「あの時はすまなかった、、、俺があんなことを、、、」
「ううん、何を言ってるの、、、確かにショックだったけど、あのまま騙され続けるよりずっとよかった、、、これで良かったと思ってるよ、、、」
「そうか、、、そう言ってくれると助かるよ、、、」
詩織もあの後すぐに離婚して、純也は真里奈と七海と三人で暮らしているようだ。
そうだよな、、、実の親子だからな、、、
真里奈への未練は微塵も無いが、七海は違う。
パパと呼ばれ、家に帰るとしがみついてきた。
胸が締め付けられる思いにかられる。
「七海ちゃんのこと、気になる?」
「それは、、、でも俺がいたら七海を苦しめることになる、、、だから、、、」
「辛いよね、、、海斗君は優し過ぎるから、、、高校のときからずっとそう、、、」
詩織の瞳が潤んでいた。
「そんなことないよ、、、今回の慰謝料、全部、七海が大人になったら渡そうと思ってる、、、俺はそんなことしか出来ない男なんだ、、、」
涙をこらえる海斗の手を詩織が握ってくれる。
「海斗君らしいね、、、いつか海斗君の気持ちが伝わる日がきっとくるよ、、、」
本当にそんな日がくるのだろうか、、、
「ね、、、少し飲まない?ここお酒もあるみたいだし、、、」
「そうだな、、、久しぶりに詩織と飲むのもいいな、、、」
「二人きりで飲むの、初めてじゃない?」
「そういえばそうだ、、、」
二人は互いの仕事のことも話した。
詩織は毎日が充実してると言った。
周りにヘンな目で見られることもなく、上司にも恵まれ仕事がたのしいと、、、
「でもね、、、一人になると、わたしの高校生活からずっとなんだったのかなって、、、騙され続けて結婚までして、、、これって何も無かったことになるんじゃないかって、、、」
「それは、、、俺もずっと思ってる、、、」
「でもね、ひとつだけ残ってると気づいたの、、、いつも誠実で優しい海斗君がいたんだって、、、」
「俺だって、、、親友と恋人には騙されていたけど、詩織だけは違ってた、、、それだけが救いだと思ってる、、、」
「わたし達、、、一緒だね?」
「ああ、そうだ、、、」
「ねえ、、、今度、どこかに遊びに行こうよ、、、」
「俺は構わないけど、、、」
「ドライブがいいな、、、二人だけで高校時代をやり直そうよ、、、」
「いいなそれ、、、分かった、そうしよう、、、」
「場所とか、わたしが決めていい?」
「全部詩織に任せるよ、、、」
「よ~し、、、ねえ、泊りがけで行こうか?」
「うん、俺、温泉がいいな、、、」
「分かった、わたしが予約入れとくね、、、」
「いいのか、本当に任せちゃって、、、」
「うん、、、そのかわり後で文句は無しだからね、、、」
「言わないよ、そんなの、、、ああ、たのしみだな、、、」
「なんだかウキウキしちゃうよね?」
二人は目を合わせ微笑みを交わした。
まるであの頃に戻ったように。
つづく
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