足に馴染んだ通勤用のスニーカーで、アスファルトを蹴る。
パンツにすればよかったなどと、今更に後悔しながら急ぎバス停に向かって走る。
歩幅が制限されるタイトスカートスーツを身に着けた身体を、懸命に前に前にと走らせる。
曲がり角を過ぎれば大通りに出る、バス停は直ぐそこだ。
だが無情にも数十メートル先にバスが到着する。
大通りに出たときにはもう、ウインカーを点滅させたバスが発車するところだった。
やだぁ〜もうっ、なんてこと………。
雨宮陽子は走り去るバスを、忸怩たる気持ちで見送っていた。
今夜は単身赴任先から夫が一時帰宅する。
腕によりをかけて夫の好きな料理を振る舞いたくて、昨夜はその仕込みをしていて寝るのが遅くなってしまった。
子供なんてつまらないもので、大学生になった娘はさっさと親元を離れてひとり暮らしを満喫している。
もうやんなっちゃう、歳なのかしら………。
上がった息がなかなか収まらず、運動不足を痛感せざるを得ない。
腕時計を見て次のバス到着時刻を確認する。
………あと15分、ぎりぎり遅刻を免れるかどうかである。
そんな時にバスのエンジン音が迫るのを耳にして、振り返るとまさかのバスがもうやって来た。
ダイヤの乱れか事故か何かがあったのか、何れにしても助かった。
意気揚々と陽子はバスに乗車し、その混み具合に戸惑った。
やはりいつもの時間に乗車出来なかった乗客らしく、寿司詰め状態だった。
陽子は吊り革にすら辿り着けず、乗降口付近の柱に掴まった。
これが30分ほど続くかと思うと、うんざりだった。
不意に腰の横に違和感を覚えた。
バッグか何かかと思ったが、下に移動するではないか。
もう40も半ばになろうというのに、痴漢に遭うなんて………。
その手を陽子払った。
なのに、しつこく触ってくる。
テレビで痴漢の被害を特集する番組を、観たことがあった。
自分なら毅然と声を上げて、撃退するのにと思ったものだ。
いざ自分がその立場になると、声を上げるなんて出来ない。
ましてやこんな中年の自分が置換騒ぎを起こすなんて、周囲の視線が怖かった。
痴漢の手がスカートの裾を手繰り寄せようと、生地を摘んで上に引っ張ろうとする。
それを阻止すると、腰のファスナーを下げられた。
一つひとつを陽子は遮り、人知れず攻防が続く。
それに疲弊するころには相手も疲れたようで、尻に手を置いて感触を楽しんでいるような感じに落ち着いた。
その気持ち悪さといったらない。
警戒を解いたつもりはなかったが、いきなりだった。スカートのホックが解かれ、ずり落ちそうになって慌ててウエスト部分を掴む。
一気に下げられたファスナーから手が突っ込まれる。
あまりの出来事に、ショックを受けた。
臀部を弄られる気持ち悪さに身を固くし、どうにもしようがない無力感が辛かった。
とにかくスカートを落とさないようにしなければならない。
その手が下がり、指が下の方へと移動する。
前後に擦るような、揉みほぐすような動作。
どうしてこんな私なの?………。
答えのない叫びは、誰にも届かない。
不意に固い物が触れる違和感を感じた。
何がなんだか分からない、パンストが破られてしまって気づいたときには下着越しに触れられていた。
後から膝を入れられて、脚が閉じられない。
手首まで股の下に入ってきて、指が触れてほしくない場所を弄る。
そこを引っ掻くようにされたり、円を描くようにして執拗な刺激を与えてくる。
嫌悪感、違和感、羞恥心、理性、官能、葛藤………
様々な感覚が交錯していく。
人生は幸せな事ばかりではない。
不幸は足音も立てずに忍び寄る。
人生は喜びの後には必ず悲しみが訪れる。
悲しみの後は、また喜びが……それの繰り返し…。
ショーツの上から揉みほぐされて、包皮からすっかり頭を見せたクリトリス。
男は指の腹に湿り気を感じ、クロッチを繰り返し往復させていた。
陽子は背徳感に耳を赤く染めて、脚を閉じられないもどかしさを感じでいた。
忘れていた感覚を呼び起こされて、急な不安になる。
周りの人の目が気になって、仕方がない。
やめて……それ以上は触らないで……
めくるめく快感が這い上がってくる。
不意にショーツの底を寄せられた。
露骨な指の感触に動揺し、クリトリスをこねくり回される甘〜い快感に腰が落ちそうになった。
やめて……………やめて……
指先を小刻みに震わせて、強烈な快感を送り込まれる。
柱を掴む手に力が入り、膝がワナワナと笑う。
膝が折れて座り込みそうになったところを後から抱き止められ、前に回された手が躍動する。
引き千切るようにされたパンストの電線が広がり、ショーツを横に寄せられて………。
後に体重を預けた陽子、オーガズムに達しないように巧みに抑制した指先が、クリトリスをこねくり回す。
ふぅっ……ふぅ〜っ…………んっ……………はぁ~……
身を預けた陽子が、酔い痴れた吐息を漏らす。
右手で下を弄り、左手はブラウスのボタンを外していく。
ブラジャーを押し上げ、ボリューム感のある柔らかな丘を手の平に包んだ。
ブラジャーをずらされたことに気づき、頭を起こした陽子。
どうにか戻そうとして男の手に自分の手を重ねるが、そこから先に行動が移らない。
達しそうなのに手前で留められる、そんな状況では色欲が勝る。
指を挿入する。
難なく飲み込まれた2本の指で掻き回しながら、乳首を優しく摘む。
男は自分のズボンのファスナーを、ゆっくりと下ろした。
こんなこと、夢であって欲しい。
夢なら覚めないで欲しい。
今日は1ヶ月ぶりに夫が帰ってくる。
それなのに、こんなこと……。
気持ちいい……。
凄く、いい……。
あぁ………堪らない。
えっ、なに?………えっ…?えっなに?…
スカートを押し上げられて下半身が露出する。
そのスカートを下げようとする陽子を引き寄せ、ショーツを掴んで横にずらす。
腰を掴んで狙いを定め、ペニスに力を込めた。
沈みゆくペニスを何度か引いて、奥まで入れた。
口を手で抑える陽子を後から貫く。
優しく包み込む温もりの中をショートストローク
で動かす。
片手は腰を掴み、もう片方は胸を鷲掴む。
下半身がぶつかるたびにひしゃげて卑猥に波打つ白い臀部、中の感触と相まって支配欲が満たされていく。
その陽子をこちらに向かせる。
自分を犯していた男を初めてその目にしたが、まるで知らない男だと知った。
即座に周囲を見た陽子は、不思議な違和感を感じた。
直ぐ近くでこんな事になっているのに、不自然なくらいどの人も我関せずといった雰囲気が漂っている。
片脚を持ち上げられ、ペニスが入ってきた。
こんな恥ずかしい体位は初めてだった。
後に倒れないように相手にしがみつき、立ったままだなんて………。
巧みに突き上げてくるたびに、力が抜けそうになる。
バランスを取ろうとする片脚の存在が、集中を削がれるもどかしさ。
それなのに奥に密着するようにして突かれるうちに、これまでに経験のない快感が襲ってきた。
夫では決して届かないところを突かれ続け、堪らない快感に我を忘れるくらい感じさせられていく………。
男のペニスを締め上げる自覚は皆無。
何も考えられなくなり、バスの走行音も感じなくなって………無音になった。
蛹から羽化をするセミのように背中をを反らせ、オーガズムに支配されていく………。
その陽子の中に、男は思い切り射精をした。
絞り出すたびに子宮を突き上げ、陽子の膣はそのたびにヒクヒクとさせながら締め付ける。
ペニスを抜くと漏れ出た精液が下にボタボタと流れ落ち、残りは内腿を伝い落ちてくる。
まだオーガズムから抜け切らず、中に出されてしまったショックで陽子はその場にへたり込んでしまった。
それでも男は容赦なく立ち上がらせ、再び後から貫いた。
オーガズムから間もない陽子の身体は敏感に反応し、気高そうなキャリアウーマンはもういない。
10分と経たず、再びオーガズムを迎えた陽子はその場に崩れ落ちてしまった。
その陽子を立たせ、最後部座席に連れて行く。
なぜか誰も座る者は居らず、そこに仰向けに寝かされて正常位の形で入ってきた。
許容を越えた快感は陽子を狂わせ、官能に溺れていく………。
揺れる身体、吐息、恍惚、快感………
貪るように快感を消化をし、次の快感を享受していく…。
何気ないいつもの朝、いつもの日。
朝日を浴びて、1台のバスが街中を走っていた………。
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