26.
「雄さん。」
「ん?」
「もしもですよ。もしも私が新しい誰かを見付けて離れちゃったらどうします?」
「どうしたの。誰かイイ男でも見付けた?」
「いいえ。(笑)」
「そうだな。カッコつける訳じゃ無いけど、もうこの歳だし未練タラタラなんてしたく無いから、サッと身を引くかな。」
「相手が出来たとしても私が雄さんを求めたら?」
「まぁ、よくても話し相手ぐらいかな。」
「でも、真理ちゃんとは… 」
「ありゃ、もう歳だし先が無いだろ。ヨーコにはこれからまだ先があるんだからソコは身を引かないと絶対に良い事にはならないよ。」
「やっぱり雄さんが一番。♡」って抱き着いてくる。
「でも解んないよ。いつまでも未練タラタラでストーカーみたいになっちゃったらどうする?(笑)」
「雄さんは無いですね。サッサと他の相手を探しに行っちゃうと思います。」
「何で?」
「だって雄さんは人を悲しませたり苦しませたりする人じゃ無いし、そんな事に時間を使うより新しい楽しみを見付ける方を優先させると思います。」
「そうなんだよなぁ。俺はよく解ん無いけど、フラれただけで何でストーカーとか復讐とかリベンジとかってなるんだろうね?そんな事に時間を費やすんなら新しい相手探すとか趣味を見付けるとかした方が自分の為になると思うんだけどねぇ。(笑)」
「でも、雄さんは優しいから自分からはフラないでしょ。(笑)」
「そうだねぇ。考えてみりゃ、フった事はねぇかな。エッ!どうしたのフラれたいの?(笑)」
「絶対に嫌です。フラれるのは平気だけど、雄さんにフラれるのはぜ~ったいに嫌です。フラれたら私がストーカーになっちゃいますからね。(笑)」
「ヨーコにストーカーされるなら嬉しいかもな。(笑)」
って他愛もない話しをしてるとヨーコはいつの間にか寝息をたてていた。
朝。ホテルを出て帰路に就く。
コンビニに立ち寄り缶ビールを一本。
微妙に酒の臭いを漂わせながら帰宅してシャワー。今週は土曜の夜と日曜の午前に用事だったので呑みにも出掛けず過した。
月曜日。いつものようにバスに揺られて出社すると何やら騒がしい。
何かと思うと社長が亡くなったとの事。
まぁ、社長が急に亡くなったのは2回程あったので驚きはしないのだけど、代行で社長扱いになる副社長ってのが入社暫くはウチに居た後輩だ。
同僚と話す。
「雄ちゃん、ついに山田が社長だな。」
「そうなるな。」
「今でも連絡あるの?」
「まぁ、たまにな。困った時だけだよアイツが連絡よこすのは。(笑)」
「社長に向かってエラそうに言えるのか。羨ましいな。」
「言えばイイじゃん、アンナ奴。」
「そんなの言えるのはアンタだけ。」
「でもな、良い所もあるんだぜ。アイツが取締役になった時に、今までの奴は各営業所を周る時に偉そうにして接待扱い受けてやがったけど、違うぞ。仕事を頑張って貰ってありがとうって、手土産の一つでも持って周るのが本当なんだぞって言ったら実践しやがったもんな。」
「おぉ、確かに。何か今迄の奴とは違うぞって評判良かったもんな。アレ、雄ちゃんのアドバイスだったのか。」
「アドバイスじゃ無いけど、それぐらいの気持ちは常に持っておけ。此処までなれたのは自分の力だけじゃ無い、皆の頑張りで立たせて貰ってるんだって事を忘れるなって言っただけさ。」
「それを教えた雄ちゃんも聞いた山田もエラい!(笑)」
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