も…
だんだんと不安になり あの寂れたアパートをパトカーが取り囲み 俺の部屋にズカズカと警官が入り込んで 少女を抱えて連れ出してるんじゃないかと
嫌な汗が流れ出してきた
少女が携帯を持っていた事で安心し 親や学校の事に触れないように…その事で少女が消えてしまわないように…と ごまかしながらきたが ちゃんと聞かなければ いけない
ちゃんと返してあげなければ いけない
俺といる時には 少女の携帯が鳴った事も 少女が携帯を触る事もなかったが
俺のいない昼間に 連絡をとっているのだろうか?
確かめてみよう
そう思った
アパートのドアを開けると 最近は部屋から顔を出して出迎えてくれてたのに そこに少女の顔は無かった
けど いつもより帰りが早かったせいか すぐに慌てて少女が顔を出して出迎えてくれた
警官の姿もなく いつも通りの部屋で安心した
俺が着替えてる間 少女はテーブルでチラシの裏に絵を書いていた
俺が座るとすぐに俺の膝に乗り 絵を書き出した
書きかけだったのか 見て直ぐになんの絵か解って 嬉しくて笑いそうになったが 笑えなかった
描き終えた少女が 振り向いて 照れ臭そうに 俺を見た
「ああ…上手だな」
と頷いてやった
男と女の子が手を繋ぎ並んでいて 女の子の服装は 今の少女と同じ服装だったが 何故か服の上からブラジャーをしていた
二人の頭の上ではハンカチが揺れて 男は楽しそうに口が大きく上に曲がり笑っていた
少女は別の紙に色んな動物の絵を書き出していた
連絡してあげないと…そう思いながら眺めてた
楽しそうな男と女の子の微笑ましい絵だったが
女の子の顔には 目も鼻も口も無かった
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