早朝のキーンと冷えた空気を後に置き去りにして、体を軽やかに前へと走らせる。
吐き出す息は白いけれど、それでもジャージの中は流れる汗でしっとりと濡れていた。
ジョギングも自宅マンションが見えてきたことで、そろそろ終わりを告げようとしている。
由美子は走っていた脚を止めて、入念に自分の体をストレッチする。
側を新聞配達のバイクが通り過ぎる。
体を折り曲げて突き出される由美子のお尻をしっかり目に焼き付け、兄ちゃんが顔をニヤけさせてバイクのスロットルを開けていく……。
このところこの時間に見るようになったあの女、いいケツしてるな………。
もう慣れたといえ深夜に起床して、新聞配達に勤しむ彼にとって毎朝の楽しみになっている。
スレンダーな体をジャージで身に包み、ショーツラインを浮かべた形のいいお尻を毎朝その目で見る女性………。
彼はあの女性が知られたフリーアナウンサーであることを、知る由もない……。
バイクに乗りながら、チラっとお尻を見るだけなのだから……。
江藤由美子は某局を離れフリーのアナウンサーとなってから、もう10年近くになる。
結婚を考えた時期もあったけれど、たまたま恋人と思っていた相手に恵まれなかった。
ただそれだけのことだった。
その後も何人かの男性と恋仲になったけれど……。仕事が忙しくて、長続きしなかったり……。
結果的に騙されて、不倫になってしまったとかそんなことばかり……。
恋にも疲れて気がつけば、50歳になっていた。
若い頃は胸や下着を隠し撮りされる被害にも合った……。
今はさすがにそういうこともなくなったけれど、あんなに嫌だった出来事も女としての需要がなくなった寂しさはある……。
せめてプロポーションは維持したい……。
だからジョギングも始めたし、スポーツジムにも通い出したのだ。
お尻も胸も最近は少し垂れてきたように思えて、危機感を覚えたから……。
筋力アップに成功したからだろうか、胸の位置も戻ったし、お尻の位置も上がった。
視聴者に見られる職業だから、見た目は大事なのである。
出来ることなら生涯を共にするパートナーに出会いたい、そんな気持ちも心の何処かにある。
そのためにも綺麗な姿を保ちたい……。
でも自分の年齢を考えると、どうしても歳下になる………ハードルが高すぎない?……
ひとりシャワーを浴びながら、寂しく呟いてみる……。
火照った体に冷蔵庫から取り出したミネラルウォーターを流し込み、ベットボトルを手にしたままベットルームへと歩を進めた。
ベットに寝転んで、テレビをつける。
自分も報道や情報番組に出ているけれど、実はお笑いが好きだったりするからやっぱり見てしまう。
でも、なんだかな…………心が満たされない…。
由美子はベッドサイドの引き出しを見詰め、手をかけた。
そこには電動マッサージ機が綺麗に収められいて、出番を待っていた……。
マッサージする箇所は、勿論………。
他にも小さなローターや、最近になって入手してしまった物もある。
クリトリスに直接触れず、空気振動で刺激を受ける画期的なアレである……。
どれもその時の気分によって使い分けているけれど、やっぱり一番のお気に入りは電動バイブであったりディルドの類………。
今は女性の風俗もあるようだけど、多分一生そういった分野を利用することはないだろう。
スキャンダルになったら、そこで終わりなのだから………。
だから、せめて誰に迷惑をかけることなく……。
由美子は過去に自分の前を通り過ぎた男たち、彼らの体を想像する……。
想像の世界では過去の男の顔はもうボヤけてしまっているけれど、体は鮮明に覚えている……。
こうやって胸を揉んでくれて、乳首を弄ってくれた………。
同じように自分で胸を揉み、乳首を摘む……。
そしてショーツの中へ、手を忍ばせる……。
ある場面ではあの彼、またある場面ではあの時期に付き合っていたあの彼……。
というように由美子は都合よく男を入れ替えて、クリトリスと膣口を交互に指を移動させる……。
クチュッ………やがてそんな音が出る頃、ショーツを脱いで黒光りする電動バイブをあてがう……。
ゆっくりと中へと沈めてから、吐息を漏らす……。
中に馴染ませるようにしばらく動かし、バイブのスイッチを入れてみる……。
唸り声を上げてバイブの首が、膣の中でぐるぐると回りだす……。
使い始めのころはこれの何がいいんだろうと思ったけれど、コツを掴んだらもう………。
気持ちのいいところに当てて、目を閉じる……。
ウィ〜ン…ウィ〜ン…ウィ〜ン…ウィ〜ン…………
ペニスではあり得ない動きが絶妙に擦り上げて、ジワジワと快感が呼び起こされていく……。
そのまま前後に手首を動かして、自分の好みの早さとペースで掻き回す……。
クッチャッ…クッチャッ…クッチャッ…クッチャッ
あぁ……堪んない…………駄目……もうちょっと楽しむの………
ひとりうわ言のように呟いて、イキそうになりつつある自分を制御する……。
ウネウネと腰を動かしながら快感を余すことなく享受して、手首の動きを早めていく……。
由美子 あっ……あぁ……あぁ〜……あっ…あっあっ…
由美子がテレビ画面では決して見せない顔で喘ぎ、背中と足をベットに接地したまま腰が浮いていく……。
手首が小刻みに動き、バイブの先端が奥を心地よく叩く………。
由美子の体がブリッジの形になり、背中を持ち上げた………。
顎も持ち上がる……。
頭をベットに減り込み、体が硬直する……。
由美子 あっ…………ああっ………………あっ………
アーチ型になった体が一度弾んだようになって、そのままベットの上に落ちる……。
感電したように体を震わせ、波が引いていくように静かになっていった……。
半分だけ中に入ったままの、黒いバイブが抜け落ちる……。
透明な糸が伸びて、プツンっと切れる……。
部屋の中にテレビの音声が聞こえる中、歪な玩具のモーター音が鳴り響く………。
ウィ〜ンッ……ウィ〜ンッ……ウィ〜ンッ……
数日後、仕事帰りの由美子は買い物をして帰ろうと、近所の商店街に足を向けていた。
独身だとつい料理を作るのが面倒になり、美味しいお惣菜にお世話になってしまう。
由美子はヒジキの煮物、ポテトサラダ、煮魚なんかを購入してお店を出た。
食べるものがオバサン臭いと言われようが、好きなものは好きなのだからいい。
商店街を出てほんの少し歩くだけで、辺りは閑静な住宅街になる。
地上からかなり下を流れる川沿いに桜並木があり、季節になると目を楽しませてくれる。
その川沿いを歩き、小さな橋を渡る。
ふと由美子は足を止めた……。
今度エステサロンを始めましたので、良かったらおいで下さい………。
橋を渡ったところに立つ品の良い女性に声をかけられ、手作りのチラシを渡された。
自宅を改装してお店を開業したような、そんなお店がプリントされている。
メンズ、レディース、どちらもされているようで、笑顔を浮かべた若い男性エステティシャンの姿もそこにはあった。
メンズエステを受け持つのは男性なの?………
理屈から考えればおかしくはないけれど、それで男性客の集客はあるのだろうか。
整体とか接骨院ならまだわかるけれど………。
素朴な疑問はありながら、まさか彼が女性の体に触れるとか?……なんて思ったりしてみる。
まさか、あり得ない………。
自宅に帰り着いて、改めてチラシを見る。
普段ならまず気にせずに、このチラシを捨てていただろう。
でも………ど、由美子は思い直した。
このチラシに載る若い爽やかな彼の笑顔、それに惹きつけられたのは素直に認める。
カフェやレストランで素敵な男性がいたら、一度くらい顔が見たくて足を運ぶくらいはする。
それと同じ、何もやましい事なんてないではないか………。
由美子はチラシの電話番号にかけて、予約を取った。
一目だけ彼の顔を見られたら、それでいいのだ。
エステが気に入ったら、また行けばいい……。
本当に気軽な気持ちで由美子は予約を入れて、手にした電話を切った。
夕飯の前にお風呂に入りたい……。
バスタブにお湯を満たすスイッチを入れ、買ってきたお惣菜を出してお皿に盛り付ける。
ラップをして、後は食べるだけである。
細々とした用事を済ませたら、お湯が溜まったことを知らせる音声が流れた。
由美子は洗面台、洗濯機などが集結する脱衣所にスリッパの音を立てて移動する。
衣類ど下着を脱いで、洗濯かごの中に放り込む。
未婚で独身、出産未経験の体が露わになった。
乳首と乳輪の色は濃くなったけれど、ツンと斜め上を向いたDカップの乳房が誇らしげに揺れる。
贅肉がほとんどないスレンダーな体は肌が白くてしっかり括れがあり、ジムの成果でお尻も垂れていない。
若い頃に脱毛したデリケートゾーンは不潔にならない程度にしかしていないので、Oラインは別としてIラインは控えめに残っている。
後はビキニラインを綺麗にしてもらった以外は、しっかり陰毛は残っていた。
今でこそ完全脱毛が流行っているが、由美子は生まれたままの姿になることに抵抗があったのだ。
由美子は体毛が濃い体質らしく、眉毛は手入れをしてもらってから未だに描かなくてもいいくらい
である。
だから下の毛も当然ながら、残された陰毛の密度は見た目のわりに濃い……。
歴代の彼氏たちは、それにとても興奮していた。
シャワーを浴びる由美子の乳房にお湯が伝い、とても見事な逆三角形をした陰毛が水草のように揺れる……。
とても50歳には見えない美貌を備えて、とても見事な身体は着るものを選ばないほど男性をそそらせる……。
ただ由美子のキャリアと年齢を考えたら、男性は簡単に近づけないだけなことを由美子は気づかないのだった………。
今日は収穫があった。
なんとあのフリーアナウンサー、江藤由美子が釣れたのだ。
この界隈はセレブも多く、だからこの地にお店を構えたのだけれど、それは正解だった。
もうすでに2人の女、人妻と最近独身に戻った女を性の虜にさせた。
あたしも駆け出しの男性モデル、男性タレントの卵を数人ほどいただいて虜にさせた。
この分なら本店から人員を補充しなければ、お店が回らなくなるかもしれない……。
とりあえず、男好きそうな江藤由美子を虜にさせなければならない。
いいえ、きっとそうなる筈………。
だってウチには年増キラーが揃っているんですもの………。
実験的に開いた離れ小島のようなこのお店は、隠れた男女の花園になる……。
お店を任された清水夏美は、チラシに載せた若い男性エステティシャンにクンニリングスをされながら、ひとりほくそ笑む。
江藤由美子が訪れる日をカレンダーに見つけ、策を練る………。
その夏美の顎が、不意に跳ね上がった………。
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