男はすぐに出て行ったが、妻のアキコはまだ玄関に残っていた。
意味ありげに二人を見つめている。
「あなたの奥さんって上品で美人だけど、、、セックスは凄く下品なの知ってた?えげつないぐらい、、、スケベで貪欲で、さかりのついたメスみたい、、、」
コウヘイは息を呑み、ユキナは唇を噛み締め俯いた。
「このメモリーカードにそれが映っているわ、、、勇気があったら見ることね、、、本当の奥さんが分かるかも、、、」
アキコは出て行った。
そんなものを夫に渡していくなんて、、、
絶対に夫には見られたくない、、、
でももうわたしには、そんな権利は無い、、、
無言のまま二人はリビングへと戻った。
息苦しいほどの沈黙、、、
押しつぶされそうだ。
罪の重さに絶えきれずにユキナは口を開いた。
「本当にごめんなさい、、、」
「ユキナ、お前、、、ウソだらけだったな、、、」
夫はユキナを見向きもしない。
「アナタに嫌われたくなかった、、、アナタを愛しているの、、、だから、愛想を尽かされるのが怖かったのよ、、、」
「今更、そんなの信じられないよ、、、」
もうダメなのかも知れない、、、
でもここで諦めたら本当に終わってしまう。
「わたし、、、コウヘイしか知らなかったから、、、他の人に少しだけ興味があって、、、そんなとき、あの人と、、、そんな雰囲気になって、、、流されてしまったの、、、あの人のことなんて好きでもなんでもなかったよ、、、でもわたし、初めての浮気で舞い上がってしまって、、、ズルズルと、、、魔が差したの、ずっとアナタに申し訳ないと思ってた、、、もう二度と裏切ったりしません、、、なんでもします、、、だからお願い、許してください、、、」
ユキナは涙をこらえて頭を下げた。
「初めてじゃないだろう、、、ナオキのことは?」
えっ、、、どうして、、、夫は知っていたの?
村山ナオキ
高校時代の同年の友人だった。
夫のコウヘイの親友。
真面目な夫とは違い、茶髪に染めたヤンチャなイケメンだった。
話も面白くて女子には凄く人気があった。
夫もモテたけど、、、
夫と同じくクラス委員をしていたアイと付き合っていた。
わたし達はよくダブルデートをして仲が良かったが、
真面目なアイとナオキはよくケンカをしていた。
ある時、ナオキの浮気が原因で二人の関係が険悪になり、別れる寸前までいったことがあった。
そんなある日、偶然、街でナオキと出くわした。
あの陽気なナオキが哀れなぐらいに落ち込んでいた。
それでもユキナは散々に責め立てた。
益々落ち込んだナオキを元気づけるためにカラオケに行くことにした。
よく四人で行っていたから、、、
しかしこの日はコウヘイは実家の用事で町を離れていた。
別に二人きりでも構わないと思っていた。
二人は、いや四人は親友だ。
後でコウヘイに伝えれば問題は無いとその時は考えた。
落ち込んでいたナオキも次第に元気を取り戻し、デュエットしながら盛り上がり、ふざけ合うようにしてジャレついていた。
ユキナは三ヶ月前にコウヘイバージンを捧げていた。
早熟なカラダをしていたユキナはすぐにオンナの歓びを知り、コウヘイとのセックスにのめり込んでいた。
抱かれる度に女の幸せをより深く感じるようになり、それと同時に自分の性欲の強さに恥ずかしさを覚えるようになっていた。
それでいて普段は物静かで美しいユキナのカラダは男と触れ合っているうちに、いつしか熱い炎が灯り始めていた。
どちらから求めたのか今では覚えていないが、いつしか唇が重なり合っていた。
激しく舌を絡め合ったことは覚えている。
炎は燃え盛り、二人は我を忘れてカラダを重ね合っていた。
ユキナにとって初めての他の男とのセックスだった。
絶頂した後、二人は急に我に返った。
慌てて服を身に着けてカラオケ店をあとにした。
互いに大変なことを仕出かした罪の意識で、顔色は青ざめていた。
今後のことを打ち合わせしなければならない。
そう二人の考えは一致して、ナオキの家へと急いだ。
二人でいるところを人に見られたくない、、、
幸いなことにナオキの家には誰もいなかった。
二人で部屋に籠もり相談した。
このことは決して口外しない。
このことを二人は忘れ、二度としない。
出来るだけ早く、ナオキはアイとヨリを戻す。
それにユキナ協力する。
ダブルデートは二度としない。
二人きりで逢うことはもちろん、四人で逢うことも出来るだけ避ける。
馴れ馴れしい態度や不自然な行動は絶対にとらない。
二人は決め事を慎重に確認し合った。
これなら大丈夫と互いに見つめ合いながら納得する。
それで気持ちも落ち着き、随分と安心出来た。
見つめ合っているうちに、さっきの出来事を思い浮かべる。
慌ただしく、互いのカラダを確かめることも無く交わってしまった二人、、、
互いに顔が赤くなり、見つめる視線に熱が帯びてくる。
あんな慌ただしいセックスじゃあ、まるで物足りない。
ナオキは手を伸ばし火照った頬に触れてきた。
「ダメだよ、、、もう、、、」
弱々しく声しか出ない、、、
「分かってるって、、、でもこれぐらい、いいだろう?二人で逢うのはこれが最後だし、、、」
「そうだけど、、、でも、、、」
手を振り払うことが出来ない。
ユキナの瞳は潤み、ねっとりとした視線でナオキを見つめてしまう。
ナオキが唇と胸を見つめてくる。
わたしが欲しいんだ、、、
イヤじゃない、、、
むしろ、嬉しい、、、
わたし達、、、しちゃったんだ、、、
コウヘイには絶対に知られたくない、、、
でも知られなければ、、、、
大好きなコウヘイが遠くに行ってしまったようで少し怖い、、、
それなのに凄くカラダが熱い、、、
わたしのカラダ、、、へん、、、ガマン出来ない、、、
どうせ今日、シテしまった、、、今日中なら、、、
明日からコウヘイだけにすればいい、、、
明日からまたコウヘイ一筋に尽くすから、、、
許して、お願い、、、
ユキナはナオキの手に自分の手を重ねていった。
視線が熱く絡み合う。
「ねえ、、、決めたこと、、、明日からで、、、いいよね?」
「俺も、、、そう思ってた、、、」
ナオキに抱きしめられる。
「ああッ!ナオキ、、、」
「ユキナ!」
つづく
※元投稿はこちら >>