乱れた髪の毛を可能な限り直し、放り出されていたショーツを手に取る。
それに足を通す手を、止めた。
膣から流れ出る精液が床を汚し、自らからも臭っている。
このまま親友の元へは戻れないではないか……。
それを見計らったようにクズ社長が下卑た笑みを浮かべ、携帯用のウェットティッシュを差し出してきた。
手慣れていると、美樹は思った。
この男は常日頃からこのようなことを、繰り返しているに違いない。
これまで卑劣な行為に涙を流す女性が、どれだけ闇に葬られてきたのだろうか………。
今日という日に美樹が親友に同席することは知らなかったはず……ということは……最初から梨沙子を毒牙にかけるつもりだった?………。
…………許せない。
美樹の復習の炎が、メラメラと燃え上がる。
手早く精液の処理を終えて、美樹たちは下の2人の元へ白々しく会話を混じえながら階段を降りていく………。
美樹 スカートの裾まであの手の混んだ繊細なデザインが……他にも随所にあるのがご理解いただけましたか?……
イベント会社の社長 素人の私にも分かりやすいご説明を、ありがとうございました…
いやぁ~奥が深い………
腸が煮えくり返る気持ちだったが美樹はグッと堪え、笑顔で接する振りを続けた。
クズ社長も美樹の意図に理解して、白々しく芝居につき合ってくれる………つくづくクズだったが今はありがたい。
クズ社長はもう用が済んだとばかりに話を早々に切り上げ、お付きの片腕を伴って帰っていった。
美樹 梨沙子、アタシもちょっと用事があって行かなきゃいけないの……ごめん、また連絡するね………
そう親友に伝えると急ぐ気持ちを押さえ、彼等の後を追うようにその場を後にした。
彼等に追いつくと思った通り、クズ社長は夜の街に消えて行き、片腕の若者はひとり駅に向かって歩を進めはじめた。
その彼に美樹は声をかける。
振り向いた彼は驚愕し、次に身構える。
美樹は一目でこの若者も被害者のひとりなのではないか、そう肌で感じた。
頭が切れそうだが邪気が感じられないのだ。
美樹 ちょっと、つき合ってもらえないかしら
………
身構えたまま彼は素早く頭を働かせ、何が最善なのかと考えているようだ。
だが、世の中の荒波を越えてきた美樹のほうが、そこは上手だった………。
美樹 貴方、あのクズに利用されてるんじゃない?
私はこれから然るべき所へ出向こうと、そう思ってる…
さっきまでいた場所は数か所にカメラがあるの、知らなかった?……女だけしかいない場所だからいつ何時何があるやもしれない、女は用心を怠らないの……
いくら貴方が利用されているとはいえ、共犯は免れないわよ?……知ってたわよね……貴方たちの上で、どんなことがあったであろうかは………
畳み掛けると彼は、簡単に落ちた。
美樹 協力してくれたら悪いようにしないわ…
貴方もあのクズをどうにかしたいんじゃない?……
彼は葛西、と名乗った。
葛西 どっ………どうしろと?……
美樹 私の目的はあのクズよ、貴方じゃない……
明日、連絡するわ………
連絡先を交換すると、彼は早足で去っていった。
もちろん彼が裏切らないとは言い切れないが、その可能性は低いと美樹は踏んだ。
しっかりと釘を打っておいたから………。
それよりもはやくシャワーを浴びたい。
あのクズの忌まわしいものを、美樹は体から早く洗い流してしまいたかった………。
翌日に待ち合わせ場所を彼に伝え、駅前の喫茶店で2人は落ち合った。
やはり彼はあのクズに弱みを握られ、その頭脳を道具にいいように使われているのが分かった。
父親が連帯保証人となって多額の借金を負い、それをあのクズが肩代わりをしていた。
もちろん、息子の彼の頭脳を利用する目的があってのことだ。
葛西 アイツはクズ野郎だ…
美樹は葛西から散々クズの悪事を聞かされ、心が冷えていくのを感じた。
そして、決意を新たにする………。
彼によるとあのクズは、とある喫茶店を経営しているというのだ。
ただの店ではなく喫茶店というのも名ばかりで、かなりいかがわしい類の店……。
その世界には知られたある種の趣味趣向の男女が出逢う、そんな場所らしいと想像がつく自分が嫌になる。
葛西 あいつは脱税した金を、あの店のどこかに隠しているはずだよ…
美樹 貴方もその店に行ったことがあるんだ?
皮肉めいた美樹の言い方に、心外だと言わんばかりに彼は言う。
葛西 僕にそっちの趣味はありませんよ……
僕が刃向かえないと分かってて、何度かあの店に連れて行かれたことがあるだけです……
僕の反応を見て楽しみたいのと、自分の虚栄心を満たすためにね……
そうは言っても彼は男だ。
だが思ったよりまともな感性の持ち主らしい。
他人の汚い情事に性欲を刺激させられるのは、さぞかし苦痛だったはずなのだ。
それは今の彼の表情が如実に物語っていて、美樹は彼に同情した。
でも、つき合ってもらう。
彼は……葛西にも責任の一端はあるのだから。
美樹は受付はほどとんど素通りだった。
その際に体を舐めるように見られる不快さを味わったが、この手の店は慣れているというようにふてぶてしく振る舞う。
無理もなく、美樹たちは変装をしている。
美樹はウィッグにキツめのメイク、胸元が見えそうなトップスにサイドに深いスリット入ったレザースカートという出で立ち。
葛西も遊び人風に茶髪のカツラに、黒いシャツ、チェーンを垂らしたレザーパンツという格好だ。
彼が支払いを済ませ、2人で入店する。
店内は奥にバーカウンターがあり、程良い広さの店内はそこかしこにボックス席がある。
見ただけではどこかの格式ある純喫茶と、バーをかけ合わせたような店だったが、薄暗い店内には男女の淫らな息づかいが聞こえてくる。
背もたれの高いボックス席は、これから始めようとする男女の姿。
あるいは抱き合い、互いの体を弄り合う男女。
目を背けた先のボックス席は四つん這いになった女が男の股間に顔を埋め、その女の股間には仰向けになった別の男が顔を埋めていた……。
美樹は人間の業の深さに吐き気を覚え、空いているボックス席に腰を降ろした。
葛西も美樹の隣にピタリと着く。
なぜならオーナーのクズ社長が趣味を兼ねて店内をカメラを通し、画面で見ているから………。
物欲しそうな顔をした男が、カウンター席から熱い視線を美樹に送っている。
ここではカップルや気の合った者同士が、複数プレイに及ぶのだろう……先程の男女3人のように。
もちろん他人のプレイを観賞して楽しむ輩もいる。
美樹たちもドリンクを片手にそれらしく装っていたが、初めて訪れた客にしては目立つらしい。
カウンター内に立つ店員が、さり気なく見ているのに美樹は気づいた。
ということは、あのクズ社長も見ているに違いない。
この手の店は当局の手入れに神経を尖らす。
しかたなく美樹は葛西に断わり、股間に手を伸ばした。
美樹 それらしく振る舞って……店員に見られてる………あいつもきっと、見てるから……
たちまち葛西の股間が硬くなっていく。
美樹は……ハッとした。
あのクズ社長が出てきて、こちらを伺っている。
美樹 私の胸を触って……
葛西 えっ……それは話になかったでしょ…
美樹 いいから言う通りにしなさい、あいつが疑って見てる………
葛西は美樹の勢いに押され、服の上から胸に触れる。
ブラジャーに包まれた柔らかい乳房が潰れ、形を変える。
あいつは………ずっとこちらを凝視している。
疑心暗鬼になりながら、それでも年下の男と年上の女の行方に興味を持つスケベ心……
どこまであいつは下衆なのか………。
美樹 服を捲って、胸を……して……
葛西 はっ?……なにを言って……
美樹 言わせないでっ!………あいつが見てる……
葛西 すいません……許してください……
美樹 いいから……貴方が悪いんじゃない……
まさかこんなことになるとは思わないから、美樹は場違いな後悔が旨を占めた。
もっとマシな下着を着けてくるんだった………。
シンプルな白いブラジャーはあまりにも清楚過ぎて、この服装に合っていない。
それでもレースと透けた部分のあるデザイン制が大人のセンスを辛うじて顕示し、見ようによっては性に奔放な女を醸し出しているだろうか………。
背中に回された手がホックを解き、ブラジャーを押し上げて縛めから開放された乳房が露わになる。
彼が、顔を埋めた………。
右胸……左胸……顔を移動させながら舌を這わせ、舐める振りをする葛西……。
そう、彼は肝心な乳首に触れないようにしていた。
どこまで真面目な男なのだろうか。
感情に流されず気遣う彼に、美樹は好感を抱いた。
その様子をあいつは眉をひそめ、訝しげに見ている。
向こうからは正面を向いている美樹は丸見えなのだ、なかなか乳首を舐めようとしない不自然さは疑念しかない。
美樹 いいから、ちゃんと舐めて……周到にあいつは観察してる……
恨まないから………演技のつもりでしなさい……
美樹の覚悟にピクリと反応した葛西……。
彼もまた覚悟を決めて、舌先が敏感な乳首に触れる……。
美樹の頭が後に倒れ、白い喉を見せる。
舌が動くたび肩がピクピクと反応をし、吐息が漏れる。
そっと窺うとあいつは目を逸らさず、こちらを見ている。
どうやら興味を持たれてしまったらしい……。
どこかで興味を失うまで、続けなければならないだろう。
美樹は葛西の頭を抱きしめ、官能に浸る振りを続ける。
チロチロと動く葛西の舌に、嫌でも体が反応する。
硬く勃起した乳首がクネクネと首を振り、甘い響きが広がっていく。
見ると下卑た笑みを顔に張り付かせたあいつが、こちらに釘付けになっている。
それどころかフリーの男の数人が、こちらに興味をそそられて近くで見られているのに気づく。
どうにも誤魔化しようがない、しかたなく葛西のレザーパンツに手を伸ばしてファスナーを下げる。
………えっ!……っと驚く葛西に目配せをして、彼の後の方からこちらを窺うあいつの存在を知らせてやる。
大人しくされるがままになった葛西の、硬く勃起したペニスを取り出して、おもむろに手を上下に動かす美樹。
ヌルヌルと滑る手が、葛西のプライドを捻じ伏せていくように彼の意思を麻痺させていく。
相変わらずこちらを凝視し続けるあいつが、琥珀色の液体の入ったグラスを口に傾ける。
男女の情事を肴にするクズっぷりに、いつまでも誤魔化しは効かない。
覚悟を決めて美樹は葛西のペニスを、口に含んだ。
驚愕する彼を無視して、舌を亀頭に回週させていく。
ひときわ亀頭を攻めて演技のない、本気の快感に喘ぐ葛西をあいつに見せなければならない。
うっ………うっ………っと悶絶を見せる葛西を、容赦なく美樹は頭を上下に振る。
ソファーに膝を立てて頭を振る美樹の無防備になった下半身に、誰かの手が触れる。
欲情した男のひとりだと思われるその手が美樹のスカートを捲り上げ、ショーツの上から尻の割れ目へと移動して、肝心の部分に滑らせていく……。
今それを拒否すればあいつに疑念を持たせることになる………黙ってされるがままになるしかない。
その手が規格外に大きいクリトリスに気付かないわけがない。
すぅ~っと美樹の尻からショーツが下げられていく。
触れるはずのない部分の肌が空気に晒され、膝から足首へと抜き取られていくショーツの感触を嫌でも意識する。
仰向けになったらしい男の頭が膝の間に潜り込み、腰を掴まれて下に引き寄せられる………。
ヌメヌメとした感触が女の裂け目を掻き分けながら何度か往復すると、ペニスを含む美樹の口から鼻に抜ける声が漏れる………。
例えようのない快楽の波が押し寄せる。
嬉々としてむしゃぶりつく男の舌が、躍動する動きに合わせて腰がうねる。
美樹は思わず口からペニスを離し、手に握る葛西の男根をしごいて呼吸を整える。
執拗に攻められて震える手………。
悶絶して俯く頭を起こし、ペニスを口に含む。
身を起こした美樹が葛西を引き寄せ、男の顔に腰を降ろしてペニスを攻める。
攻めて攻められる地獄絵図の中、耐え続ける美樹は体をよじり、時おりペニスを口から離して喘ぎながら果敢にフェラチオを続けていく。
キュ〜っと吸い付かれ、暴れる舌に我慢も限界に達していく………。
あっ……っと思ったときには体が勝手に痙攣を見せ、葛西に抱きついていた………。
その最中にも舌を動かす下の男が鬱陶しい。
その男に襲われる前に葛西を座らせる。
まだ理性の残る彼は跨る美樹に……嘘だろ?……そんな驚愕を見せる。
だが彼の目がカウンターの中のクズ社長の姿を捉え、その卑しい顔を見ると美樹の体を張った頑張りを無下にはできなかった。
ペニスを手で起こして自らにあてがい、決意の眼差しを向ける美樹の中に消えゆくのを見送るしかないのだった。
蚊帳の外に置かれた舐め犬の男はタバコを咥え、その様子を興味深げに眺めている。
美樹 ごめんね……許してね……
葛西 僕こそ……僕なんかで…すいません……
復讐に燃える美しい女と、こんなことに巻き込んでしまった聡明な男………。
のぞまな
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