「・・・・・じゃ・・・わたし、行くね・・・」
妻の言葉に俺は返事ができなかった。
雰囲気で妻がチラリと見たのは分かったが、俺は何も言えずに ただ正面を見つめていた。
とうとうこの時がきた。
来てしまった。
俺はただただそう思いながら、ハンドルを握りしめて街灯に照らされた静かな駐車場に並ぶ車の群を見ていた。
ドアの開く音がして肌寒い外気が車内に入ってきた。
ドアと閉まる音と共に空気が揺れる。
俺は今更ながに絶句し妻の方を見たが、妻は振り返りもせずにホテルに向かって歩いていった。
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