出口を遮られ、頭が恐怖でいっぱいになる。
今帰っていった女性は、あのグロテスクなモノで輪姦されていたのは明らかだった。
「まぁまぁ、そんなに怖がらなくても、今日は慰謝料の話をしに来たんだろう。さぁ、こっちに座って」
出入口を塞いでいた男に背中を押され、奥のソファに突き飛ばされた。
「くおらっ!テメー大事なお客になんて真似しやがる!」
若い男の腹に、男の蹴りが入り、床に倒れた男のボコボコに蹴りつけた。
「奥さん、躾がなってなくてすみませんねぇ、さぁ座って」
ソファに倒れ込んだままだった絵梨子を、優しく肩に手を添え、ソファに座り直させる男だった。
男の名前は近藤琢磨、このサラ金の社長だった。
「そんなに緊張しなくても大丈夫よ、乱暴な事は私達がさせないから安心して。まずはお茶をどうぞ」
30代位の女性が、ソファの前のテーブルにお茶を置いた。
ひと目で判った、このチャイナ服の女性が母親だと。
大きく開いた背中には、観音様の刺青で覆われ、スリットからはみ出した脚には、太腿から足首まで龍の刺青が絡みついていた。
そしてその顔は、化粧をしているが、間違いなく昨日の娘と同じ顔をしていたからだ。
もちろん、この女と娘が同一人物だとは、絵梨子は気付くはずも無かった。
女の名前は如月麗華29歳、琢磨の愛人である。
普段は、SMクラブのオーナー兼女王様をしている。
麗華の本質は琢磨にだけ見せるドMだが、ドMだからこそ女王様の指導はズバ抜けていた。
「さぁ、冷めないうちにどうぞ、“美波絵梨子”さん」
いきなり、絵梨子は自分の旧姓を呼ばれて驚いた。
「えっ?どうして私の旧姓を」
「うふっ、さぁ飲んで」
麗華が、絵梨子が手にしたカップを口に付けてゆっくりと飲ませる。
「新しいお茶、淹れ直してくるわね」
麗華は、空になったカップを手に、給湯室に消えていった。
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