「浩司さん、ちょっとお待ち下さい。はいこれ、オナニー手帳ですよ。」
浩司はナースから赤い手帳を手渡された。彼女の目が笑ってるような気がした。
「お薬手帳」なら聞いたことがあるが、オナニー手帳とはいったい何なのか。
手に取ってよく見ると、表紙に『愛妻手帳 手淫の記録』と書かれている。
氏名の欄には、すでに女性の文字で自分の名前が書き込まれていた。
(こういうものは普通、本人が書くものなのではないだろうか)浩司は、自分がクリニックに支配され、完全に管理されているような恐ろしさがした。
さらに、1ページめにある治療のガイドラインに目を通して、浩司の手は、ワナワナと震えた。
そこには、浩司の射精が原則禁止であることと、射精には主治医の加奈子だけでなく、妻の美咲の許可が必要であること。万がいち浩司に無断の射精行為があった場合は、美咲への裏切り行為とみなし、離婚のペナルティが課される…とまで詳しく記されていたのだ。
「浩司様、今後のマスターベーションおよび射精につきましては、私たちレズビアンが管理させていただきます。恐縮ですが、記録を手帳にご記入いただき、毎日美咲様へご報告いただくとともに、来院時には必ずご提示ください。」
ナースの言葉使いは丁寧だったが、その目は浩司を見下すように笑っていた。
それにしても、オナニーのいったい何を報告しろというのか。浩司は、愛妻手帳のページをさらにめくってみて、顔から火が出る思いになった。
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