お昼になって裕未がキャンプから帰ってきた。
日に焼けて子供っぽさが増したような顔で、二日間の顛末を話しながら、亜季と並んでそうめんを食べてる。
「裕未ちゃんのテントに男子来た?」
「ぶふぉ!」
亜季が唐突に切り出した質問に、裕未はそうめんを吐き出すという返事をした。
「な、何言ってんのよ亜季は」
「え、夏のキャンプ。小学校最後の思い出。夜のテントは男女入り乱れての思い出づくり」
「ないないない!何なのよ、その設定。確かに恋バナとかで盛り上がったけど、男子をテントに入れるなんて無防備な事、私はしませんでしたよ」
「ふーん。私は、ということは、無防備な女子もいた、ということかな?」
そして裕未は俺の顔をチラッとみた。親には言いにくい話のようだ。
「いたかもしれないけど、私は知らないよ」
「ふーん」
ジト目の亜季。面白そうだったんで俺から振ってみた。
「そうかー、俺は女子のテントに入ったけどな」
「はあ!?」
「6年生のキャンプだろ?俺の時代にもあったもん。女子のテントまで行って入れてくれって言ったんだ」
「なんという勇者!ひとりで?」
「まさか、友達3人で行ったんだけど、『貴志くんだけなら入っていいよ』って言うんだよ」
「で?」
「そうなりゃ俺だけ入るしかないだろ」
「お父さんに友達あんまりいない訳がわかったわ」
「たっくん、それはないよ」
「え?でも野郎とはいつでも遊べるやん。女子のテント潜入なんてイベントは一生に一度あるかないかだぞ」
「まぁ確かに・・・。で、テントに入って何したの?」
「男子の誰がどの子を好きなんだとか情報よこせ、みたいなくっだらねー事言ってきたんで、適当に嘘ついといた」
「うそぉ?」
「あいつとあいつはデキてるとか、あいつはホモだとか、あいつは妹命だとか」
「あー、たっくん、それで何人かの人生狂わせたねー」
「そうか?男子の間ではネタだったんだけどな」
「いやー」
「で、そのうち女子どもが勝手にテンション上がっちゃって、狭いのをいいことに揉みくちゃにされてなー」
「(ゴクリ)、それで?」
「狭いテントの中で暴れるもんだから暑くてな、だんだん俺も女子も着てるもん脱いでったんだよ」
「(ゴクリ)、それからそれから?」
「た、たっくん、その続きって、裕未ちゃん聞いて大丈夫なのかな?」
「何よ亜季、ワタシは大丈夫なんだけどーみたいな言い方して」
「あー、大丈夫大丈夫、所詮小学生、子供のすることなんだよ。結局あいつらちんぽ触りたかっただけだったんだよ」
「ち、ちんぽ!?」
「大丈夫じゃないよ!アウトだよ!」
「セーフだって。裕未だって興味あるだろうに」
「な、な、な、な、ないよ、あるわけないよ」
「それはオカシイぞ。女子として異常だ」
「それよりその後どうなったの?」
「どうもこうも、そんなに興味あるならと思って好きに触らせてたら、3人ともちんぽいじるのに夢中になっちゃってお喋りしなくなったんだよ」
「ちんちん出したの!?」
「まさか、まだその時はズボンの上からだよ」
「まだ!?」
「結構頑張って我慢してたんだけど、だんだん怖くなってな」
「怖い!?」
「だって、『○○って○○○り○○の○○に○○ると○○○○んだよね』とか言ってズボンとパンツ下ろされたんだもん」
「マジー!?やったの~!?」
「やるかよ。さすがにこれ以上はヤバそうだったんでー、、、逃げた」
「逃げたぁ!?うわー、チキンすぎるー」
二人同時にがっかりされた。よく考えろよ、オマエ達。がっかりしない展開だったらいろいろと崩壊するかもしれないのだぞ。
ちなみにその時の女子というのは、剛蔵久美子と鮎滝友美、そして柿畑穂子だったのは内緒だ。
「だってその頃まだ俺はエロに目覚めてなかったし、それがオイシイ状況だなんてひとつも思わなかったし」
「たっくん、うぶだったんだね~」
「そして男子のテント区域に戻ろうとしたらそこに担任がいたんだなー」
「うっわ、最悪」
「そのまま先生のバンガローに連行だ」
「なんでバレたの?」
「たまたま巡回してたんだって」
「テントに入れなかった2人が仕返しでチクったんだよ」
「友達を疑うもんじゃないぞ」
「無駄に良い奴なんだよね、たっくんって」
「無駄とか言うな。でもそのバンガローに既に女子が一人いたんだよ」
「は?まさかその女子は男子のテントに入ってたとか?」
「正解。ちなみに、その女子が由希子、裕未のママだ」
「はあ!?やめてよ!ママのイメージ壊さないで」
「いや、この時の事がきっかけで俺とママは仲良くなったんだ」
「マジ?で、何があったの?そこで?」
「詳細は秘密。」
「えー、ずるいー、そこまで話して、ね、亜季も聞きたいよね」
「え、いや、私は別に・・・」
亜季が何故か汗だくになってお茶を飲んでいた。
「そんなママ絡みの重要懸案、娘の私に話せない理由を10字以内で延べよ!」
「ママとの約束だから。」
「うわ、ちゃんと9文字だよ。」
「侮るな、句点を入れて10文字だ」
「うーーー」
「諦めろ、お前も俺に秘密の一つや二つだるだろうに」
「え?ないよ、そんなの。私はいつでもどこでも公明正大な正直者で通しています」
「えーっと、先生の電話番号は、っと」
「すみませんでした!ウソでした!かんべんしてください!」
実にあっさり土下座した裕未。その潔さと姿勢は実に美しく、俺と亜季は思わず拍手してしまったのである。
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