その頃、夫は旅館の部屋で横になりながら時計を見ていた。
「そろそろ終わる頃かな。」
彼は温泉旅行のプランを思い返しながら、自然と笑みを浮かべていた。ミユキの喜ぶ顔を想像するだけで、少し疲れていた自分の心が軽くなる。今日は自分たちの記念日。彼女にとっても素敵な一日になればいいと、そう願っていた。
彼はスマホを取り出し、ミユキのために用意したプレゼントの確認をしながらふと呟いた。
「ミユキ、気に入ってくれるといいな……。」
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一方で、ミユキは施術台の上で、ますます深く揺れ動いていた。小林の手が太ももに触れた瞬間、彼女の体は自然と微かに硬直した。それを感じ取ったのか、小林は優しく声をかけた。
「大丈夫です。緊張しないでくださいね。すべての疲れを取るために、ここも大切な部分です。」
その言葉は落ち着きを与えるもののはずだったが、ミユキにはかえって妙に生々しく響いた。小林の手がタオルを持ち上げ、直接肌に触れると、彼女の呼吸は止まるほど浅くなった。太ももの内側を指先が滑りながら、丁寧に押し流すように動くその感触に、彼女は思わず目を開けた。
「ここ、特に張っていますね。少し時間をかけます。」
小林の声は穏やかで、その落ち着いた雰囲気が逆にミユキの心を揺さぶった。抵抗すべきだという思いが一瞬浮かんだが、それを振り払うかのように、小林はさらに言葉を続けた。
「リラックスしてください。疲れを取ることだけを考えていれば大丈夫です。」
ミユキは目を閉じ、何かを振り切るように軽く頷いた。そして、その頷きが小林をさらに大胆にさせたのか、彼の手は太ももの内側を越え、もっとデリケートな部分に触れようと進んでいった。彼女は思わず体を引き寄せるように反応してしまい、同時に自分の心が完全に揺らいでいることを悟った。
「だめ……」
ミユキの唇が微かにそう動いたが、小林にはその声が届かなかったのか、それとも意図的に無視したのか、彼の手は止まることなく進んでいく。
「ミユキさん、大丈夫ですか?」
小林の低く柔らかな声が、耳元で静かに響いた。その声には、不思議なほどの安心感があり、彼女の中にわずかに残っていた警戒心を溶かしていくようだった。
彼の手がふくらはぎから太ももに移動し、内側へとゆっくり進んでいくたび、ミユキは自分の体がどうしようもなく敏感になっていることに気づいた。自分の意志では止められないその感覚に、心臓が早鐘のように打ち続けている。
「もっと力を抜いてくださいね。リラックスすることが大切です。」
小林がそう言うと、彼の顔が近づいてきたのが分かった。施術台に横たわるミユキのすぐ耳元で、小林の呼吸が微かに感じられるほどだった。
「もっと楽にしてください。」
耳元で囁かれたその一言に、ミユキは身体中の力が抜け落ちるような感覚を覚えた。彼女の中で、これ以上はだめだと警告する声があった。しかし、その声は小林の言葉と温かい手の動きにかき消され、気づけば体が無防備に彼の手に委ねられていた。
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