乱れた髪の毛を直して身なりを整え、何食わぬ顔をして梨沙子の元で平静さを装う。
そんな苦痛の時間を乗り越えて………
美樹 じゃあ梨沙子、また連絡するから……
笑顔を残してその場を後にした美樹。
ショーツに染み出るクズ社長の精液が不快で、悲しかった………。
美樹 …………と、言うことなの、協力してくれないかしら?……
都会の一角にある綺羅びやかな夜の街、とある店のカウンターに美樹の姿はあった。
しげみママ 許せないわね、アンタをそんな目に合わせるなんて………
美樹 ママを巻き込みたくはなかったんだけど、他に頼れる人がいなくて……
しげみママ 水臭いわね、アタシとあんたの仲じゃないの………
アタシの友達に酷いことをする奴は、見てなさいよ!
アタシはああいう連中は好きじゃないから普段はつき合いがないけどさ、こういう時は使えるのよ……ウフッ、任せなさいよ…ウフフっ…
元自衛隊員だった名残りがたっぷり残る、筋肉質の体を揺すり、野太い声で笑うしげみママ。
その青い髭剃り跡の口を忙しなく動かして、何やらどこかの連絡先の相手と喋りはじめた。
時に怒りで肩の筋肉を盛り上がらせ、腕の筋肉にも血管を浮かび上がらせる。
それとは対象的に内股になった脚と腰をクネクネとさせる姿に乙女心を覗かせ、やがて電話を切った。
しげみママ 話がついたわ、いつでもいいわよね……ウフッ…
タンクトップの下の分厚い胸板をパンプアップさせてしげみママは、ウインクをして見せてくれた………。
後は自分の身を削って、クズ社長を罠に陥れる日を指折り待てばいい。
グラスの中の液体に美樹の瞳が怪しく映り、氷が音を立てて揺れていた………。
美樹と梨沙子、関係者が会場の準備に追われていた。
モデルたちが予行練習にとランウェイを歩き、ターンをして戻っていくのを眺め細かい詰めの作業をしていく。
そうしていよいよ開始30分前になったところで、イベント会社のクソ社長が姿を現した。
イベント会社の社長 順調のようですな……
忙しく準備に余念がないモデルたちを、いやらしいその目で視姦をするクソ社長。
イベント会社の社長 この上に見晴らしのいい場所がありますから、そこで素晴らしいモデルたちを観ませんか………
魂胆はわかっていた。
その目ば分かっているだろ?……っと、有無を言わせない脅しが込められている。
忸怩たる気持ちを飲み込み、慌ただしく動き回る梨沙子を残して美樹ばクソ社長に続いて二階にある特設された場所へと重い足を向けた……。
胸までの高さがある手摺り、明かりの届かないこの場所は秘め事を行うのに恰好の場所になる。
あの日の悪夢が再び、繰り返される………。
手は手摺りに乗せ、腰を後に引いて脚を開かせられる。
引き下ろされた美樹のショーツをクズ社長はジャケの内ポケットに入れて、恥部にむしゃぶりつく………。
濡れる前から乱暴に扱われ、痛みで目が涙で霞む。
イベント会社の社長 いつ見てもいやらしいなぁ、えぇ~?…あんたのここはよぉ……
そう言うとクリトリスを舌が、乱暴に痛ぶる。
舌のザラザラが強く擦りつけられて、強烈な刺激に背中が仰け反る……。
………うっ!…いやぁっ!……あっ!!…ああっ!!…
美樹の体に電気が走り、弾かれたように動き強張る。
危機を覚えた体が女の水を分泌させ、とろりとした透明な粘液が溢れ出る。
それを美味しそうにクズ社長が啜り、舌に絡ませて第一関節ほどに勃起したクリトリスを刺激する。
美樹の視界に映る空間がグニャリと歪み、膝が笑う………。
ひとりでに口から漏れ出る声が、自分のものではないような甘い響きを持って流れ出ていく……。
崩れ落ちようとすることが許されず、下から固定されて地獄の快感が押し寄せる……。
狂ったように頭を振る美樹を、クズ社長の容赦ない舌がトドメのひと舐めがひとりの女を崩壊させた……。
エクスタシーに沈む美樹の悲鳴は大音量の音楽に掻き消され、闇に埋もれてしまった。
肩で息をする美樹を立たせたクズ社長は、手摺りに掴まらせるといきり立ったペニスを容赦なくぶち込んだ。
背中を仰け反らせる美樹の奥まで到達すると、ゆっくりと抜き差しがはじまった。
明るいランウェイを行き交う綺羅びやかなモデルたちが、何も知らずに長い脚を前に進めて次々に現れては消えていく……。
美樹は前後に揺れる視界の中でそれを認識出来ないまま眺め、頭は快楽に支配されていた。
こんなの、きもちよくなんかない……こんなの………
そう思うことで我を保とうとする中、無情な快感が体を貫いていく………。
眉間に刻むシワが急に弛緩して、恍惚を浮かべてしまう………。
折れそうになる気持ちを奮い立たせて唇を強く噛む美樹だったが、自分でいられる間隔が少しづつ短くなっていく………。
不意に舞台袖の陰から誰かを探す梨沙子の顔に、美樹は気づいた。
その梨沙子が二階の暗がりで明かりに浮かぶ美樹の顔に気付く。
美樹と目が合うと、どうしてそんな所にいるのかと怪訝な表情を見せる。
そんな梨沙子に精一杯に作り笑顔を見せて、戯けて見せる美樹。
そんな美樹の体は、こころなしか前後に揺れているように梨沙子には見えた。
音楽に乗って楽しんでいると、梨沙子は勘違いしてくれただろうか………。
快感に視界を歪ませながら、必死で微笑む美樹を見て梨沙子は仕事に戻った。
………あぁ~…………はぁ~………んあぁ~あっ……………
太腿に爪を立てて耐えるのにも疲れ、蟻地獄に飲み込まれるように快楽に支配されていく………。
……くっ…………あっ…あっ………んっ…はっはっあ〜……
自分を保とうとする意識だけが先行して顔を起こしていたが、その顔は自分の肩に乗せんばかりに傾いて恍惚に呆けている……。
明滅する明かりに照らされた顔が前後に揺れ、もはや人格が抜け落ちたひとりの女に成り下がっている。
不意に早まる腰の動き、打ちつけられるペニスに快感が高まって背中が反り上がる………。
白くなった視界の中で体内に熱いものが広がる感覚を覚え、膝が崩れた………。
ガチャガチャとした音が美樹の耳に届いた。
体を起こされた美樹の目にパイプ椅子が映り、そこに座ったクズ社長の上に引き寄せられる。
思考が働く前に跨がらされ、向かい合わせに腰を沈めていく………。
………あぁぁ〜……っと、美樹の口から声が漏れる。
何かを求め、ひとりでに腰が動き出す。
体の深いところから強かに快楽が沸き起こり、それを追いかけるように腰が加速する。
何も要らない……何も必要ない………。
今はこれ以外に求めるものはない……。
体を上下に弾ませ、打ち下ろすたびに女の喜びが広がっていく………。
いつの間にブラウスが開けられていたのか、乳房を鷲掴みにしたクズ社長が悶絶している。
ひしゃげた乳房に傷みが走り、背中を仰け反らせて距離をとる。
グラインドさせる腰の下から耐え難い快楽が体を駆け上がり、我を失っていく………。
体に激しい痙攣が起こり、幾度か大きく弓なりになってクズ社長に倒れ込んだ………。
性欲旺盛なクズ社長は、美樹を裏口から外に連れ出した。
イベント会社の社長 今夜は一晩中、楽しませてやるからよぉ……
朦朧とする頭、もつれる重たい足を引き摺るようにして美樹の手を引くクズ社長の前に、屈強な男が立ち塞がった。
イベント会社の社長 だっ…誰だテメェ……
後を振り返ったクズ社長の目に、もう一人の屈強な男の影が逆光の中に浮かぶ。
2人のスキンヘッドの筋肉隆々の男たちは間合いを詰め、その体格に似合わぬ素早い動きを見せた。
うめき声一つを上げたクズ社長を担ぎ上げたひとりが、開いたままのワンボックスカーの中に放り込み、次いで美樹を恭しく助手席に座らせた……。
野太い声が、美樹に言った。
男一号 しげみママに聞いてるわ……
男2号 あんた、根性があるじゃない……女にしておくのが惜しいわね、ウフフっ……
秘密のアジトに着いて、クズ社長を椅子に縛りつける。
男一号 先ずはアンタが好きにして、いいわよ
男2号 どうするのよ、後が突っかえでるんだから早くしてよね、もう………
野太い声の2人が、美樹をせっつく。
美樹 あたしは、もういいから……後は好きにして
男一号と2号 いいの?………アンタ、見直したわ……
まるで双子のようにシンクロさせて、喜ぶ2人。
ピチピチの迷彩柄ズボンを脱ぎ出すところで美樹は、その場を離れた。
外に出ると大きな体をミニクーパーに押し込んだしげみママが、待ち構えていた。
しげみママ あら、早いじゃない……もういいの?
助手席にうずくまる美樹に、不服そうに尋ねる。
どこからか男の断末魔の叫び声が聞こえ、クスッと笑う美樹を見てしげみママは、ミニクーパーを発進させた。
しげみママ 後で契約書とかその他のものは、あの2人が持ってきてくれるはずよ……
アンタ、ちゃんと病院に行きなさいよ……
美樹 その前に、しげみママが作ったご飯が食べたい……
しげみママ 呆れた………こんなときにお腹が空くなんて、アンタも大した子だわ……ウフッ…
しげみママのいう通り、契約書と騙し取られそうだった金銭は戻ってきた。
クズ社長をすぐにあの2人に渡したことが、気遣いのできる珍しい女という生き物に認定されたらしい。
あの2人が女の美樹を気にいるなんて、奇跡に近いほど女嫌いらしいからだ。
しげみママ だから言ったじゃない、アタシの子分だってあの2人には言ってやったわよ………
その後、梨沙子は不思議そうに契約書などを美樹から手渡され、どういうことかとしつこく聞かれたが、知らないと白を切った。
あのクズ社長の行方は、誰も知らない。
風の噂で場末のオカマバーに、ブサイクな新人が現れたとかなんとか……本当のところは定かではない。
クズ社長の片腕だった男は、痔の手術を受けてから姿を消したらしい。
朝日の中をスラリとしたスーツ姿の女性が、颯爽と歩いていた。
サラリとした黒髪を風に靡かせ、すれ違う男性が思わず振り向く。
プロポーションのいい後ろ姿を見て、男性が溜息をついた。
あんな良い女性が自分の彼女ならと………。
空を見上げると、夏が終わりを告げて爽やかな秋の青空が広がっている。
いつもの忙しい時間の中に、美樹の姿が消えていった………。
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