心地よい疲れに、少し眠ってしまったらしい。
目を開けると目の前に、俺を見つめるMの顔があった。
「目が覚めました?・・」
あどけない顔で聞いてくる。
「ウン・・、今、何時かな?」
「もうじき4時・・先生、随分気持ちよさそうに、眠ってましたね・・先生の寝顔、可愛かった・・もう少し見ていたかったのに・・」
「バカな・・ジイさんをからかうものじゃない・・」
そう言いながら、手をMの股間に差し入れた。二人の愛液はもはや乾いていた。
「いやん、先生こそぉ・・、この、オイタな手・・」
甘えた声を出しながら、軽く手の甲をつねった。
「もう、そろそろ時間じゃないかい?」
「そうね、もう、そろそろかも・・でもー」
Mはそう言って俺の胸に飛び込んできた。
俺は切ないほどの愛おしさに、思いきり抱き締めて、そのままの姿勢でしばらくいた。
「シャワー浴びておいで・・」
そう言って俺の胸からはがすと
「ハイ・・」
そう答えて身体を離すと、足元の丸まったバスタオルを引き寄せ、裸の身体に巻き付けて、ベッドから降りた。
「もう、カーテン開けたらだめですからね、本当ですよ・・」
Mは俺を軽くにらんでベッドを後にして、シャワー室に向かった。
俺はMのいましめを無視して、カーテンを横に引いた。
鏡に向かって歩いてくるMは、タオルを身体に巻いたままだった。
Mは覗いているだろう俺に向かって『あっかんべー』をした。
鏡に平行に立って、裸の正面を見せまいとシャワーを浴び、再び鏡に『あっかんべー』をしてタオルを巻き付け、シャワー室を出て行った。
扉を開ける前、振り向いて腰に手を当て、ピースサインをしながら、尻を左右に大げさに振り立てた。
俺は大声を上げて笑った。
一度でも肌を合わせた男女は、瞬時にこうして開放的に振舞えるのか。
しばらくの後にベッドに戻ったMは、身支度を済ませ、薄く化粧まで施していた。
「それじゃ次は私の番だ・・」
交代にシャワーを浴びて、俺も来た時のままに、身づくろいをした。
部屋のソファに、ふたり並んで腰を降ろして、黙ってウェルカムドリンクのペットボトルに口を付けた。
「素晴らしかった、本当にMは素晴らしかった・・これで私には少しも心残りはない。有難うM、本当にありがとう・・・」
Mは何も答えず、口の中のお茶を飲み込んだ。
私に目を合わせず、彼方に向けて顔をそらせた。涙をこらえているのか、その表情は読み取れなかった。
Mとの逢瀬はこの日、これ限りだ。
つかの間の眠りの後、Mの瞳を見た時、俺はそう決心した。
俺がこの世を去る時、Mへの未練を最小限に抑えるためには、もうMを二度と抱いてはならない。
Mにも俺との事に、できるだけ引きずられて欲しくなかったからだ。
出来れば今日の事は、Mにとって、ひと時のアバンチュールか、出来心の不倫ととらえて欲しかった。
「それじゃ、行こうか・・」
Mは俺が立ち上がると、何も言わずに立ち上がった。
先に立って入り口に向かう俺に、黙って後ろに従ってきた。
自動精算機の上に、セカンドバッグを置いて、Mの両腕を抱き寄せた。
最期の口づけをしようと、顔を寄せるとMはトートバッグを足元に落として言った。
「口紅が・・」
かまわずに俺は顔を押し付ける。Mは静かに俺の唇と、舌を受け入れた。
しばらくそのままの格好でいた。
俺はこのまま時が止まればいいと思った。
その時、俺は、突然自分の身体の異変に気が付いた。
なんとセックスの始まりの時、あれほど勃起にてこずった、俺のペニスが硬度を持ってきたのだ。
Mの手を煩わした、あの勃起よりむしろ立派なペニスに成長していた。
さっき二度とMを抱かないと決心した俺だ、今さら再度交渉を持つことは考えられない。
俺はMの下腹に触れている俺の下半身を、引き気味に腰を構えた。
Mは自分を抱きしめることを要求するように、さらに強く、腰を押し付けてくる。
腰を引いた姿勢に、我慢できなくなった俺は、位置を普通に戻した。
当然に俺の勃起は、Mの下腹に押し付けられることになる。
Mは自分の下半身に押し付けられた、俺の異変に気が付いたようだ。
『ン?・・』
怪訝な表情で顔を離して、Mは俺の顔を覗き込んだ。
俺は照れ笑いをして、言い訳をした。
「どうやらこんなふうに、なってしまったみたいだ、お恥ずかしながら・・ゴメン・・」
Mはしばらく俺を見つめた。
Mの次の行動は、俺の思いもよらぬものだった。俺の両腕をもって自分の後ろ、つまり自分の尻に手が届くように調節したのだ。
「M‥」
Mは何も言わずに頷いた。
俺そのまま身体を引き寄せ、大きく、硬くなった俺をMの下腹に押し付けた。
Mは俺の胸に顔を押し付け、そのままの姿勢でいる。
俺の手に感じる、スカートのデニムの中の二つの塊を、軽く揉みしだいた。
「先生、私、もう一度したい・・もう一度先生のこれが欲しい・・」
Mはそう言って、俺のペニスをパンツの上から上下に擦った。
「だけど、ベッドに今さら戻ることも・・」
俺がそう言うと、Mは小さな声で言った。
「ここで・・」
「えっ、ここでかい?・・」
Mは小さくうなずいて、俺を見つめた。
俺にしばらくの躊躇はあったが、決心すると行動は早かった。
「M、わかった・・」
そう言ってMの背中を壁に押し付け、スカートをたくし上げた。
Mはストッキングを履いておらず、直接ショーツ越しの尻に触れた。
尻に回した両手を、ショーツの上辺から素肌の尻に滑り込ませる。
そのまま尻の下部までショーツを押し下げると、俺はMの股間の茂みに手を差し入れた。そこは俺を受け入れるのに充分なくらい、暖かく湿り気を帯びて濡れそぼっていた。
俺は膝まづいて、ショーツを太ももの中間まで下げ、茂みに口づけて小ぶりなクリトリスに、舌を差し向ける。
『フウー‥』
Mの口から小さなため息が漏れて、俺の舌がつぼみに届くよう、腰を前に突き出した。
しかし、下付きのMのオマンコに俺の舌は短く、つぼみへの愛撫は諦めた。
そのまま、足首にまでショーツを下げて、片方の足首に絡ませて残したまま、俺は立ち上がって、素早くパンツとトランクスを膝まで下げた。
俺は充分に硬さを増して、屹立したペニスを取り出した。
さっきまでのセックスでM の体の柔軟さは、しっかり確認済みだ。
Mの片方の腿に俺の腕をかけ、腰の高さまで持ち上げて、ペニスをあてがった。
Mは俺の首に両手を回して、オマンコに侵入するペニスを待ったが、下付きのオマンコは、なかなか侵入を受け付けなかった。
少し焦った俺の耳元にMがささやいた。
「待って・・」
Mは腿を持ち上げた俺の腕を外させると、黙って後ろを向いた。そして壁に両手をついて、尻を後ろに突き出した。
Mの意図がはっきりと分かった。
俺はスカートを捲し上げ、腰に手をかけ、片手でペニスをしとどに濡れそぼったオマンコの入り口に宛がった。
「来て・・」
後ろから腰を突き出すと、Mのオマンコの中に俺のペニスが突き刺さった。
「アアーーッ」
Mの小さな喜びの声が響いた。
そのままピストンが続く。Mのオマンコからは『ニチャ、ニチャ』と卑猥な音が絶え間なく続いた。
不自然な形でのセックスは刺激が強く、時間にして長くは続かなかった。
直ぐに俺に射精感が訪れる。
「もう、だめだM・・逝く・・」
小さく叫ぶと、Mは何度もうなずいて射精を促した。
思いもよらぬ激しさで、一番奥深いところで、精がほとばしった。
その時同時に、Mが小さな悲鳴を上げて、絞めつけたオマンコが、Mも逝ったことを教えていた。
放出した後、ペニスがオマンコから抜け落ちるまで、しばらくそのままの姿勢でいた。
脱力感だけが残ったが、十分満足だった。
しばらくして、俺の前にひざまずいて、小さくなって抜け落ちたペニスを咥え、愛液と精液に塗れた俺のペニスを綺麗にした。
Mはバッグから取り出したハンドタオルでペニスを拭った後、自分の片足首に丸まったショーツを、引き上げて履きなおした。
スカートを元に戻して、振り向いたMの頬に、またも涙が光っていた。
「好きです、先生・・」
それから数分後に、俺たちはカーホテルを後にした。
今、俺は丘の上に立つホスピスにいる。
その後、Mと二度と身体を合わせる事も、会うこともなかった。
Mとの逢瀬の数日後に、整体院を閉めた。他との連絡を絶つために、スマホの番号も変えた。
癌の進行は思ったより早く、体重は極端に減少し、鎮痛剤のフェンタニルがなしでは、痛みに耐えられないまでにり、俺の《終の棲家》となるホスピスに入院した。
高校時代からの親友に、『俺が死んだら投函してくれ』と、一通の封書の手紙を託した。
宛先はMだ。
『 M有難う Mで本当によかった さよなら 』
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