――第46話――
どうしよう・・・・。
浮かれていた自分が悔やんでも悔やみきれない。
でも、ここで悩んでいたってしかたがない。
シホは、外に飛び出して、助けを呼ぶべきかと考えた。
もし、父が襲いに来たのなら、事態はかなり切迫している。
トリヤマたちも、たぶん一緒だ。
過去にも、何組かの母子を誘拐したことがある。
手際がよくて父が褒めていた。
もし、彼らも一緒なのだとしたら、とても逃げられない。
でも、そうじゃなかったら・・・・。
都合のいい展開がシホの頭に浮かんでしまう。
間違いだったら、人騒がせな近所迷惑をかけてしまうだけになる。
信じたくない気持ちが、無理に気のせいだとシホに思い込ませようとした。
2階の隣りに住んでいるのは、海上保安官の家族。
以前、緊急な呼び出しを受けたらしく、やはり今と同じように夜中に慌ただしく出掛けていったことがあった。
今夜も、きっとそうに違いない。
無理に思い込もうとしたけれど、今夜は出掛けたのではなく、こちらに向かってきた。
2階に上がっていった足音は、あれからまったく聞こえてこない。
シホの部屋は、2階の南側にあって、タカの部屋は1階の北側にある。
対照的な位置にあるから、床の軋む音もまったく聞こえてこなかった。
やだやだやだやだ・・・。
泣きたい気持ちになった。
でも、ここにじっとしているわけにもいかない。
部屋には、コトリがひとりで眠っている。
あの子をこのまま放って置くわけにはいかなかった。
足を震わせながら、シホはそっと窓に忍び寄って外の様子を確かめようとした。
そのときだった。
「キャアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァッァァッッ!!!!!」
突然聞こえてきた叫び声。
あれはまさしくコトリの悲鳴。
コトリっ!!!
下着姿なのも忘れて、シホは裸足のまま玄関を飛び出した。
「コトリっ!!!」
外に飛び出して見上げてみると、どたん!ばたん!と、もの凄い音が自分たちの部屋から聞こえてくる。
なに?いったいなにが起こってるの!?
その時、不意に視界を塞いだ黒い影。
「お前、ツグミだな・・・。」
見知らぬ男が、目の前に立っていた。
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