最後の荷物を積み込むと、扉を閉める。
腕まくりしていたTシャツの袖を戻し、大型トラックの運転席側に回り、ドアを開ける。
ステップに片足を乗せて、勢いよく身体を持ち上げた。
隣に並べて停めたトラック運転手の男が、形の良い作業ズボンに形取られたお尻を盗み見る。
今日も良いものを見たと、その光景を目に焼きつけた。
木田千春はトラックを発進させた。
勇ましい男たちに混ざり、大きなステアリングを握って2年が経った。
旦那に先立たれたときは、途方に暮れた。
いっそ跡を……と思ったが、小さな娘を残すことも道連れにすることもできなかった。
最初はスナックに勤め、子供のために宅配便の職に就いた。
お金を貯めて大型免許を取得、旦那の勤め先だった会社に就職したのだ。
紅一点、女は自分1人だったが、旦那の同僚たちがなにかと気にかけてくれて、どうにかここまできた。
他会社の男がいやらしい目で見てきて辟易することもある。
誠実な男性に交際を申し込まれ、気持ちがぐらついたこともあった。
まだぎりぎり20代だったこともあって、身体を一度だけ許してしまった。
久しぶりの快楽に身も心もとろけるようだったが、激しい後悔の念に駆られて2度目は拒否した。結果彼は離れて行き、独身を貫くことを決心したのだ。
仕事は辛いけど、慣れてしまえばやり甲斐はある。
ただ人には言えない悩みがあった。
定期的にカンジダが再発してしまうのだ。
不快で堪らなくて、いくかの病院を受診したのだ。
薬で完治はするものの、数ヶ月で再発するのだ。
それぞれの病院では疲労による免疫力の低下とか、ストレスを指摘された。
神経を使うし体力も使う。だが意外にも自分に合っていて疲労による免疫力低下は外してもいいと思う。残るはストレスだった。
千春はいくら考えてもストレスの原因が、分からなかった。
ヤンキー上がりのルックスに外見を変えてからは、露骨にいやらしい目を向ける男はかなり少なくなった。
では何か…………心当たりといえば、まさかということしかない。
千春は逞しい男よりも、やや細身の男性が好みだった。
旦那がまさにそのタイプだったのだ。
千春は子供が寝てから、極たまに引き出しからある物を取り出した。
男性器の形をした女性用の、玩具。
ネットで検索すると、沢山ある中から少し細くて手頃なものを購入したのだ。
大きめの物は、自信がなかったのだ。
一応の慰めにはなるが、生身の男性には程遠い。
生理が近づくとイライラしたり気持ちが沈んだりするタイプの千春は、性欲が高まる時期が重なることもあって、決まって旦那とセックスをしていたのだ。
その週間がなくなったことが原因なら、どうすればいいのか。
セックスフレンドを作るなんて、考えられない。
そんなとき何となく病院を検索していたら、気になる産婦人科医院が目に留まった。
女性特有の疾患から性の悩みまで、お気軽にご相談下さい……とあったのだ。
冗談かと思ったが、訪れる人は後を絶たないようだ。
女医だということもあって、足を向けることにした。
予約を取ろうとしたら、1ヶ月も先まで埋まっていた。やはり評判は良い病院らしい。
千春は俄然、早く行きたくなっていた。
何だかんだいっても緊張していたようで、40分も早く着いてしまった。
まるで小さめのホテルのロビーのようなところのベンチに座っていると、問診表とアンケート用紙を渡された。
問診表の記入を済ませると、アンケート用紙に目を通していく。
信じられないほど恥ずかしい内容の質問が、ずらりと並んでいてびっくりした。
さすが性の悩みまで手厚くフォローする、そんな病院だけのことはある。
むしろそっち方面で訪れる、そういう人のほうが多いのかもしれないと、千春は思った。
そんな千春も半分、そういう類だった。
嘘で誤魔化しても専門家には見抜かれる。
どうせ恥ずかしいのだ、嘘がバレていたたまれなくなるくらいならと、正直に記入しておいた。
時間はいつの間にか過ぎて、名前が呼ばれたので千春は立上がった。
順子 木田千春さん、33歳……もう少しお若く見えますね、羨ましいわ…
実年齢よりも若く見えると言われて嫌な気はしないが同姓に言われても……それにこの女医はかなり綺麗な女性だと千春は思う。
順子 なるほど…うん、まずは検診をお受けになることをお勧めします……消去法で潰していくと見えてくるはずですよ……
女医のいう通りに千春は従った。
一般的な診断とそう変わらないが、より丁寧だと思った。
マンモグラフィは痛かったが、超音波検査は凄く恥ずかしかった。
全て女医が診てくれるわけではなくて、男性医師も当然いるのだ。
その男性医師を見て、きたことを千春は後悔した。
自分よりは歳上みたいだが、そう幾つも変わらなそうだ。
なによりも、かなりタイプの男性だったのだ。
男性医師 それではそちらで服と下着を取って、カゴに入れて下さい……用意ができたら声をかけていただけますか?
死にたいくらい恥ずかしくて、溜息をつきながらカットソーを脱いで、パステルピンクのブラジャーを取って服の下に入れてカゴに置いた。
千春 あの……用意ができました…
男性医師 はい……じゃあこちらの椅子に座っていただけますか?
渋々というように衝立の影から出た千春は、男性医師の前に腰を下ろした。
男性医師 ごめんなさい…お胸を診させて下さいね……
顔から火が吹き出しそうな思いで、胸を隠していた腕を下に下ろす。
作業着のTシャツからは意外と分からない、Dカップの乳房が現れていた。
着痩せするタイプの千春の乳房は釣り鐘タイプで乳輪は小さめなのに、存在感のある乳首をしている。
男性医師の人差し指と中指が、白い乳房に沈む。
滑るように肌を移動し、執拗に白い山を調べた。
沈み込む指は痛みを感じる前に浮いて、次の場所でまた沈み、渦を作るように小さく動く。
やがて全ての場所を潰すと、彼は言った。
その理由は興味深くて怖かったが、聞いたことも経験もない……乳首を触るなんて。
でもこんな人気のある病院の医師が嘘を言うわけもなく、産婦人科医院といえば専門家だ。
それでも猜疑心を捨てきれなくて触っている間、眼の前の男性医師の顔を凝視した。
ソフトな指さばきで弄られるうちに、羞恥心に耐えられなくなった。
とても真剣な眼差しで職務を遂行する彼の指に、性的な快感を覚えてもいた。
これが検査でなければ、愛撫意外の何物でもない。
乳首を軽く摘んでは離し、少し横にずらしては同じことをする。
乳首を離すときには滑らせるようにするなんて、感じるなというほうが無理なのだ。
変な色の分泌液がでないことを祈りながら、先端をこねくり回わされる刺激に両肩が動いてしまう。
もう片方が済む頃には、軽い疲労を覚えていた。
千春は乳首が弱いのだから。
その後の超音波検査は、凄く嫌だった。
冷たいジェルを塗られて、勃起した乳首の回りを調べられるときには偶然とも故意とも受け取れる、手のどこかが必ず乳首に触れていたのだ。
女医の前に戻ったときには、疲れていた。
順子 お疲れ様でした……少しお疲れでしょうか?
ハーブティーで休憩を挟みましょうね……
千春 いえ……大丈夫です……あの…検査を終えたくて……この後に予定があるんです…
順子 そういうことでしたら…それではあちらの診察台に乗ってお待ち下さい…直ぐに参りますから
順子はショーツを脱いで待つこと、自分が診察しするわけではないことを、わざと千春に言わなかった。
女医は備え付けの電話に手を伸ばし、ゆっくりと受話器を耳にあてた………。
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