(…あぁ…向かいの棟から誰か見てたかもしれないのに…もし誰かが近くのベランダに居たらあの声も…)
拘束を解かれソファーの上で呆然としている未鈴に、スマホを手にした蛭間が声をかける。
「ほら見てくださいよ、今日のあの店…ブログが更新してるみたいですね~課長をブログに載せてくれたみたいですよ~」
蛭間のスマホから見せられたのは、あのテーラーショップのブログだ。それを一目見て背筋を強張らせる未鈴だった。
(な、何よこれ…顔は出さないって言ってたじゃない…これじゃぁあんまりだわ…バレバレじゃないの…)
確かに店のブログに載っている未鈴の画像にはボカシ加工が施されている。しかしそのボカシ加工が余りにも薄いのだ。目を細めたら未鈴を知っている者なら容易に判別出来てしまうだろう。
仮に自分だと特定されたとしても普通の恰好をしているのであれば問題無いが、画像に映る自分の姿は人に見られたら余りにも恥ずかし過ぎる恰好なのだ。
生地が伸びてピッタリと身体に張り付いたノースリーブのブラウスは、未鈴の身体のラインを余す事無く表している。ウエストから胸の形、そして乳首の形までハッキリと浮き立たせ強調させていた。
更に画像は、両手を首の後ろで組んだ事によってノースリーブから露出した腋をまざまざと見せつけている。
下半身は激ミニとしか言えない程のフレアのミニ丈だ。総丈が短すぎて腰履きにしなければ股下はマイナス丈だろう。丈の短いブラウスと腰履きのスカートのせいでチラ見せどころでは無い完全なヘソ出しルックである。そして腰履きのスカートの上のアウトラインからは隠し切れない真っ赤な皮ベルトがはみ出している。
明らかに妙齢の女性の身体付きだがハイティーンと紛うかの様な服装だ。
囚人の様に両手を首の後ろで組みながら、余りにも薄いボカシ加工の顔からは引きつった笑みがボンヤリと浮かんでいる。
もう一枚の画像は横から写した未鈴が膝に両手を乗せヒップを突き出した姿が載っている。完全にたくし上がってしまったフレアミニのおかげで、横から写されている未鈴のヒップラインが丸出しとなっていた。
更に画面をスライドさせると下に【店長のコメント】か未鈴を煽るかの如く綴られていた。
【このたびご来店いただけたM.S様のご紹介です。M.S様からは、街の視線を一人占めする肌見せ露出ファッションを熱烈にご要望されました。36才のM.S様は他の人には出来ないファッションを楽しんで頂けたら幸いです。またM.S様は大手スポーツメーカーの営業課長をなさっているそうで、お仕事柄から普段も人から見られる事を重視する意識の高~い方とお見受けしました。今回ご満足いただけましたら是非またのご来店をお待ちしております。】
未鈴にとって意味深も過ぎる嫌味としか思えない内容と合わせて、自分のイニシャルから職業、年齢までご丁寧に暗に記されている。これでは誰が読んでもまるで自分が要望したかの内容ではないか…
誰かがこのブログの記事を見たら…それこそ妙齢のイタい女だと思われるに違いない…ましてや知ってる人の目に入ったら…
このブログ自体が10年も経過しているのに1000ビューにも満たない総閲覧数に未鈴は少しばかりの安堵を得た。
しかし閑散とはいえ、いつ何処の誰が目にするかもしれない…早く削除をお願いしなければならない未鈴だった。
「課長、ほら気付いてます?このブログ、レスが付けられますよ~ 課長も店長さんのコメントにお礼を返さなきゃね」
未鈴は自分が思ってもいない内容を蛭間の指示通りに店長のブログへの返信を打ち込んでいった。
【店長さま、今回の私の要望を満たしていただける商品をありがとうございました。素敵な写真も撮っていただいて感謝しています。サイズ感も丈も全て希望通りで嬉しさで一杯です。。このお洋服で色んな場所にお出掛けするのを想像すると今から楽しみでワクワクしています。きっと周りからも素敵だなって思ってくれるでしょうね。これから暖かくなってきますので次はもっと涼しげなお洋服を依頼したいと思ってます。】
当たり障りの無い文面だが、写真と共に自分の返信を読むとどう見てもおかしな趣味でも持っているかのイタいオンナにしか思えない。
個人の店のブログらしく閲覧数の非常に少ないブログだが誰の目と留まるかも分からない…わざわざこんな姿になる服を希望して喜んでいるのが自分であると分かってしまう恐れがありすぎる…
友人知人が見たら何て思うのか…職場の誰かの目に留まったら…もし夫に見られたら…今日か明日にでも誰かの目に留まるかも…もしくはこのまま誰も目にも留まらないかもしれない…
未鈴はそんな不安よりも、妖しげなスリルの沼に嵌まっていく自分自身にゾクゾクとした感覚に襲われていくのだった。
そして翌朝…出社した未鈴の姿に騒然となった部下たちは喫煙ルームの中、陰で噂話しに盛り上がっている。
「おい…今日の課長スゲェよなぁ、スカート…メッチャ短いよな~」
「だよな、この前のより遥かに短いし、目のやり場に困るよな~っ」
「ねぇねぇ~…今日の課長…あのスカートヤバいわよね…?」
「ヤバいなんてもんじゃないわよっ なにあのスカートっ完全ミニスカじゃないのっ」
「ミニスカもそうだけど…あの前の切れ込み…あれギリギリじゃない?」
「そういえば去年神崎さんも短いスカート履いて来て課長に注意されたんだよね~?」
「…アタシは去年はまだ入社したてで…よく分からなくて…でもあたしでもあそこまで短くはありませんでしたよ~っ」
未鈴の勤める職場には確かに服務規程というものはあるが、常識的なビジネスルックが既に浸透している職場であったので特段細かい服務規定は存在しない。
それでも去年配属された社会通念も未熟だった理恵の様にオシャレを勘違いして出社して上司から叱責を受ける者も少なからずいる。
しかし課長の未鈴は、理恵とは比べ物にならない位のベテランでしかも役職までついた人物だ。
そんな未鈴が先日の短めのスカートよりも更に短い膝上10cmはあろうスカート…そしてフロント側には中央にザックリと切れたスリットが入っている。
出勤の支度で未鈴が蛭間から指定されたのは、前日にあのテーラーショップで購入したスカートであった。
数々の購入した物の中では一番大人しく控え目なスカートであったが、一般的なビジネスルックからは逸脱している。
未鈴は朝から人の目に気が気でなかった。
自宅を出てからの出勤の道中、周りを見渡しても自分程の年齢の女性の誰よりも丈の短いスカート姿なのだ。
短い丈のスカート着といえば、周りには制服の女子高生か大学生らしき女性しか見受けられない。
更に職場での視線も気が気でない。
(…誰も何も言ってこないけど…誰も指摘しないのは…上司の私に気を遣って見て見ぬ振りをしているのか…?それとも…この位ならそもそも何とも思われてないのかしら…?だったら助かるんだけど…)
周りの部下の女性社員達の誰よりも短いスカートの未鈴だ。昨年、似たような苦言を呈した神崎の存在も気になって仕方がない…日中は出来るだけ脚を見られない様にデスクにへばり付いて業務を続ける未鈴だった。
「なぁ蛭間さんよ~前言ってた課長のデスクにカメラ付けるって話しはどうなってんだよ~?」
「そうよっ あれから何日経ってるって思ってんのよっ まだ付けて無いなんてどういう事っ?」
「そうだよ、みんな待ってるんだぜっ!今日の課長のスカートなんて思いっきりチャンスじゃねぇかよ~」
先日の上着を脱いだ未鈴のノーブラ事件から、課の皆は未鈴のスカートの中の下着について蛭間の提案した未鈴のデスク下の隠しカメラの設置に待ち侘びている模様だ。
「お、お前らなぁ…分かってるってっ…だよな~分かったから待っててくれよ 早めにやっとくからさ」
期待通りの課員達の反応に、退勤後一人事務所に残った蛭間は未鈴のデスクの下に潜って用意した隠しカメラを取り付けセッティングにいそしむのであった。
「カメラはOKっと…あとは課長のノートパソコンを…と」
蛭間は極小のカメラを未鈴のデスク下に設置すると共に、未鈴のノートパソコンのカメラレンズを取り外し新たに用意したレンズの取り付けにいそしむのであった。
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