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「どう?私の姿、ちゃんと写ってる?」
「悔しいけど、ちゃんと写ってる」
「じゃあ、疑惑は晴れたわけだね」
彼女に肩を抱かれ、理人は口を尖らせてゲーム機を畳んだ。背面からの熱が指につたわってくる。
「きみのお願いは聞いてあげたんだから、今度は私の番ね」
そう言って遥香は今度こそ着衣を一枚脱いで、シャツ越しのほっそりした身体の線を嫌みなく披露した。出るところは出て、くびれるところはしっかり締まっている。
「幽霊じゃ……ない」
当てが外れて無気力になりかけた理人だったが、彼女が放つ花の匂いに誘われて、今そこにある未知の領域に鼻を近づけていった。そうして顔面が柔らかい場所に着地すると、まずは深呼吸した。
すう……、はあ……。
果物の甘い香りとも言えない大人の匂いが胸いっぱいにひろがる。
「お姉さんは何をされても平気だから、好きなように甘えていいよ」
そんなことを囁かれて、しだいに異性に目覚めていく理人。遥香に誘導されている自覚もないまま、気がつけば彼女は着衣を乱してブラジャーとショーツを晒し、理人の指がその敏感な辺り一面をいじくりまわしていた。柔らかいのを通り越して、もはや彼女自身が溶けてしまっているような感触さえある。
「あん……。上はもっとつよく……、下はもっとやさしく……。んくん……」
『病弱な転校生』を思わせる謎めいた翳りのある人だ──と理人は未熟ながらに思っていた。なぜなら理人は、子どものフリをした大人だったからだ。遥香もそれを見抜いている。
「女の子の扱い方を……、きみはどこで覚えたの?」
そんな彼女の問いかけに、理人は愛撫で返答する。そこに何かの文字を書いていくみたいに、下着の上に指で線をひいて、とめて、はねて、はらう。
その度に意識をさらわれる遥香の眼は、遠くを見ているようで、けれどもじつは理人の指の行き先を追っていた。胸の先端、膣の入り口、クリトリス、それらをいたずらする少年の指使い。
「もう……いい……いく……くふ、いっちゃ……」
遥香がエクスタシーに達しようとした瞬間、理人の指が止まった。
「どうして泣いてるの?」
と理人。
彼女は涙ぐんでいた。快感がそうさせていることに気づいたとき、頭の中が熱くなった。自分の行動に責任を持とうなどと考える理性もなく、遥香は下着を脱ぎ捨て、乳房と女性器を露出した。
少し大きめのニキビみたいな可愛らしい乳首が二つ。女性の身体の一部とは思えないほど、ぐにゃぐにゃと貝割れした皮膚と、皮が剥けた小豆。
「こっちも泣いてるね」
と理人が見つけたのは涙じゃなくて、豊かに溢れ出す愛液だった。さらによく見ると、遥香の体内から一本の白い糸がひょろっと顔をのぞかせている。
「ねえ、これなあに?」
「引っ張ってみたら……わかるよ……」
わけがわからないまま理人はその糸を摘んで、ゆっくりゆっくり引き抜いていく。見るものすべてが珍しい年頃だから、彼女の中から出てくる物が赤くなくても、それはそれで納得できてしまう。
穴の両側を広げながら、白い塊がスルリ……スルリと這い出てきて、ぽとんと床に落ちた。
「うわ。出たよ」
「なにが……出たのかな?」
「これって、麦茶のティーバッグみたいなやつ?」
「タンポンっていうの。女の子が使う生理用品だよ」
「ふうん……」
理人は生返事をして、それを振り子のように揺らしてみせる。
遥香は生理日ではなかったから、タンポンが吸収しているのは彼女の興奮状態を示す体液であって、経血ではない。水分で重くなったタンポンの下から液が垂れて、おもしろいようにそれが糸を引いて飛び散る。
その様子を見ているだけで、自分の性欲も左右に揺さぶられているようで、遥香は見境なく異物が欲しくなった。
「理人くん……、おねがい……、入れて……」
言い終えずに彼女は慣れた手つきでオナニーをはじめた。
理人がその様子を撮影する。メモリーカードがいっぱいになるまで、何度も何度も遥香を撮りつづけた。
「あん……撮っちゃだめ……、はあうん……やめて……」
口では拒否しているくせに、かならずどれかの指が膣をこじ開けて、愛液の太い糸と細い糸がネバネバと絡み合っている。
きっとボッチとハカセもこれとおなじ体験をしたから、翌日に変な熱を出して寝込んでしまったのだろう。免疫があるかないかの違いかもしれないな──と理人は思った。
「私のバッグを……開けてみて?」
遥香の声は震えていたが、理人にはじゅうぶんつたわった。彼女の傍らに置いてある女性物のバッグを開けてみると、分厚い手帳と文房具、さまざまな化粧道具に化粧品、その他用途不明なものがいろいろと入っていた。
「なんでもいいから、ここにちょうだい」
遥香は器用な指を生かして陰唇を左右にめくり、プライベートルームに招き入れるように両脚をM字に開いた。
数分後──。
遥香は身悶えていた。アニマル型のクリップで乳首を挟み、肝心の膣には大小さまざまな異物が束になって入っている。
ペン、スティックのり、携帯用スプレー、マスカラ、それにヘアブラシ。異物同士がカチャクチュとひしめき合って、彼女の子宮を突いている。
「あぐ……うぐん……。ああんいく……いく……いくいく……」
足の指で床を引っかいたり、乳房を揺らすほど呼吸を荒げたりして、遥香はあっという間に絶頂した。
そうして書棚に背中をあずけて痙攣を沈めていると、理人がまた異物たちを膣に立ててくる。
「はぐうっ!」
天使のような顔をして、悪魔のようないたずらをつづける少年。
遥香はまた逝った。失禁した実感もある。苦悶と快楽が入り混じった表情をしているに違いない──と我が身を心配した。
「僕に遊ばれて、楽しい?」
彼女は激しい吐息の中で、なんとか肯定の仕草をした。意識も危ない。もうだめかもしれない。けれども身体は逝きつづけている。
窓の外から洩れてくる蝉の鳴き声は、七日間ある命のうちの何日目の鳴き声なのだろうか。そんなことを考えながら、遥香はふたたび果てていった。
*
つづく
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