今年も学会主催の論文発表のシーズンがやって来た。
順子はこういったことは苦手で、憂鬱で仕方がない。
だが毎年欠かさず出席することに……いや、出席せざるを得ないのだった。
この世には需要と供給というものがあり、そこには必ず人間の欲が関わってくる。
医学の発展に欠かせないことの1つに、医療機器という必要不可欠なものがある。
そこには各メーカーの熾烈な競争があり、必ず産業スパイが暗躍している。
医学会は表の顔と、世間には知られていない裏の顔が存在している。
それは今も昔も変わることはなく、伏魔殿といっても過言ではない。
医療事故が起これば原因をなるべく隠す、そんな隠蔽体質はこれまでにも晒されてきた。
己を守ろうとする動きは、時に自浄作用を発揮することもある事はあるのだが…………その1つが順子が君臨する産婦人科医院である。
彼女たちの悪行は組織の知ることとなり、順子は危機に瀕した。
だが順子は人を丸め込む才能に長けており、組織の抱える問題を逆手に取ったのだ。
産業スパイ………彼らは時に不利益をもたらしてくれる、目障りな存在である。
素早くて賢く動き回り、甘い汁を啜る害虫。
それを人知れず退治して引き渡することを条件に、穏便に事を収めたのだ。
彼らも順子の働きを評価していながら、諸刃の剣との認識を持っているのは事実。
危なくなれば容赦なく切り捨てるだろう。
だがそこは順子、性の魅力で人を魅了する彼女はミスをしない。
組織は彼女を利用できるうちは利用しようとの考えで、今に至っているのだ。
順子は今年、次女の明子と欲求不満気味の下僕の1人を会場に解き放った。
明子は男をたらしこむ才能は姉妹の中でずば抜けており、まるで女郎蜘蛛のように罠をはる。
そしてその美貌と強い性欲で、男を骨抜きにしてしまう。
一方でこの下僕の彼は、甘いマスクで女の警戒を解いて毒牙にかける才能がある。
罠にかかった相手は気付いたときにはもう遅く、その性技に翻弄されて身動きができなくなる。
彼はセックスのスペシャリストだった。
あらかじめスパイの素性を頭に叩き込み、2人は会場に即座に溶け込む。
彼らは男女の2人、それぞれをさり気なく探した。
すると談笑する人の中にその1人を見つけ、明子はひとり口元だけで笑みを作る……犬の笑いだった。
一方で下僕もそこかしこで談笑をする人の塊を、一つひとつ目で追っていく。
その中でやや大きい人の塊に注目した。
そこには美女に群がる下心見え見えの、名だたる教授や医師たちの顔ぶれがあるではないか。
その美女こそが、今回のターゲットだった。
下僕は眼鏡の奥の瞳を光らせ、嗅ぎつけた獲物を前に口元だけで笑う。
彼もまた、冷徹な犬の笑いだった。
明子はさり気なく人の輪に加わり、ターゲットを含めその場にいる者たちに名刺を渡しながら話に耳を傾ける。
女医:明子 興味深いですわ、そのお話……
男のスパイ ご理解いただけて恐縮です……
美男美女の語らいに白けた者たちはそれぞれに散らばり、2人は化かし合いを繰り広げていく。
このバカ女は使えそうだ……男は内心で笑う。
明子は早くも毒牙を用意していた。
濃紺のスカートスーツ…タイトスカートはロングタイプのもので太腿まで深いスリット入り。
惜しげもなくスラリと伸びた脚を、これ見よがしにわざと見せつける。
男は思った。
いい女だが、自分の魅力で男を渡り歩くタイプか。
いいだろう、味見をしてみようじゃないか………。
チラリと見えるセパレートストッキングの切れ目から覗く、白い肌に欲情を覚えていた。
下僕の彼は、彼女を囲むようにする人の塊に近づいた。
控えめに彼らの後からターゲットの話に耳を傾ける、そんなふりをしていた。
彼らの目を一人ひとり見ながら取り込んでいく、美女ならではの手法に笑いを噛み殺す。
女が一瞬だけ、下僕に目に止めた。
その僅かな時間で値踏みをしているのが分かる。
利益と別の何かを、天秤にでもかけているのだろうか。
不意に話をこちらに振ってきた。
女スパイ いかがでしょうか?……
下僕 実に興味深い話ですね………
己の魅力を最大限に生かし、努めて爽やかに微笑みを見せる。
清潔感のある見た目、甘いマスク、誠実な受け答え……。
寝たくもない男たちと肌を重ね、利益をかすめ取ってきた彼女は思った。
久しぶりにいい男、自分へのご褒美よね。
ちょっと心が痛むけど、こんなにいい女を抱けるだけでもありがたく思うのね………。
あわよくばと邪な気持ちを抱いていた男たちは、風向きが変わったことを読み取ると離れていった。
女スパイ あちらで話をしませんか?…
会場の隅に下僕を誘い、自分の魅力で悩殺する気で満々だった。
味見をした後はそれをネタに、操り人形になって業界に食い込む道を作るのだ。
その前に、この彼をいただくわ………。
子宮が疼いて仕方がなかった。
快楽を武器とするのは彼らの常套手段だが、それを常に操る順子たちを知らない獲物たちに…………カウントダウンが始まる。
そろそろ論文発表が始まる。
会場にいる人々が、各々の席に移動していく。
聞くだけの人間は会場の真ん中から後のほうへと移動し、明子たちは一番後の人から離れた場所に陣取った。
会場が暗くなり、背後のスクリーンを指差しながら論文の発表が始まった。
明子は隣りに座ったスパイの彼に、囁いた。
女医:明子 ねぇ……あなた、疲れてるんじゃない?……ほぐしてあげましょうか?………
そう言うと静かに机の下に潜り込み、彼のズボンのファスナーに手をかけた。
自分と同じ欲情の匂いを明子に感じていた彼は、黙ってさせるがままにしている。
温もりに包まれる感覚に目を閉じて、静かに吐息を漏らす。
柔らかな唇が前後して、舌が鬼頭をしきりに舐め上げる。
ピッタリと密着した粘膜が前後に動いて鬼頭から陰茎までを包み込み、後退すると鬼頭の凹凸に合わせて唇が膨らむ。
これまで経験してきた中でも、確実に上位に入るテクニックに男は酔いしれた。
派手なフェラチオは見た目だけで、内容は稚拙。
一見地味に見えても男を喜ばせるテクニックを持つ、そんな女は実は思ったよりも少ない。
この女、期待できる………男はそう確信していた。
論文を発表する声に静まり返った薄暗い会場に、男がひとり密かに悶絶する。
確実に射精に導こうとするように、ペースが上がった。
女と繋がる前に射精するのは本位ではないが、この女の意思を尊重して身を任せることにする。
何だかんだいっても我慢できる自信があったが、今やその自信は揺らいでいる。
この俺が、情けない……この女に負けるのか?…
高まる快感に最大限の抵抗をみせ、肛門に力を込め押し留める。
堤防が圧力に必死に耐えようと、軋んで悲鳴を上げた。
鬼頭を包む唇が、激しく前後する。
何度も何度も何度も………。
荒くれる濁流が堤防を乗り越えるのを感じた。
歯を食いしばる彼が勢いよく大量の精液を飛ばし、明子の喉を直撃した。
咳き込みそうにるのを必死に堪え、明子は涙目になってすべてを飲み込んだ。
残る精液を絞って綺麗に舐め取り、何事もなかったかのように明子は姿を表した。
バッグから取り出したペットボトルのミネラルウォーターで口を濯いで、飲み込む。
ミントのタブレットを口に放り込み、微笑んで見せる明子。
女医:明子 美味しかったわ……
今度は彼が机の下に潜り込む。
深いスリットが入っているとはいえタイトスカート、それもふくらはぎまであるロングタイプ。
せっかくのご馳走を前に、忸怩たる想いにやきもきする。
明子は行動に移す。
スリットが始まる部分は特注でファスナーが備え付けてあった。
それを静かに開けていく。
スカートの裂けた部分を下に回し、幅広い1枚の生地と化したスカートを男の頭に被せてやった。
椅子に浅く座り直し、わざと男に膝を開かせる。
ショーツを脇に寄せられて、次に男の柔らかい唇の温もりを感じた。
身体がピクリと反応をし、割れ目の中を舌が這う感触にそっと目を閉じる。
何度か舌先が上下してから、クリトリスに辿り着く。
舌先が繊細な動きを見せ、身体に力が入る。
痛くない程度に吸われ、舌先が暴れる。
巧みな性技に身体が熱くなる。
腰をうねらせ、彼に喜びが伝わる。
尚も続くクンニリングスは、とてつもない快感を明子にもたらした。
両手で口を覆い隠し、声を殺す。
暴力的な快感に襲われ続け、いよいよ堪らなくなってきた。
息が出来ない…………。
明子が身体を震わせ、腰をブルッ!ブルッ!っと激しく弾ませた。
明子と同じように分泌液を綺麗に舐め取り、男は下から這い出てきた。
男のスパイ 最高でしたよ………。
後にちょっと移動しませんか?…
男が振り向く視線の先は、薄暗い会場の中で光がほぼ届かない会場の隅だった。
女スパイは下僕を伴い、やはり会場の一番後に陣取った。
かなり離れた位置に見知った男の同業者が、女の隣りに座っているのが見える。
同じ考えなのが分かって気分が悪かったが、捕まえたこの男性を味見するのは今しかない。
暗くなるのを待って、彼の膝に手を置いた。
動揺を見せる彼だったが、その気にさせればこちらのもの。
それらしい仕事の話をしながら、手を動かした。
その手が股間に達したとき、勃起をしているのが分かってほくそ笑む。
さらに動揺を見せる彼を無視して、ファスナーを開けた。
そっと取り出したペニスを握ってしばらく上下に擦り、身を倒して口に入れてしまった。
エラの張った鬼頭が期待を膨らませる。
口の中で硬さを増して、完全な勃起を果たした。
うっとりしそうなほどのペニスから、分泌液が出てきて唇が滑らかになる。
鬼頭から陰茎に舌を這わせ、また先端に戻る。
そして伝家の宝刀、男殺しのフェラチオが牙を剥く。
頬を凹ませて鬼頭を唇がピストンしていく。
何回も何回も何回も…………。
大抵の男性ならここで、力尽きたように射精する。
だが彼は、いつまでも耐えた。
恍惚に浸りながら………。
さすがに疲れてきた。
そんなとき彼に制されてかなりの不満を覚え、かなりプライドが傷ついた。
下僕 ありがとう………疲れたでしょう?…
そう労いの言葉をくれて、唇を重ねてきた。
これには不覚にも女心をくすぐられ、自分が急に恥ずかしくなってしまった。
こんな形でこういった男性に、会いたくはなかった。
見た目だけではなく中身も誠実で、理想の男性だったのだ。
その彼が、スカートの中にそっと手を入れてきた。
やめて、あたしは汚いの……汚れているのよ?……
下着の中に入る手を制しようとしたが、遅かった。
顔を左右に振って制止を示したつもりだが、次の瞬間に痺れるような快感に襲われていた。
こんなにソフトで丁寧な指使いを味わう体験は、そうそうない。
彼の手首を必死に掴み、声を殺すのに全力を尽くす。
静かに身を沈めたかと思ったら、膝をキスされて力が吸い取られるように抜けてしまった。
腰を引き寄せられ、閉じた膝を割られて…………。
心の底から羞恥する気持ちに焼かれ、快感に身を震わせる……。
心は逃げたい気持ちと求める気持ちに別れ、後者が引きずり出された。
1ミリづつ積み重ねるような丁寧さで、無理なく少しづつ快感が高められていく。
ただでさえ敏感なところなのに、拒絶する気持ちが微塵も起こらない巧みなクンニリングス。
我慢出来なかった。
グラスの水が溢れるように、その時が訪れる。
気がつけば最高のオーガズムに包まれて、その身を震わせていた。
お世辞抜きで、最高の快感だったのだ。
彼の手を引いて、後の隅のほうへ誘う。
もう、我慢できそうにないから………。
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