2階を見渡しても掃除どころの話ではない。床一面に埃やら藁屑が覆っていた。(掃除なんか何処すんだよ。)藁の束も多くある。一束を10束合わせたように縛ってあった。人の背丈ほどのサッシ戸と窓ほどのサッシ戸が各一箇所ずつ有るだけだ。廻りを見渡しているとオバサンも梯子をあがって来た。手には空の木桶を持っていた。「おばさん…取り敢えず、ホウキで掃くか?」手の付けようが分からなかった。「茂坊…戸開けろ。」その言葉に習いサッシ戸を開けた。外気が入り床の塵が少し舞い上がった。緑の山並み、田畑を耕す人々…機械の音…其処には確かに生活感が感じられていた。「ようやく一年が始まったようだな…」おばさんも後ろから眼下の様子を伺っていた。「茂坊…まず座れ…」埃に覆われた床に腰を下ろした。「茂坊…私が言うことを想像してみろ…目を瞑ってな…」突然の言葉に黙って頷いた。言われた通りに目を瞑って次の言葉を待っていた。「今、茂坊はスーパーにいる…買物してるんよ。目の前には御婦人が買物カゴを持って色々と見ている。歳の頃は…そうだな、50歳かな…。近くには少年がいる。」おばさんの話しを頭の中に映写しながら想像していた。スーパー…50歳くらいの御婦人…少年…別に珍しくもない登場人物と背景である。「茂坊はどう感じる?」またしても意味の分からない質問であった。おばさんは、遠くの山々を眺めるように話していた。「いや…親子で買物しているくらいしか…思いつかねー。」「親子で買物か…それもあるな…」親子で無くても互いにスーパーに居る事だけである。「おばさん…何聞いてんのや?」謎解きゲームのような会話に悩んでいた。
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