時に性欲は理に勝る。
それはたとえ、女であっても………。
頑固な理性ならば、無視させればいい。
勇気が出ないなら、背中を押してあげればいい。
そっと……………。
外見は清潔感があって、爽やか。
聡明で嫌味のない気高さを備え、判断力と頼りがいがあるそんな男性が現れたら………。
後でどうかしていた、魔が差したと自分に言い訳しても、もう遅い。
危険な蜜の味を知ってしまえば立場のある人妻、確かな時間を歩んできたはずの熟女でも時に道を踏み外す………。
木島みどりはスーパーで買い物を終えて、駐車場に止めた自分の車に乗り込んだ。
何か違和感を感じたが、それが何であるかが分からないまま車を発進させた。
………が、直ぐにその違和感正体に気づいた
タイヤがパンクしていたのだ。
みどりは車の外に出て潰れたタイヤを見た瞬間に、溜息が出た。
スペアタイヤへの交換作業は、確か教習所で習った記憶が微かにある。
それも随分と昔のことだ、何をどうしたらいいかなんて具体的に思い出せない。
途方に暮れていると、ひとりの青年が現れた。
青年 …………どうかされました?
みどりは理由を話し、ぺしゃんこのタイヤを見詰めた。
彼はみどりに断ってからトランクルームを覗き、車載工具とスペアタイヤを取り出すと、いとも簡単にタイヤ交換を終えてしまった。
お礼がしたくて名前と住所を聞こうとしたが、このご時世……代わりの連絡手段を聞こうと思ったのに、彼は爽やかな笑顔を残して去って行った。
今時あんな素敵な男性がいるなんて……。
この時のみどりは心洗われる清々しい気持ちがして、久しぶりに感動を覚えていた。
時は流れ季節は秋、山登りが趣味のみどりはとある山に入っていた。
山登りといってもトレッキング程度の、誰でも登れる山だけど………。
山の天気は変わりやすい。
標高は低くても低地に比べたら、気温は低い。
ましてや雨に降られたら尚更である。
初めて行く山だから入念にリサーチしたはずなのに、道に迷ってしまった。
遭難の二文字が頭に浮かぶ。
雨に濡れても大丈夫なようにそれなりの装備をしてきたが、その状態で長時間を過ごせば体力が削られる。
とうとうその場でみどりは動けなくなり、泣きそうだった。
ここで私は………そんなことが、頭に浮かぶ。
そんなとき、ザッ…ザッ…ッと、足音が聞こえてくる。
首元から入った雨水で防寒具も台無しで意味を成さず、低体温気味のみどりは眠気に襲われていて、空耳だと思いながら眠りにつこうとしていた。
意識が朦朧とする中で、身体が抱き起こされたような気がした。
気がつくとテントの中に寝かされ、猛烈な寒さでブルブルと震えていたのだ。
まだ生きていると実感はしたが、身ぐるみを剥がされ始められる暴挙に覚悟を決めなければならなかった。
気がつけば身体は寝袋の中にあり、男性に抱かれ温もりに包まれていたのだ。
冬山で遭難したら低体温症は免れない。
体温を保つには最悪の場合、人間の体温で暖めるしかないと何かの本で目にしたことがある。
まさか自分が、そうなろうとは………。
そっと自分の身体を確かめたら、下着すら身に着けていない。
濡れた物はすべて剥ぎ取られ、男性自身も素っ裸なのだ。
不思議と羞恥心はほとんどなく、安堵感に包まれていつしかみどりは眠りについていた。
どのくらい時間が過ぎただろう。
身じろぎした際に、話しかけられた。
男 やぁ、目が冷めましたか?
みどり あ………はい…
男 こんな所でまたお会いするとは、びっくりしましたよ…
みどり えっ?
男 ほらこの前、スーパーの駐車場でパンク……
みどり あっ!…えっ?
男 そう、あれ僕です……びっくりでしょう?
みどり あ…あの……お財布を届けてくれて、ずっとお礼を言いたかったんです…
男 お財布って……つい最近も届けたけど、あれは貴女のだったの?…中は見てないからさすがに分からなかった……
みどり 中身はちゃんと全部ありました…
男 それは良かった…
みどり あの………なんていうか……
素っ裸が抱き合っている、この状態をどうすべきか………。
男 あぁ、これね……二人共ずぶ濡れで貴女は低体温症に陥っていたし、他に方法がなかったんだ…
みどり …………それは…分かってます……この後はどうしましょう?
男 取り敢えず濡れた物を乾かさないことには、どうにもならないよね……貴女はどうしたい?
みどり どう………って……
身体が急に熱くなってきた。
彼の温もり、逞しい身体……何よりお腹の辺りにあるペニスが勃起をしてきているではないか。
こんな時にという想いと、危機的状況を乗り越えた相手を本能的に求める想いが交錯する。
こちらの背中にある彼の手が、下へと下がっていく。
臀部から陰部へと移動する彼の手を、みどりは拒めなかった。
重ねられる唇、絡められる舌……身体が熱い。
気がついたらみどりは自然に彼のペニスを手にして、大きさ、硬さを確かめるかのように動かすのを禁じ得なかった。
狭苦しい寝袋の中で快楽をそそられ、これまでにない愛欲に包まれて彼と繋がった。
日常を忘れて全てを受け入れ、その快感に心から酔い痴れて、夫の顔すら思い出さなかった。
射精を受け入れてはオーガズムを迎え、さらなるオーガズムを求めて愛し合う……。
壮絶な快感だった。
あのアブノーマルなセックス体験は、みどりを変えてしまった。
彼と逢瀬を重ねては神社の裏で、植物公園の中で、雑居ビルの外階段で、ビルの谷間で、住宅街にある古いアパートの陰で、電車、バスの中で……あらゆる人の気配のある場所で交わった。
見られるかもしれない、そんなヒリヒリする中でのセックスを求めるようになったのだ。
夫には申し訳ないと思う。
なのに夫と交わった次の日には、彼の射精を受け入れないと気が済まなくなったのだ。
あの逞しく硬くて、大きいあのペニスしか考えられない。
バレてしまえば修羅場が待っている。
あのおしどり夫婦がなぜあんなことにと、近所では噂になるだろう。
射精しても射精しても、直ぐに復活する彼のあの逞しいペニス。
あの味を知ってしまったら………。
みどりは最近、職場の自室に中に人1人が入れる特注の無駄に大きい椅子を持ち込んだ。
派遣型家政婦の社長をするみどりはその椅子に座り、パソコンを操作する。
その椅子の座面は一部には、隙間が空いている。
週に1日は座るみどりの腰が前後に動く。
社員がドアをノックすればその動きは止まり、退室すると激しく動く。
次の瞬間、膣の奥深くに温もりが放出される感覚にペニスを締め上げた。
そして、また………。
みどりは始めから男の策略だったことは、気づかないのだった………。
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