行政の説明会の帰り、ついでにスーパーへ夕飯の買い物に立ち寄った。
「今夜はすき焼ね」
という声とともにカゴが重くなる。見ると里奈が笑っていた。
「おっと、里奈ちゃんか。ん?こんな高い肉いらんよ」
と笑うと後ろにいる背の高い子に気付いた。
「へへっ、あ!あかりちゃん、おじさま覚えてる?」
あかりと呼ばれた子は頷き頭を下げた。
「確かキミは…海にいた…よね?」
「はい。こんにちは」
「こんにちは。うん、一番美人でポニーテールだったね?」
「あ、そうです」
「ええ~里奈は二番目?」
「ああ里奈は一番元気な子だったよ(笑)」
ふくれた里奈の頭を撫でる。
「あかりちゃん、こないだ話したおじさま。色々と教えてくれた」
「いろいろ…私も教わろうかな(笑)」
「ケーキ作りとかならいつでも教えるよ?」
「あれ?まだ教わってないよ。こんど作って!」
と笑う里奈の横であかりは恥ずかしそうにうつむいた。
「明日ね運動会だからおやつ買ってきたの」
「里奈ちゃん、体育祭だよ」
「そうだった(笑)おじさま見に来る?」
「残念、明日も仕事なんだよな。転ばないように頑張って、あかりちゃん」
「はい、頑張ります」
「あかりちゃんだけ?」
「ん?里奈も元気に走りなさい」
「元気ばっかり(笑)うん、じゃあまた遊びに行くね。あかりちゃん行こ」
あかりはまた丁寧に頭を下げ二人は出口に向かった。
夜に里奈からメールがあり、ずっと前に幼馴染みの朱理には初体験の話をした、とあった。
まいったなと思いながら、ラインやメールを他人に見られないように念を押す。
翌週の土曜日に二人を部屋に招いてケーキを焼いた。
「オーブンを温めて、粉を混ぜ卵と砂糖を入れて…」
と基本になるマドレーヌを教えてみた。
キャッキャと笑いながら手伝う二人に癒される。
焼き上がりを待つ間に朱理は料理本を、里奈は雑誌を眺めている。
里奈がトイレに立った時、朱理は
「あの…本当に里奈ちゃんとエッチしたんですか?」
と真顔で聞いてきた。
「えっ!あっと、教えた。悪い大人だよね」
「ううん、違うの。里奈ちゃんすごいなって…」
「朱理ちゃん好きな子いるの?」
「今は…あの…」
とこちらを指差してうつむく。
「えっ!それは、かなり嬉しいね。ありがとう」
と頭をポンポンと撫でた時、ちょうどマドレーヌが焼き上がった。
紅茶を淹れ食べさせると二人はお店のみたいと驚く。その笑顔にまた癒された。
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