やっと出社してきた部下は病み上がりとあって、ま七、八分といったところか。
本人は笑顔を振りまいて入るが空元気なのは明白で、まだ無理はさせられない。
というのも、ひとりが復活すれば他のひとりが倒れるという………この時期ならではの現象が起きているからだ。
ウイルスの猛威はどこも同じで、人手不足に喘ぐのは否めない。
これ以上の欠員は防がなければならないのだ。
なぜならば欠員による人手不足で手が回らないと、応援要請が寄せられてきているからだ。
それは先日、美樹がドキドキさせられた彼のいる下請け会社からに他ならない。
下請けといってもほとんど子会社の扱いに位置していて、利益を生む金の卵を潰すわけにはいかない。
親会社としては看過できず、応援要員を美樹のいる部署から出さなければならないのだが、そこは人手不足に頭を悩ませる美樹の泣き所になっていた……。
仕方なく美樹が自ら出向くしかあるまいと急遽、用意をはじめるのだった………。
美樹は途中、駅のトイレに寄った。
何を考えてるの……あたしったら………。
個室に入るとジャケット、次いでブラウスを脱いでしまうと、インナーのキャミソールを脱ぎ去った。
言わずと知れた下着が透けるのを防ぐ為のものだが、保守的な日本の価値観が身だしなみという煩わしい強迫観念を植え付けられた現代人というものは、ベージュ色のブラジャーを着ければ良いのだけれど……。
女としては下着ひとつでその日の気分があがるもの。
気にいった見えないお洒落くらいは、したい。
その日の美樹は上下とも、お揃いの濃紺色の下着を着けていた。
一部が透けたレースが仕立てられた大人のセンスの光るデザインが、美樹は気に入っている。
が、今の日本では下着をあからさまに透させるのは、特にビジネスシーンにおいてはナンセンス。
スーツのジャケットを脱がなければまだいいのかもしれないが、管理職にある常識も良識も普段は持ち合わせるいい年齢の女は、やり過ぎとも思えることを考えていた………。
急に決まった話だから仕事を抜けば心の準備はまだ、出来ていない。
美しくて仕事のできる管理職は、その顔の下に邪な気持ちを抱えながらショーツを下げる。
体が淫靡な準備をはじめていた証に、排卵期でも病気でもないのに多量のオリモノが分泌されていた。
汚したオリモノシートを剥がし取り、新しく綺麗なシートをショーツに貼り付ける。
今日はどこまで誘惑できるか、その………もしかしたらそういうチャンスはあるのかどうか。
洗面所の前の鏡に映る自分の顔に、美樹は問いかける。
その女はただ、無言で見つめ返すだけだった……。
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