上層部より厳しい箝口令がひかれているため詳しい事情を知るものはいない。ただ男性職員にとっては最高のひと時を迎えるらしい。
歓迎のあいさつを受けても裕子は軽く会釈するだけでクールに対応した。
就任して以来デスクワークで一日中過ごす裕子だったがある日一つの資料に目を通り終えるとその日から外出する機会が増えた。
祐子はある男に目を付け観察を続けた。何年も前に火遊びの積もりで始めた特殊勤務。キャリアとしての出世を逃し下手をすればスキャンダルとして
マスコミにも取り上げられる可能性もあった。
今度の勤務地は本庁でもお手上げの勤務地らしい。
刑事課長としてデスクワークに徹するはずが外回りまでしだしたので部下の刑事たちは怪しんだ。内部操作ではないかと。
祐子もそんな部下たちの疑いの目を確実に感じていた。確かに少し調べ上げれば幾らでも暴力団との癒着等の証拠は上げられそうだ。
今ならそれを手土産に出世コースへ戻ることも可能だ。
チンピラの宮本タケシは30歳になるが今だに下っ端としてこき使われていた。何度も軽犯罪で警察の世話になっている男だ。
本人はいつか認められて兄貴と呼ばれる立場に長い間憧れていた。
そんなタケシに運が廻って来た。
ここ数日後ろからの視線を感じていた。それは下手な尾行だった。タケシは尾行をしていたのが飛び切りの美人であることに気付いた。
年は40歳ぐらいになるがスタイルもいいがそれようりもその知的な顔立ちはタケシが今まで出会ったことのないタイプだった。
タケシは下手な尾行を煙にまき逆にその女を尾行した。
そしてその女が新しく着任してきた刑事課長であることを知った。
(ふん、、俺も刑事課長に追いかけられる大物になったか、、それにしても下手な尾行だぜ。それにしてもいい女だ)
祐子はタケシの尾行には当然気付いていた。相手が罠に掛かって来たのだ。タケシは今まで何度もマンションの玄関などで郵便物を盗む犯罪が得意だった。
自分の郵便物が物色された形跡を発見した裕子はそこに入れてあった部屋の合鍵が元の位置とは違う場所にあることに気付いた。
タケシの手口だ。それであらたに合鍵を作り独身女性の部屋に忍び込む。
転勤の多い裕子は上等のマンションに住んだことが無かった。今回もワンルームマンションに毛が生えた程度の物件だ。
東京に大事なものは置いているため特別盗まれても困る様なものは無い。
タケシは一度忍び込み裕子の下着等を物色したが特に洗濯前の下着を発見した時の喜びは相当なものでもあったし、実際にいたずらもした。
その日一人でなく仲間を呼び手を合わせて裕子を襲えば確実に成功したであろうがタケシは手柄を独り占めにしたかった。
そして出世したいという欲望に負けていた。
祐子はこの男の資料に目を通した。彼を選んだ大木な理由はこの男の変態趣味であった。没収した携帯には素っ裸の若い綺麗な女性がそれこそ
言語に絶する程の辱めを受けている画像が何枚も保存されていた。
いづれは自分のそんな画像も永遠に証拠として残され署員たちの好奇な目に晒され続けるのだ。
今日明日にも襲って来る筈だ。裕子は朝から大便を控えた。どうせならうんと恥を掻きたい。
エリート街道を走っていた自分が部下や暴力団のチンピラにまでそんな姿を晒して嘲笑されたい。
今までの手口では入浴中を狙って来るのは間違いないだろう。
風呂場の灯りが付くのをタケシは確認しただろう。でもタケシは自分の汚れた下着や入浴前の汚れた体の匂いも嗅ぎたいだろう。
ベッドの上に商売道具の本物の手錠を放り出した。そしてゆっくりスーツを脱ぎ出した。
汚れたパンティ一枚で入口のドアに背を向けて侵入者を待った。
入浴中だとてっきり思っていたが合鍵でドアを開けると今まさにパンティ一枚の裕子の後ろ姿が視界に入り息を飲んだ。
(あぶない、あぶない。もう少しで気付かれるところだったぜ。)
静かに小道具の入ったカバンをそこに置き静に見守った。
祐子はとっくに気付いていたが知らない振りをしてパンティを降ろした。
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