翌日…朝の業務開始と共に、未鈴は自席にて貸与のノートパソコンを開き日々のルーティンである業務連絡のチェックや指達を行っている。その業務連絡に紛れて蛭間からのメールがある事に気付いた。
【課長おはようございます 早速ですがメールに添付したテキストを開いてください】とある。
それだけの蛭間からのメールであった。通常なら例え同僚からであっても不要なファイルなど開くはずもない未鈴であったが、相手が蛭間とあれば従わざるを得ない。
添付されたテキストをクリックすると、何らかのアプリが勝手にダウンロードされると共に突然未鈴のノートパソコンに新たな画面が開いたのだ。その画面を見た瞬間、咄嗟に未鈴は自分の両脚を横に背けたのだった。
未鈴の目を奪うデスク上のノートパソコンの画面には、前面に2画面の映像アプリが勝手に立ち上がっている。一つは正面から見た未鈴の腰から下までの映像と…そしてもう一つは未鈴のデスク上の上半身の映像である。2つの映像ともデスクに座る今現在の未鈴の動きを余す所なくリアルに映し出している。
咄嗟に両膝を横に背ける未鈴がデスクの下を覗き込む…デスク下の衝立、ちょうど膝の高さに合わせて張り付けられた極小のカメラを見つけた。
こんな画面を開いている訳にもいかない未鈴はすぐに映像アプリの画面を閉じる。
(…これ…机の下にカメラなんて…これじゃスカートを覗かれてるも同然じゃないの…それなら、もう一つの顔の映像は…私のこのパソコンのカメラで写してるって事…?)
と、未鈴が閉じた映像アプリが全画面で勝手に立ち上がる。立ち上がったアプリ映像の隅に【メッセージ】と書かれた箇所が点滅していた。蛭間からのメッセージがアプリ上で届くチャット仕様の模様だ。
【如何ですか?課長のPCからも確認出来てますか? 僕のPCでも鮮明に見えてますよ~ 下は今課長が確認した机の下のカメラですね。もう一つは課長のPCのカメラをイジらせてもらったんですよ。】
今の自分のPCに写し出されている映像は蛭間のPCからも共有出来ていると言うのだ。
【あと、もう気付いてると思いますけど、課長が勝手にアプリを閉じてもこっちからチャットを送れば強制的に開きますからね 分かったら返事を送ってもらえませんか?】
要するに自分がこのデスクで業務を続けている限り蛭間の目が光っているという事だ。きっと神崎のPCも蛭間と同様になっているのだろう。
【分かったわ それでどうしようって言うの?】
未鈴は虚勢を装いながらも椅子には斜め座りでデスク下のカメラから何とか逃げる様に姿勢を保ち続けた。
【どうしようって、どうしましょうかね? とりあえずこれで何時でも課長の確認が出来るって思ってください くれぐれもレンズに何か貼って隠したりしたらダメですからね では~】
未鈴は自席にある目の前のノートパソコンに目を向けると、片方の映像には顔から上半身の自分の姿が正面に向けて写し出されている。PCで業務を行ってる限り、まるで蛭間らに自分の顔を見られ続ける事になるのだろう。デスク下のまるで股間を狙っているカメラに、せめてもの抵抗で膝を横に背けながら業務を続けるしか出来ない未鈴だった。
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その日の午後…未鈴を除く課員たちに向け、蛭間から一斉メールが送られる。
【皆さんお待たせしました~ 添付のテキストのアプリを皆さんのPCに取り込んでくださいね で、各々の社員コードを入力すればアプリが立ち上がって入室できますよ】
誰もが皆、仕事そっちのけで待ちに待った蛭間の指示通りに従い始めた。そして各自のPC上に映像アプリが立ち上がると、課員たちの期待を遥かに上回った映像が映し出されたのだった。
そしてアプリ画面の隅に蛭間からのチャットメッセージが現れる。
【皆さん、どうです?見れてます?ここにメッセ入力すればチャットも出来ますよ~】
もちろんそのチャットは蛭間のアプリ管理者権限で未鈴の画面には表れない。未鈴のPCのチャット機能は、蛭間と神崎のみの個別チャットでしか繋がらないように設定されているのだ。
【チャットって、これで良いのかな?】
【おいおい、思いっ切り机の下が覗けてるけど大丈夫? これ課長に気付かれない?】
【この二画面…もう片方の課長の顔が写ってるのって、これ課長のノーパソのカメラからなの?】
【チャットはそれで大丈夫だよ デスクの下のカメラは超小型だから絶対バレないはずだよ~ 】
【下半身だけだとツマらないから課長のノーパソもイジってみたんだ 二つとも4K並みのカメラだから中々高画質だろ?】
【これメッチャ画質いいじゃん おぉっこれキーの+でドアップになるぞっ】
【ホントだ~っ課長の顔のドアップ…毛穴までハッキリ写ってるぜ】
【課長っ脚を正面向けてくれぇ~斜めに座ってると肝心な所が見えないぞっ】
【でも何か課長にずっとこっちを見張られてるみたいな気がしちゃうわ】
【課長はウチらが見てるのは気付いて無いんでしょっ だったらこれからはウチらが課長を見張れるって事なのよね】
【そうよね アタシ達いつも課長に監視されてるんだから、たまにはコッチが課長を監視してあげるわよっ】
【後は課長の脚が正面向いてくれればなぁ…】
【俺は絶対目を離さんぞ~っ】
課員たちはすぐ近くに未鈴が居るにも関わらず、素知らぬ振りで業務を装いながら画面に写る未鈴に対しチャットで賑わっていた。
そんな連中の心情が賑わっているチャットの存在など知る由もない未鈴は、何時蛭間や神崎から新たな指示が来るのか不安を抱えながら…せめて膝を斜めに向けて座り、下のカメラから股間だけは写らない様に抗った。
それから数日間…職場の事務所で何をさせられるか不安を抱えたまま過ごす未鈴であったが、幸い蛭間たちからの何も要求の無い日々にしばらくの安堵が続いたのだった。
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