二年の月日が流れた。
うららかなお昼どき、公園でイズミはスヤスヤと眠る赤ちゃんをその腕に抱いていた。
父親の海斗にそっくりな顔立ちをした男の子だった。
可愛い❤️なんて愛おしいんだろう。
この世で誰よりも愛している人の子供、、、
「イズミ、、、そろそろ時間だから、わたし行かなくちゃ、、、」
宏美が声をかけてきた。
宏美は変わることなく美しかった。
いや、以前にも増して若々しく、その肌も艷めいて幸せに満ち溢れていた。
「そうですね、、、」
イズミは名残惜しげに赤ちゃんを実の母親である宏美に優しく手渡した。
「凪くん、、、バイバイ、、、またね、、、」
イズミは凪の目の前で小さく手を振った。
イズミはあのあとも瀬沼との関係を持ち続けていた。
海斗を欺き情事を重ねた。
海斗を裏切り瀬沼との歪んだ爛れたセックスに溺れていった。
しかし破滅は突然やって来た。
イズミは知る由もなかったが瀬沼は社内で極秘で調査対象にされていた。
ある日それが白日の元に晒された。
瀬沼は会社の金を私的に流用していた。
株の投資の失敗の埋め合わせ、そして社内の女性との不適切な関係の交際費用。
それも三人同時に、、、
過去にはもっといたらしい、、、
もちろん三人のうちの一人はイズミで、あとの二人は独身だった。
妻とは離婚すると結婚をちらつかせ、高価なブランド品を買い与え会社の金で豪遊していたらしい。
社内では騒ぎになっていた。
その日イズミは何も知らずに出社してた。
いきなり人事課に呼び出しをうけた。
人事?何の話だろう?
上司の宏美を見ると青ざめた顔をしている。
そしてその目はなぜか冷たい気がした。
「係長、人事課に行って来ます、、、」
そう告げると宏美は何も言わず視線を反らした。
何なんだろう、、、
漠然とした不安がもたげてくる、、、
人事課へ行くと人事部長が待ち構えていた。
女性の係長を伴い奥の部屋へと案内された。
ただならぬ雰囲気の中、いきなり瀬沼部長との関係を尋ねられた。
単なる上司で相談に乗ってもらったことがあるだけだと誤魔化そうとしたが無駄だった。
全て知られていた。
証拠が揃っていた。
デートをしてホテルに腕を絡めて入る写真、、、
公園で抱き合い熱い口づけを交わす動画、、、
乳房をさらし乳首を舐められながら瀬沼の性器を擦るものも見せられた。
もう真実を話すしかなかった。
絶望で脚が震えた、、、
いや全身が、、、
皆に知られてしまう、、、
もちろん夫にも、、、
そして瀬沼が会社の金を横領していたことも知らされた。
イズミへの高価なプレゼントもそのお金からだと初めて知った。
腕時計、ネックレス、ブランド品のバッグ、、、
夫には自分のボーナスで買ったと欺き平気で見せつけ自慢した。
どうしたらいいの?
頭が真っ白になった、、、
話が頭に入ってこない、、、
厳しい口調で自宅待機を言い渡され部屋を出た。
戻ると宏美がやって来て、ひと気のない会議室へと連れていかれた。
入るといきなり頬を叩かれた。
「すいません、、、わたし、、、」
「わたしのことはどうでもいい、、、早く帰って海斗と話し合いなさい、、、」
「えっ、、、海斗は、、、」
「早くに帰ってしまったわ、、、ショックを受けて、、、真っ青な顔してた、、、」
宏美は出て行った。
やはり海斗にも知られてしまった、、、
もう終わりだ、、、
自分はなんと愚かなことをしていたんだろう、、、
バレるはずが無いと高を括り海斗との生活をおざなりにしていた。
仕事だと偽り瀬沼との密会を愉しんでいた。
夫とのセックスを体調が悪いと遠ざけ、気遣ってくれる海斗の優しさを鈍感な男と心の中で嘲っていた。
それでも海斗は自分を愛してくれる、、、
だから自分は何をしても赦される、、、
そんな傲慢な考えを持つようになっていた。
家へと向う足どりは重かった。
どうしよう、、、
どうしたらいいの、、、
海斗を失いたくない、、、
失いそうになって、改めてその存在の重さに気づく、、、
とにかく謝ろう、、、
海斗は優しいから赦してくれるかも知れない。
へんな言い訳はせずに心から謝罪すれば、、、
海斗にはまだわたしへの愛情が残っているはず、、、
つづく
※元投稿はこちら >>