これまで気にもとめなかったこの女流作家を急に意識し始めたことで、すっかり見る目が変わってしまった。
彼女は官能小説家であり、初めからこのジャンルでデビューを果たした異色の作家だったことを思い出す。
何を考えている、作家の売れっ子先生だぞ………。
そう自分に言い聞かせたところで、彼女の背中に浮き出るブラジャーのラインに目がいってしまう。
椅子に座る後ろ姿を眺めるにつれ、細いウエストに反して以外にもお尻がグラマラスな形をしていると気付く。
確か彼女は既婚者だと聞いている。
年増が趣味ではないけれどこの彼女ならと、場違いなことを想像してしまう。
この身体を抱いている彼女の夫に嫉妬を覚えてしまった自分に軽い絶望を覚え、仕事が忙しくて近頃は会えていない彼女に想いを寄せた………。
時間も夜の10時を過ぎて、さすがに疲労と空腹を覚えていた。
余程のことがなければ担当者が帰りたいなどと言えるはずもなく、こちらのことに無頓着な彼女の神経を疑い始めた。
今の時代にこんなことが許されて言い訳がないけれど、そんなことは口が裂けても言えるはずがない。
ふぅ~っ……っと溜息を付いてついにペンを置いた彼女が、こちらに向き直る。
今日はこれでやっと開放される、そんな甘い期待は彼女の言葉で砕け散った。
ねぇ貴方、今日からあたしの担当者になったのよね………?
それならちょっと、協力してもらおうかしら……。
敦也は努めて平静を装って、返事を返した。
はい、何をすればいいのでしょう………?
彼女は眼鏡を外して、言った。
こっち来て、あたしの前に立ってくれる……?
ソファーから重い腰を浮かせ、足取り重く彼女の前まで進む敦也。
背の高い彼は彼女の座る椅子の横に立つと、腰の位置が彼女のちょうど顔の位置になる。
振り向いた彼女が椅子のレバーを操作して、椅子の位置を下げた。
ちょっと手詰まりなのよ、少しだけ借してもらうわよ………?
言いながら彼女は敦也のベルトに手を掛けて外してしまうと、狼狽える彼を気にもとめずチャックを下げる。
現れた黒いボクサーパンツの前の膨らみを見ながら、躊躇なく彼の下着を下げてしまった。
ちょっ……ちょっと何をなさってるんですかっ……!
動揺を隠せない敦也に、女流作家は醒めた目を向けて静かに言った。
あたしの担当者になったのなら、これくらいでいちいち騒がないで……。
今までの担当者たちは皆、あたしの作品のために従順に対応してくれてたわ………。
貴方の会社も、理解してくれてるわよ………?
耐えろ、堪えろ………とは、こういうことかと今更ながらに敦也は気付かされていた。
歴代の担当者たちも体を張って仕事を取ってきていたのだから、自分が壊すわけにはいかない。
彼女が機嫌を損ねる前に、身を差し出す覚悟というものを敦也は決めなければならなかった。
失礼しました、私で役に立つのなら………。
分かればいいのよ、分かれば………。
見た目はまぁまぁかしらね、食べてみないと味は分からないけれど………。
言い終わるか終わらないかのうちに彼女の口の中の温もりに包まれ、絡めてくる舌に目を閉じる。
どこか拙さの残る自分の彼女とはまるで違う熟女の舌使いは、次元が違い過ぎた。
舌の裏まで使って亀頭を可愛がり、鈴口から滑らかな曲線を描く面を遡ると迫り上がるカリ首に舌先を這わせていく………。
男のツボを知り尽くした熟女の頭はゆっくり、ゆっくりと前後に動き始める。
まったく隙間を開けずに貼り付いた唇がねっとりと絡みつき、思わず敦也の口から声が出る。
まだよ、耐えなさい………。
これにいつまで耐えろというのか、絶妙な力加減で吸い付く唇が幾度も幾度も亀頭を往復していくその凄さ………。
頬を凹ませて鼻にかかった声を漏らしながら、お尻を抱えられて頭を動かす彼女に必死に耐える。
楽しんでいるとしか思えない彼女に、声でもうこれ以上は限界だと伝えたつもりだった。
苦しげに悶え、鼻息荒く喘ぐ敦也を攻める手を緩めず、彼女は若い担当者のペニスを貪っていく。
壁に爪を立てるかのように堪えに堪え、まるで首を締められたかのような絞った声を出す敦也。
蟻地獄に吸い込まれていくように力尽きようとする我が身体に活を入れ、息を吸うために水面へと浮上するイメージを必死に頭に思い描く。
けれど、もう遅かった。
甘く痺れるような快感が身体の中を貫き、熟女の口の中に大量の精液が放たれていた。
生臭いような香りが鼻腔を突き抜け、生暖かさが口の中に充満する。
それを喉を鳴らして飲み下し、亀頭に絡みつく粘り気を掃除していく。
身体を震わせる担当者に構うことなく舌を這わせ、尿道に残る精液を吸い取って口から開放してあげた。
満足げな顔をする女流作家を見て、彼女の作品は担当者たちの屍の上に成り立っていたことをようやく知るに至った。
帰宅すると日付が変わっていた。
敦也は疲れ切った身体をベッドに横たえると、そのまま目覚めることなく朝を迎えるとは思わなかった………。
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