「もうウソはいい、、、じゃあ、これはなんだ?」
ホテルを腕を組んで出るところ。
そして抱き合って口づけを交わす二人。
「そんな、、、」
思わず夫のスマホを取り上げようとする。
「触らないでくれるか?大切な証拠だ、、、」
証拠?
夫の顔を見る。
今まで見たことも無い冷えた視線、、、
「どうして、、、こんな写真、、、」
「探偵に頼んだ、、、これだけじゃない、浮気の証拠は他にもある、、、」
探偵、、、浮気の証拠、、、
まさか、、、
「わたしは浮気なんてしてない、、、だから、証拠なんてあるはずない、、、」
コウヘイは興信所の報告書をユキナに渡した。
「なに、、、これ、、、」
二人の密会が事細かに書かれていた。
逢った日付、密会していた時間も、、、
そして楽しそうにホテルを出入りするのはもちろんのこと、夜更け公園で互いの体をまさぐり合いながらキスを交わす写真も添付されていた。
ユキナの顔から血の気が引いた。
でも浮気を認めたら、全てが終わる、、、
それだけは絶対にイヤだ、、、
「こんなの浮気の証拠にならない、、、わたしは上司に相談ごとをしていただけ、、、」
「相談って、、、キスしてるじゃない!何言ってるの、、、酷いよ、、、」
遮るように娘が言う。
「無理矢理されただけ、、、ちゃんとこの後、もう二度としないでと言い渡したから、、、これは本当よ、、、」
「まだしらを切るんだな、、、じゃあスマホを見せてくれ、、、」
「断ります、、、スマホには何もありません、、、それに、そんなもの人に見せるものじゃないでしょう!」
「そうか?俺はお前やコユキに見られも構わないけど、、、やっぱりお前には見られたくないものがあるんだな?」
「違う、、、ただ人に見られたくないだけ、、、それだけ、、、」
マズいものがいっぱいある、、、
だから見せられない、、、絶対に、、、
「そうか、、、まあいい、、、もう少ししたら、お前の相手、写真の男が奥さんと家へ来る、、、話はそれからだ、、、」
「えっ、、、ウソ、、、だよね?」
「ウソじゃないさ、、、奥さんに電話して話をした、、、詳しく聞きたいそうだ、、、そいつが帰ったら二人で来るそうだ、、、」
最悪の展開になりつつある、、、
まずはとにかく口裏を合わせなければ、、、
「ちょっとトイレに行って来る、、、」
「構わないけど、スマホは置いていけよ、、、必要ないだろう?」
「いやよ、、、見る気でしょう?」
「見ないよ、俺はお前と違ってウソはつかない、、、それにどうせロックされてるんだろう?それとも誰かと口裏でも合わせるつもりか?」
「そんなことしない、、、分かった、、、」
そこまで言われたら置いていくしかない、、、
トイレでとにかく策を考える。
とにかく肉体関係は無いと押しきって、、、
キスは冗談を言っていたらイタズラでされてしまったことにして、、、
お互いに家庭や仕事のことを相談し合っているだけの仲だと納得させればいい、、、
あの人だって奥さんには絶対に白状しないはずだ、、、
何とかうまく今日さえ乗り切れば、、、
しばらくは関係を断つことにして、、、
ほとぼりが冷めればまた、、、
いいや、、、この際、完全に手を切った方がいいのかも、、、
でもそれも寂しい気がする、、、
すぐにそんなこと言ってる場合じゃない事に気付く。
とにかく今日をやり過ごせば何とかなる。
絶対に浮気を認めてはダメだ。
しかしその決意はすぐに覆されることにユキナはまだ気づいていない。
ユキナはリビングに戻ると腹を括り普段のように平然と振る舞った。
まるで自分は過ちなど犯していないと言わんばかりに、、、
「ねぇ、みんな、お腹減ってないの?何かとりましょうか?」
「随分とスッキリした顔してるな、、、さっきまでとえらい違いだ、、、」
「だって、、、わたし浮気してないもの、、、ずっとアナタ一筋だから、、、恥ずかしいけど、、、はっきり言うね、、、わたし、男はアナタしか知らないからね、、、他の人とシタことなんて一度も無い、、、」
娘の顔があからんでいた。
自分では気づいていないようだが、こんな事を娘の前で口にするような妻ではなかった。
平静を装ってもボロは出まくっている。
「本当にそうだったら良かったのにな、、、それにしても、そんなこと娘の前で言う事じゃないだろう?」
「あっ、、、そうだよね、、、ごめんなさい、、、、ねえ、本当に何かとろうよ、、、」
急に猫なで声になる。
コロコロと口調が変わる。
内心はかなりきているのだろう、、、
「俺はいい、、、食欲がない、、、」
「わたしも、、、」
「わたしはあるわよ、、、悪い事してないから、、、ピザでもとろうかな?」
今度は開き直ったつもりか、、、
無罪だったらただでは置かないってところか、、、
憐れなものだ、、、
有罪なのは自分が一番良く知っているはずなのに、、、
お前はスマホを誤魔化せたつもりかも知れないが、あの男はそうはいかないぞ、、、
なかなか相手はやって来ない。
かなりモメているのだろうか?
でも必ず来るはずだ。
電話で話しただけだが、それでも気の強さが伝わってきた。
かなりのものだと思う。
あの男は絶対に普段から奥さんの尻に敷かれている
はずだ。
つづく
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