はっきり覚えているエピソードを一つ。
中学1年の秋分の日、いつもの様に俺の部屋で三人が集まり、宿題をやっつけて駄弁っていた時の事。
何がきっかけだったのか分からないんだけど、由希子とホーコが口論になった。小さな言い合いは何度もしてきたけど、この時はいつもと違ってどちらも引こうとしない。
「お前らいいかげんやめろよ」と言ったところで文字通り焼け石に水。まあ口論ってことは口喧嘩なわけで、ヒートアップした挙句に当然のようににホーコがコテンパンにされてしまった。
いつもならここで由希子が自分も悪かったと謝って喧嘩終了になるんだけど、この時は余程我慢ならなかったのか、とうとうホーコが由希子を殴ってしまった。
折角収束しかけたのに、取っ組み合いの喧嘩になってしまった。
間近で見たことある人なら分かると思うけど、女子の喧嘩は、実に恐ろしくおぞましい。あまりの迫力に俺はどうすることもできず、あわわあわわと右往左往するだけだった。
体力ではホーコが圧倒的に勝っていたので、こうなると由希子に勝ち目はない。優位に立って調子に乗ったホーコは何を思ったのか、由希子の腕を締め上げて自由を奪い、スカートをまくりあげた。
わざわざ目の前にいた俺に見えるようにしたのかはわからないけど、その時の淡い水色のショーツは今でもはっきり覚えている。
「キャー!」
と聞きなれない可愛い悲鳴をあげた由希子は、振り向きざまに「なんてことするのよ!」とばかりにホーコの胸を両手でどんどんと叩いた。するとホーコはまたも由希子の自由を奪い、スカートをまくりあげた。『オイ、よせよホーコ』と思った瞬間、ホーコは由希子のショーツをガバッと膝まで下げたのだ!
『!!!』俺はそれをモロに見てしまった。
「ギャーーーー!」
と更に聞きなれない恐ろしい悲鳴をあげた由希子がその場に座り込んでその喧嘩は止まった。
由希子が泣きそうな顔をして俺をチラっと見て
「見た!?」と聞くので
「え、あ、う、うん」と答えると真っ赤になって突っ伏してしまった。
そんな由希子を見下ろしながら
「フン、私に勝てると思うなよ」とのホーコの台詞を最後に、沈黙がその場を包んだ。
突っ伏してる由希子とまだ鼻息の荒いホーコを目の前にして、俺はなんとも居心地が悪く、自分の家でなかったらすぐに逃げ帰っていたと思う。
しばらく続いたその沈黙を、最初に破ったのは由希子だった。
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