町外れにこんなカフェがあるなんて、知らなかった。
休みのたびに電車に乗って、ふらりと知らない場所に行くのが趣味だった。
とはいうものの乗車して1時間圏内の狭いエリアだが、夕方までに帰宅するにはそれが限度だから仕方がない。
なにかの折に車で通過しているから全く知らない場所ではないが、用がなければ立ち入らないから知っているようで、実はよくは知らないのだ。
実際にこうして歩いて散策しなければ、このお店には気づかなかっただろう。
山に囲まれて水田が広がる田舎町だが、周辺にはそれなりの民家が点在している。
古民家を改装した感じだが半分ほどログハウスの様相なのは増築したか、痛みが激しくてアレンジした結果なのかもしれない。
今日でこのカフェを訪れたのは、何回目になるのだろう。
店主にはさすがに覚えられた感があるが、必要以上に話しかけなてこない気遣いが有り難い。
この空間と外の景色を楽しむには、1人の時間は至福なのだから。
矢代恵子はコーヒーを口に運び、外の景色に目をやった。
年齢のわりにはスカートは短く、脚を見せる服装をしていた。
それが下品に見えないのは短すぎず、清潔感のある清楚さを象徴する恵子の人間性だった。
涼しげで落ち着いた見た目、所作がそんな雰囲気を醸し出すのかもしれない。
恵子がここを訪れる理由は、もう一つある。
それは…………。
先程から斜め後のテーブルに着く、観光客らしき中年男性にチラチラと見られているのに気づいていた。
恵子は窓に面したカウンターテーブルにいて、脚の高さのあるスツールに座っている。
そう、艶めかしい太腿を露わにして。
膝上7〜8センチ程度のスカートだが、微妙なところまで短くなる。
恵子はわざと脚を組み直したりしながら、悩殺していた。
不意にスツールを回転させ、男のほうを向く。
男が慌てて目を伏せるのが分かる。
男が目を上げるタイミングを作るため、そのまま身体を捻ってコーヒーカップの横にある携帯をとった。
画面を操作するふりをして、視界の端の男を観察する。
するとコーヒーカップから顔を上げて、こちらを見ているようだ。
スツールから立ち上がりそうでそうしない、携帯に夢中なふりを装いながら組んでいた脚を解く。
もう立ち上がるの………そう予感させるように、膝の間隔を無防備にさせていく。
見えそうで見えない、男をやきもきさせるのだ。
効果は素晴らしく、男の顔は固定されたように真っ直ぐこちらを見ている。
不意にバッグに手を伸ばし、それを掴んだ拍子に思い切って膝を開く。
数秒ほどだが丸見えだったはず………。
恵子はバッグを手に立ち上がり、トイレに向かった……男がいる席の横を通って。
ドアを閉めた……胸がドキドキする。
ショーツを下げて、便座に座った。
予想はついていたが、ショーツのクロッチ部分が濡れていた。
なぜこんな真似をするようになったのか、それには理由がある。
これといって大した理由ではないのだけれど……。
※元投稿はこちら >>