「もう、、、そんなこと言われたら本気にしちゃうからね、、、」
おどけたように聞いてくる。
こんなに可愛い人だったんだ、、、
「本気にして下さい、、、」
「彼女に怒られちゃうよ?」
「いません、、、別れました、、、」
泉への未練などまるで無かった。
彼女への思いは跡形もなく消えていた。
そう、、、あのオンナは今、砂田とセックスしてる。
そういうオンナだ、、、それだけだ、、、
「そうなんだ、、、でもわたしも人妻だよ、、、」
「そうですね、、、でも美術館ぐらい、いいんじゃないですか?」
「そうね、、、でもいい年をした二人が美術館通い、、、なんだか枯れてない?」
「高校の時もそうだったから、、、今日も天気だねとか、、、そんな話しかしなかったじゃないですか、、、」
「本当にそう、、、良く覚えてるね、、、」
「飛澤さんは特別な人にしか心を開かないんだと思ってました、、、」
「子供だったの、、、恋する乙女だったんだよ、、、」
「えっ、、、誰に?」
「それは、、、教えない、、、」
「まあ、そうですよね、、、」
「フフッ、、、そうね、高村くんが結婚するとき教えてあげる、、、」
「分かりました、、、愉しみにしておきますね、、、」
「うん、、、それからもう、お互いに敬語はやめない?二人きりのときは、、、ね、そうしよう?」
いたずらっ子のように微笑む智恵がとても魅力的に見えた。
「はい、努力します、、、」
美術館を見て回った後、二人は食事をした。
その後、二人は隣接する公園を散歩した。
話は弾み敬語交じりの会話も次第にほぐれていく。
ベンチに並んで腰を下ろし乾いたのどを自販機で買った飲み物で潤した。
周りに人はいなく二人きり。
「高村くん、、、聞いてくれる?」
智恵の声がしんみりしている。
「俺で良ければ、、、」
「うん、、、高村くんに聞いて欲しい、、、」
智恵は意を決して話し始めた。
「わたし、、、夫とうまくいってないんだ、、、」
結婚して三年経った夫はひと回り年上。
名家の家柄で取引先の部長だった夫が智恵を見初め半ば強引に縁談を持ちかけた。
相手の家柄もあり両親は両手を上げて賛成。
周りの勧めもあり相手も年は離れているが見た目も
悪く無く誠実で優しい人柄だったから求婚を受け入れることにした。
初めの一年は良かった。
夫も義理の両親も智恵のことを大切にしてくれた。
しかし二年目の途中から風向きが変わった。
しきりに後継ぎを催促されるようになった。
夫が40を過ぎたこともあるのだろう、智恵に接する態度があからさまに変わっていった。
「いくら美人で仕事が出来ても子供が出来ないんじゃね、、、第一うちに嫁に来たのに仕事をしているのがいけないんじゃ無いの?」
義母に至っては露骨にそんなことまで言われるようになった。
仕事を続けることは元々結婚する条件として智恵が前もって伝えていたことで義両親も受け入れてくれたはずだ。
まだ結婚して二年も経っていないのに、、、
夫は智恵を庇うどころか一緒になって冷たい目を向けるようになった。
そして半年前からはほとんど夫婦らしい会話も無くなり、まるで家庭内別居のような状態になっている。
「そんな、、、だってまだ結婚して三年しか経ってないんでしょう?これからだっていくらでも、、、」
「ううん、、、もうむこうはわたしには子供が出来ないと決めつけているの、、、今日だって本当はゴルフじゃなくて他のオンナに逢ってる、、、そして義父も義母もそれを認めてる、、、」
「そんなのおかしい、、、酷すぎる、、、」
「でも、五木田家にとってはそれが当たり前なことなの、、、」
「そんな、、、」
「わたしも悪かったんだわ、、、愛していない人と、周りにいくら勧められたからといって結婚したんだから、、、それでも幸せになれるんだろうと簡単に考えてた、、、だからバチが当たったんだね、、、」
つづく
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