月曜日の出社後の未鈴は次々と出社してくる課の社員達と挨拶を交わす。その内の一人、神崎理恵が未鈴の同様に姿を見せた。
「課長、おはようございますっ この前はどうもぉ…コレ、アタシのついでですけどコーヒー淹れたんでドウゾ~」
「…神崎さんおはようございます…先日はごめんなさいね…あと、蛭間さんっ! 神崎さんとだけどちょっといいかしら?」
蛭間と神崎に面談室にて話しがあると声を掛ける。蛭間に先日のお礼をする姿など他の課員達に見られたくはない未鈴のプライドでもあった。
「あ~課長、面談室ですねぇ いいっすよ僕を誘惑ですかぁ?困ったなぁっ 課長のお誘いなら大歓迎ですよ~ 神崎さんと三人で?って…グフフッ」
いつものくだらない蛭間のゲスな口調に他の課員達は、また蛭間さんが何か言ってるぞ位にしか思っていないが未鈴は辟易として溜息が出そうになる。
こういう事を口に出されては立場上、放置は出来ないのだった。
「…蛭間さん!そういうのは止めてっていってるでしょう!」
イラつきを表しながら何気に未鈴は神崎の淹れた催淫剤入りのコーヒーに口をつけ、二人を面談室に連れ出す未鈴だった。
その後ろを付いていく蛭間と理恵の二人は、このイラついた未鈴がどう豹変するのかウズウズしていたのだった。
(あ~あ、課長、超強力の催淫剤の入ったコーヒー…飲んじゃったわね…)
小さな面談室の中…
「話しっていうのは先日の懇親会の事だったんだけど、それよりも蛭間さん!さっきのアレ…以前から何度も言ってるけど、ああいうのいい加減にしてもらえないかしら!」
「皆の前で誘うだの誘惑だのって…もうそろそろ私だけで押さえられないわよっ 課として上に報告しなきゃいけなくなるのよ!私の立場も考えてもらいたいわ!」
未鈴の叱責を黙って聞いている蛭間であったが、内心は笑いが込み上げていた。
「他の課員の皆からも…ここにいる神崎さんからも蛭間さんはベテラン社員という目で見られなきゃいけないはずでしょうが…!」
「なのに、なんで蛭間さんはあんな恥ずかしい事を一々口に出すのよ!?」
イライラの収まらない未鈴の愚痴のような叱責が続く中、そろそろ頃合いかと悟った理恵が割って入ってきた。
「…早乙女課長、あの…アタシにはまだ何かお話しはあるんでしょうか?
「あっ…そ、そうね、ごめんなさい… 神崎さんには先日の課の懇親会の後…私、酔って寝込んじゃったみたいで、二人でうちまで送っていたもらったのを夫から聞いたのよ…申し訳なかったわ…ありがとう 神崎さんはもう戻っていいわ、ありがとう…」
未鈴が理恵を事務所へ戻そうとしたら理恵の、
「…課長が蛭間さんの事を上に報告って…アタシや蛭間さんだって課長のした事を上に報告しようか悩んでるんですけど…ねぇ?」
理恵が蛭間に目を向けると、蛭間も「うんうん」と頷いて同意を示していた。
「えっ?私のした事を上に報告?…確かに、途中で寝てしまってお二人には介抱してもらったり自宅まで送ってもらったのは申し訳なかったけど…上に報告って…それ程までは無いんじゃないかしら?」
「え~っ?タクシーに乗ってからの課長…あんな無茶苦茶だったのに…ねぇ蛭間さん?」
蛭間は「ウンウン」と理恵の言うことに同意を示す。未鈴は、
「…無茶苦茶…私が…?(…私、覚えてないけど二人の前で何かやらかしたの…?)」
確かに夫から蛭間達にタクシーで連れられたとは聞いたが、そもそもタクシーに乗ったのも自宅で降りたのも全く記憶にない。
「やっぱりほら~蛭間さん、アタシの言った通り、課長全然覚えてないみたいじゃない」
未鈴はやはり自分の知らない内に、自分が何かしでかしたのか不安を覚えた。
「…あの…先日はちょっと覚えてなくて…ごめんなさい…何か迷惑かけたら謝るわ…私…何かしてしまっての…かしら…」
「オンナのアタシからこれ以上は恥ずかしくって言えませんよ~蛭間さんから教えてあげたらいかがです~?」
「…蛭間さん…私、本当に覚えてなくて…教えてくれるかしら…迷惑かけたなら謝りたいし…」
いつの間にか立場が逆転したかに見える三人だが、蛭間から出た説明に未鈴は信じられないといった表情に変わった。
「うーん、タクシーに乗ったら課長がですねぇ運転手さんに向かって“一番近くのラブホテルに行け”って大騒ぎ始めたんですよねぇ~」
「で、余りに騒ぐから僕らも乗せたまま運転手さんも仕方なくラブホに向かうしかなくって…ラブホに着いたら課長いきなりタクシー降りて…ねぇ?」
「私が?私が大騒ぎを?タクシーの中で?」
「やっぱり課長、全然覚えてないんですね~」
「で、タクシー降りた課長がいきなり僕を引っ張ってラブホの建物の中に無理矢理…ねぇ?」
「…無理矢理引っ張ってって…建物の中に…って私が?蛭間さんを?私がなの?」
「そうですよ~っアタシも唖然としちゃいましたよ~ 蛭間さんが“やめてください!”って何度も課長にお願いしてたのに蛭間さんは課長に無理矢理ラブホに引き刷り込まれちゃったんですよねぇ~」
未鈴には全く身に覚えが無い、それどころか自分が男をラブホテルに…そんな話しも蛭間のみから言われたら一蹴するだけだが、隣には未鈴にとって少なからず信用に足る金崎理恵が蛭間に同調している。
そして二人の話しは次々とエスカレートしていく。
「で、結局僕はラブホの部屋まで課長に強引に連れてかれたんですよねぇ~」
「そうですよっ で蛭間さんがアタシに電話くれて“部屋まで来て課長を止めてくれって”、そう言われてアタシ、部屋まで行ったんですよ そしたら部屋で課長が…」
(…私がラブホテルで…? この蛭間を部屋に…そんな馬鹿な…更に部屋でも私が騒いでたとでもいうの…?)
「…へ、部屋で私…ど、どうだったの…?」
「で、アタシ部屋に入る時に課長どうちゃったのかしらって思って…念の為スマホで撮っといたんですよ~ほらコレっ」
理恵のスマホを差し出された未鈴は、その画面に写る自分の姿に思わず驚愕の声を上げてしまった。
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