そろそろ来る頃だと、そう思っていた。
社会人としてまだ機能している良心が理性を働かせ、今度は何をさせられるのかと身構えさせる。
一方で女流作家、官能小説家としてミステリアスな色香を漂わせる瑞稀に魅了されかけている、そんな自分がどこかで期待をしていることを自覚もしていた。
瑞稀は自分の肩をポンポンと叩く仕草を見せて、解して欲しいと敦也をチラリっ見やる。
途端に欲情の炎は情けないくらいに小さくなり、理性が幅を利かせてお役に立てるならと、彼女の両肩にそれぞれ自分の手を乗せる。
大学時代に水泳部だった敦也は、よく先輩の肩もみや身体のマッサージをやらされたものだった。
筋力トレーニングで発達した身体で10数kmも泳げば乳酸が溜まり、それを流さねばならない。
陸上競技と違ってスイマーたちの身体は一見ゴツはく見えても、その筋肉はしなやかである。
それでも厚みのある身体は適度な力を指に加えなければならず、人によって力加減の好みも違うから気を使ったものだ。
そういった世界とは無縁に生きてきた瑞稀は、言うまでもなく華奢な身体つきをしている。
白いシャツブラウスに白のキャミソールを透けさせて、肩にかかるストラップを避けて微妙な力を指に加えて試しに揉んでみる。
瑞稀の様子を窺いながら進めるうちに、頭を傾けて気持ち良さそうな反応を見せる瑞稀。
首の後ろや肩周りは職業病と言わざるを得えないくらいに凝り固まって、これでは辛い筈だと敦也は眉根を寄せた。
できる事なら15分〜20分くらい寝そべった格好をしてもらえるといいのだけれど、時間を必要とすることを彼女にお願いしてもいいのだろうかと迷っていると………。
ちょっとそこでしてもらっても、いいかしら……?
自らを椅子から立ち上がった瑞稀が、ソファーへと移動してうつ伏せになった。
無駄に座面が広くて男性でも寝そべることのできるソファーが、役に立つこともあるんだなぁとこの時ばかりは思った。
敦也などもう何度このソファーで睡魔と戦い、船を漕いできたことか………。
敦也は当初ソファーの横で膝立ちになりながらしていたのだけれど、敦也がやり辛そうだからというりも、瑞稀が今いち心地悪いという理由で改善を求められた。
気にしなくていいから、あたしを跨いでしてくれない………?
そうは言うけれど作家の彼女を跨いでいいものかと迷いを見せていると、は・や・く……と、瑞稀が催促をしてくる。
敦也は遠慮がちにそれでは………と、瑞稀のお尻の真上に跨り、首の後ろから肩甲骨の周辺に指の腹を当てていく。
聞きようによっては卑猥に聞こえなくもない、呻くような声を上げる瑞稀。
少しづつ背骨に沿って腰のあたりまで手を南下させ、お尻に触れる前に首へと戻っていく………。
それを何度か繰り返していると………。
上半身はもういいから、下をお願いできる………?
普通に考えたら身体を下に移動させているはずなのに、緊張していたのか邪な気持ちがそうさせたのか、敦也は瑞稀の身体の上で身体を反転させて無意識に彼女を跨ぎ直してしまった。
そのことに気付いたのは彼女の脹脛に触れた瞬間で、今更やり直しても不自然だと考えてそのまま続けることにした。
足首から脹脛、太腿の途中まで手を移動させながら、自分の股の下に瑞稀のお尻があることを意識しないように心掛けなければならなかった。
手が膝裏を通過するとスカートの裾がずり上がり、自分の手をスカートの生地の上に乗せ換えて太腿まで手を移動させていく。
お尻まで触れないように、手を折り返そうとしたときだった。
気にしないで、お尻と腰もお願いね………。
そんな瑞稀のリクエストに自らの身体を反転させて彼女の足元に移動させ、足首から上へと揉んでいく。
指がスカートの裾をわずかに持ち上げたとき、そのまま手を進めるようにと瑞稀は言った。
流石にそれは……と、手を止めた敦也の背中を押すように瑞稀は言葉を強める。
いいから、気にしなくてもいいのよ………。
落ち着いた声量でとても静かに、少しだけ怒りの感情を含ませた言葉が有無を言わせなかった。
スカートの中に入った手が触れてはいけない太腿の柔らかい内側に触れ、スカートのスベスベした内布が指と手の甲を滑らせる。
付け根のギリギリまで触れて、もう片方の膝に移って同じように上へと触れていく。
もっちりとした吸い付くような肌が心地良くて、意図せずに股間に血流が集まってしまう………。
そこには決して触れてはいけない、そう思っていたのに不意に指先が布地に触れてしまった。
ちょうど二重底との境だった部分に触れてしまったようで、反射的に指を引っ込めようと弾くようになってしまった……。
顔を突っ伏していた瑞稀が身体をピクリとさせ、ウンっ!………と、くぐもった声を出す。
自分の失態に冷や汗をかく思いをした敦也だったけれど、瑞稀は何事もなかったようにしている。
気のせいだろうか、瑞稀の肌が汗ばんできた。
触れはいけないと思えば思うほど指先が触れる回数が増えて、一番汗ばんでいるのは指先が触れるそこだと敦也は気付いてしまった。
瑞稀は、濡らしていた………。
敦也は気付かないふりをしてスカートから手を抜き出して彼女のお尻に指を食い込ませ、腰を懸命に揉んだ。
そうしながらも湿った生地の感触を記憶してしまった指の腹が、頭から離れない……。
不意に何の前触れもなく瑞稀が身体を横に反転させ、身体を仰向けにさせてしまった。
やっぱりさっきのやり方のほうが好きだから、戻して……。
あれば瑞稀の計算だったのだろうか、自分の股の下に瑞稀の顔があることを嫌でも意識させられて、戸惑う敦也に彼女は無言のままだった。
することは分かってるわよね、何度も同じことを言わせないで………。
そう言わんばかりの瑞稀の沈黙は、何も言わずとも敦也の手を誘導させる。
流石にスカートを捲り上げるわけにはいかずに、スカートの上から手を触れていく。
この人にはいつも悩まされる、敦也はこの苦行にどう対処していいのやら分からなくなっていた。
もう少し興奮させてくれると思っていたのに、彼は真面目過ぎて瑞稀は物足りなかった。
今までの担当者たちは我慢し切れずに手を伸ばしてきたのに、彼ときたらもう…………。
仕方なく瑞稀は行動を起こすことを決めた。
瑞稀は勢いよく身体を横に反転させて敦也と身体を上下に入れ替え、呆気に取られた敦也の顔を自らのスカートで覆い隠す。
容赦なく内腿で彼の顔を挟んで、どうにか呼吸ができる程度に圧縮する。
もがく彼をよそにズボンのチャックを自分の顔とは逆の方向にずらし、ボクサーパンツらしき黒い下着から彼の分身を引き摺り出した。
所詮は彼も男、敦也の分身は先端から透明な粘液を滲ませ、陰茎に血管を浮き出させていた。
瑞稀はその汗で蒸れた匂いを放つ彼の分身を容赦なく口に含み、舌を使った。
瑞稀の口の温もりは2度目とあって、ジタバタし
ていた敦也が次第に大人しくなっていく……。
上下に首を動かす瑞稀の口の中で、敦也の分身はこれ以上なく硬くさせて存在を誇示させていく。
鼻にかかった小さな声を漏らし、瑞稀は今から胸を期待に膨らませていた。
だって、硬いんだもの…………。
これは作品の為の行動よ……。
そう、作品の為なんだから…………。
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