2、夏の視線
二人の女を見ている男たちがいた。
波打ち際から少し離れたパラソルの下、マットに腰を下ろした亜里沙と真帆。
その姿は、ビーチバレーに興じる若い男性たちの視線を自然と引き寄せていた。
一人は日焼けした腕を誇示するようにTシャツの袖をまくり、缶ビールを片手に
持ったまま、もう一人はサングラスを外し、じっと亜里沙の脚線に目を留めていた。
翔太は三十代半ば、広告代理店に勤める営業マン。人懐っこい笑顔と軽妙なトークで
場を和ませるタイプだが、その目には時折、鋭い観察力が宿る。休日の海辺でも、
彼の視線は無意識に“絵になる瞬間”を探していた。
「……あの右の人、やばくねえ? あの年であのスタイルって、反則だろ」
彼の目先には、亜里沙のボディがあった。身長は165cmほど、引き締まった腰回りと
長い脚が砂の上でしなやかに伸びている。
彼女がうつ伏せから体をひねり、足を少し開いた瞬間、ヒョウ柄の
ビキニが太陽の光を受けてきらめいた。
その布地は鋭角な逆三角形で、まるで視線の欲望を試すかのように、肌と空気の間に
緊張を走らせていた。
足を開いた拍子に、Tバックが股間に深く食い込み、亜里沙は何気なく指先で布をつまみ、
位置を直す。
その仕草は、無防備でありながら、どこか計算されたような余裕を感じさせた。
翔太の視線は、彼女の股間に吸い寄せられていた。
布の境界線が肌に沈み込む様子に、下半身が熱くなった。
彼女の指先が布を直すたび、翔太の胸の内に、言葉にならない衝動が膨らんでいった。
「……あのヒョウ柄ビキニ、やばいよ、ぎりぎりまで攻めてるぜ……もう少しで見えそうだ」
彼は小声でつぶやきながら、缶ビールを持つ手をわずかに震わせた。
「これ、俺に気があるかもな……いや、絶対あるって」
その声には、興奮と期待が入り混じっていた。
そのとき、亜里沙がふと翔太の方を見つめる。唇の端に、意味ありげな笑みを浮かべながら。
翔太は一瞬、息を呑んだ。視線が合っただけで、胸の奥に火が灯るようだった。
悠人は翔太の大学時代の後輩で、現在は都内の出版社で文芸誌の編集をしている。
物静かで控えめな性格ながら、女性の仕草や空気の揺らぎに敏感で、言葉にしない感情を
読み取るのが得意だった。
「いや、俺は左の人。あの目元、なんか……誘ってる感じする」
真帆は亜里沙より少し背が低く、160cmほど。華奢な肩と柔らかな腰のラインが、
控えめなネイビーのビキニに包まれていた。
その水着は露出こそ少ないが、かえって男たちの想像を掻き立てるように、
布の奥に秘められた
輪郭が、静かに視線を引き寄せていた。悠人の視線が真帆と交差する。
一瞬、彼女の瞳が悠人を捉えたが、すぐに目をそらし、タオルを膝にかける。
そして、何気なく肩ひもに手を伸ばし、指先で軽く位置を直す。
その仕草は、視線を遮るための防御にも見えたが、どこか女としての意識が滲んでいた。
「どっちも、エロいよな。なんか、余裕あるっていうか……」
「旦那いるのかな。いたとしても、あんなの放っとくとか信じらんねえ」
「あんな女と、やりまくりたいよな」
「声かけてみようせ、ダメもとで」
その視線は確かに亜里沙と真帆の肌を撫でていた。
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