そう言えば、さっきまで聞こえていた美咲の荒い息づかいや、深く長いキス音、美咲の至福を告げるプシューッという噴射の音はいつの間にかやんでおり、集中治療室は静まり返っていた。
つい先程まで美咲は、複数のナースたちから、長時間にわたる性的愛撫の限りを尽くされ、女に生まれた幸福感と愛の快楽に何度も身をよじっていたはずなのだ。今や、美咲の性的感受性は、髪を触られただけでも軽く達するくらい最高潮にまで高まっていることだろう。
そんな状態の美咲…力尽きてうっとりと放心した彼女の上体を、ナースたちは抱き起こし、さらに化粧直しを施したというのだ。
「美咲さま、すごくお美しいわ…」
「あ、ありがとう…」
メイクのブラシが肌を走るたび「あッ…、ああッ」と震える美咲の有り様が目に浮かぶ。
化粧直しがいったい何を意味するものなのか、浩司にはよくわからなかったが、何度も女の歓びを極め尽くして、美しく紅潮した顔立ちに、レズビアンたちからあらためて寝化粧をされた今の美咲は、ゾクゾクするほど美しかったろうことだけは間違いない。
考えてみれば、クリニックでは、浩司が来院してからナースたちがしきりにうわさ話に花を咲かせていたのだ。
「ねえ聞いた?今日ついに加奈子先生が美咲さまに…」
「聞いたわ。お二人がうらやましい…」
「うふふ、お二人が最高の思い出になるように、私たちもお手伝いしましょうよ…」
ところが彼女たちは、浩司の存在に気がつくと、浩司に聞こえないように小声で会話したり、視線を交錯させたりするのだ。
ところがなかには、浩司に向かって「旦那様、このたびはおめでとうございます」などと意味ありげな笑いをするナースまでいたりする。
何か二人に特別な祝福の儀式でもあるのだろうか…そう考えると、浩司には胸騒ぎがした。
「先生、美咲さまがお待ちかねです」
「…ええ、ありがとう」
ふと見ると、壁鏡の前に立つ加奈子は、先ほどから髪を直したり、ルージュを引き直したりと、いつになく頬を赤らめ、どこか落ち着かない様子なのだった。
「わ、私、大丈夫かしら…」
「大丈夫です、先生。とてもお綺麗ですよ。」
とニッコリ答えたナースから「さ、これを」と、うやうやしく手渡された純白の花束を受け取ると、加奈子はまるでこれから永遠の愛を誓い合う恋人のように、美咲の待つ愛の部屋へと、高鳴る胸を抑えきれない、しかしどこか弾むような足取りで消えていくところなのだった。
(……化粧直しに、純白の花束まで? )浩司の胸は、ざわめきを増幅させた。いつもの治療以上の何かが行われるのか?
(まさか、これからあの部屋で、加奈子さまは美咲に……)
浩司の脳裏に、夫として決して認めたくない光景が、鮮明に浮かび上がった。
※ナンネットの画像掲示板をお借りしました。加奈子と美咲のイメージです
https://www.eroita.net/bbs/res/14/z262/
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