男、男………オトコ……。
考えてみれば男という存在を、冷静に味わったことがないとの思っていた。
感じてしまえばその世界に入り込み、夢中になるのだからどうしょうもないのだけれど、興味が湧いてしまうと検証したくなったのだ。
愛の営みなんてロマンチックなものではないし、そもそも興味を持つこと自体、小説家として女として普通ではないのかもしれない………。
美味しいものに舌鼓を打つかのように敦也の分身を味わい、分筆液を舌の上に広げて上顎に擦り付ける。
飲み下すごとに喉の粘膜に纏わりつき、戻しそうになって涙で視界が滲む。
そんな苦しみさえも、官能的に感じてしまう。
敦也もスイッチが入ったのか、瑞稀のショーツをずらして女の花園に舌を這わせて丹念に舐め回していた。
それが瑞稀の情欲を掻き立てさせ、敏感な蕾に吸いつかれる快感に腰を落ちつかせられない……。
意識を持っていかれないように自分を保ち、敦也を攻めるべく頭を上下に振っていく。
女の意地を集中させて甘味な感覚を振りほどくのは容易なことではなかったけれど、若い敦也が先に音を上げた。
正直なところ瑞稀は少しの差で敦也に競り勝ったにすぎず、もう少しで口からペニスを吐き出して悶絶する寸前で助かっていた。
男なのに情けない声を出して喘ぎ、自分の恥部に熱い吐息を吐きかけながら彼こそが悶絶している。
冷静に相手を分析しながら追い詰めていく過程が楽しくて、悪い女になった気分も悪くない。
もう少し……あと少しで、あのとろりとした生臭い男のエキスを味わえる………。
唇がペニスの凹凸を捉えながら、顎の疲れを無視して首を動かしていく………。
あと少し、あともう少しだったのに……。
瑞稀の癇に障るバイブレーションのあの独特でいで無機質な音が鳴り響き、2人の世界が止まる。
敦也の鞄の中で携帯が振動しているらしく、背中越しに振り向いて彼の顔を見やる。
出たほうがいいんじゃないの………?
貴方の上司でしょ、いいから出なさい………。
敦也はそのままの格好で腕を伸ばし、鞄の中を弄って取り出した携帯を耳に当てる。
彼の受け答えからせっかちな上司なのは明白で、新人の部下に最もらしい理屈を捏ねて、自分の溜め込んだストレスを解消するクズである。
それは歴代の担当者たちが口を揃えたように同じことを吐露していたから、間違いない。
このクズから連絡が入ると彼らは静かにこの部屋を出て、ネチネチと小言を聞かねばならないからしばらくは戻っては来ない……。
瑞稀も辟易していたので彼から携帯を奪い取り、余っ程この声の主に嫌味のひとつでも言ってやりたかったけれど、彼は立場を無くすかもしれないと思うと悔しくてそれは出来ない。
瑞稀の目の前で彼のストレスを伝えるかのようにペニスがピクリと動き、透明な粘液が一筋の雫となって流れ落ちていく………。
若い彼の悶える顔が見たい………。
獲物に狙いを定めた猛禽類が翼を広げたように、立ち上がった瑞稀は身体の向きを変えて敦也を跨ぎ直す。
目の前から卑猥な涎を垂らしたもう一つの女の口が無くなり、明るくなると仁王立ちした瑞稀が見下ろしていた。
ゆっくりとしゃがみ込む先には自分の下半身があり、瑞稀がペニスを持て起こし始めるのを見て手に持った携帯を落としそうになった。
敦也は表情と仕草で駄目です、避妊具を着けてませんと瑞稀を必死に止めたつもりだった。
なのに彼女はこちらを見ながら、聞く耳を持たないとでもいうように自分のそこにあてがう……。
携帯から漏れ聞こえる嫌味は、耳を素通りしていく………。
瑞稀は妖艶な微笑みを顔に浮かべ、淫らな下の柔らかい口に咥えさせて………。
必死に首を振って見せた敦也の願いも虚しく、その飲み込まれていく感触に声を詰まらせる………。
膝裏をソファーから浮かせ、沈みゆくペニスが奥に到達してやっと接地する……。
何をしているんですか………?
表情でそう訴える敦也を嘲笑うかのように、腰を前後に揺らしはじめる瑞稀………。
生の粘膜が亀頭を撫で上げ、密着したカリ首に纏わりついて息が止まる……。
携帯を耳に当てたまま泥濘の中で溺れる分身が伝えてくる、その甘い刺激が思考を奪う……。
ゆっくり自分の中で窒息していく感覚を表情に浮かべる彼を見て、ふふふっ……っと笑う瑞稀。
その彼女も次の瞬間には目が座り、口を半開きにさせて長い吐息を伸ばして目を閉じていた。
膣道に沿ってピタリと密着する敦也の硬いペニスが、女を酔わせる甘さを連れて来る……。
時々瞼を開けて自分の支配下にある彼が悶える姿を見て、自分の両手をお腹から胸の辺りまで這わせてキャミソール越しに乳酸を鷲掴む……。
前後させる下半身の中で息も絶え絶えのペニスをゆっくりと咀嚼し、その味わいに子宮が異性の持つ何かを要求するかのように、粘度の強い分筆液を吐き出す……。
顔を真赤にさせた彼が必死に堪える姿が瑞稀をさらに欲情させ、両手を彼の脇の下に付いて本格的に腰を打ち付け始めた……。
声を詰まらせながら携帯の向こうの相手に彼が短い受け答えを健気に続け、固く目を閉じて何度も顔を左右に倒す……。
瑞稀が腰を打ち下ろすたびにヌチャッ……っと営みの音が響き、ペニスが擦る甘さ、膣の粘膜に抱きつかれる甘さが双方から冷静さを奪っていく……。
眼鏡がずれた瑞稀の顔は眉根を下げて打ちのめされたかのような表情を浮かべ、そのくせ下半身は別の生き物のように忙しなく躍動させていく……。
目を閉じて自らの肩に顎を乗せ、耐えられなくなったように俯いて、次の瞬間には眉間にシワを刻みながら顎を上げる………。
その瑞稀の身体の下で歯を食いしばる敦也がもう駄目だとでもいうように、口を開けて動かなくなった……。
敦也が足の指を開いたとき、痺れるような甘さを伴って何かが勢いよく飛び出した。
自分の意志とは関係なく何度も瑞稀を突き上げ、顎をガクガクさせる瑞稀が口を閉じることなく、その唇を震わせていた。
力を減り絞るように腕を伸ばして彼から携帯を奪い取り、勝手に通話を切って力尽きたように敦也の身体の上に突っ伏した。
自分の中でペニスが脈動する感触がまだ続き、彼もまた亀頭に触れる膣壁がふにゃふにゃと動くその感触に、搾り取られるような感覚を覚えていた。
若い男の興奮させる汗の匂い、年増の女の甘ったるい汗の匂い、双方がその心地良さの中に漂いながら心臓の鼓動が伝わってくる。
そしてキャパシティが上回る瑞稀が、腰の躍動を再び目覚めさせる。
若い敦也を捕食する悦びが、瑞稀を貪欲にさせていく。
まるで、女豹のように………。
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