敬子が女の投稿に惹かれた原因の1つに、そこに描写されている風景への既視感があった。
絶対に違うと思いながらも、どうしても家から30分ほどの距離にある駅を思い浮かべてしまう。
それは特急も快速も止まらない小さな駅だ。
降りた事はない。
ただホームに停まった電車の車内から見た雑居ビルは、女が書いていた通りにペンキが剥げていた。
駅前を見ると交差点には大きな赤い看板が目に入り、その左手に商店街が伸びている。
目を閉じると、それだけで自分が駅に降りたったようか錯覚が頭の中に浮かんでくる。
改札を出て信号を渡り、そのまま商店街の中に入っていく。
すっかりシャッター街になってしまった商店街を歩き、紺色のシャッターが閉じられた店の隣で路地に入る。
そして古びた雑居ビルの間を数分ほど歩くと、、、
『ポルノ』
雑居ビルの地下に伸びる階段の入り口で、まるで誘うように下品な色の小さな看板が点滅している。
その光景を思い浮かべるたび、敬子は自分を必死になって抑えていた。
本当にあるだろうか
もしもあったら、自分はどうするだろうか・・・
チケット売り場で店員の好奇の目に晒されてしまったら何を感じるだろか・・・
女に飢えた男達の下品な性欲を向けられたら・・・
名も知らぬ男の指に抵抗できるだろうか・・・
そんな事を考えながら、本当はどうなるかなどとっくに確信しているのに、それを無視して また次の投稿を探していく。
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