第十二章 秘密の裏側と日常の微笑み
1ヶ月後、美咲と圭介は穏やかで幸せな生活を送っていた。美咲は会社に通い、圭介と一緒に仲良く過ごしていた。毎日のように、新しいレシピに挑戦して夕食を作り、笑顔で食卓を囲む時間が二人の大切なひとときとなっていた。
「今日はどうだった?」
と圭介が尋ねると、美咲は微笑んで答えた。
「忙しかったけど、充実してたわ。あなたは?」
「俺も順調だよ。」
圭介は優しく微笑み返し、二人は自然と手を繋いだ。
あの撮影以来、美咲は露出願望には悩まされていなかった。二人の愛は一層深まり、穏やかな日常を楽しんでいた。しかし、心の奥底で時折蘇るその感覚に、美咲はまだ完全には無関心になれなかった。
美咲はあの日と同じ日曜日、部屋の窓辺に立ち、外の風景を眺めながら、あの日の舞台が終わった瞬間のことを思い出していた。
あの日、舞台裏に戻った美咲は、圭介と優奈、そして北川に迎えられた。彼らの表情には、ほっとした様子と満足感が漂っていた。
「美咲、本当にお疲れ様」
と圭介が微笑んで言った。
「ありがとう、圭介。想像以上の体験だったわ」
と美咲も微笑み返した。
その時優奈が最後のサプライズを話しだす。
「美咲さん…最後のサプライズをお話しします。」
美咲は驚き、目を見開いた。
「まだ何かあるの?」
優奈が少し照れくさそうに続けた。
「今日の全ての出来事は、あなたのために計画されたものだったんです。」
美咲は驚きで目を見開いた。
「どういうこと?」
「アーケードにいた買い物客や、イベントの観客、そして全国中継という話も…全部嘘だったんです」
と優奈が説明した。
美咲は一瞬言葉を失ったが、次第に理解が深まっていった。
「でも、どうして?」
「美咲、君が安心して自分の願望を追求できるように、全て演出を整えたんだ」
と圭介が優しく言った。
「本当のことを言えば、君が自分を見つめ直し、自由に表現できる場を作りたかったんだ。」
北川も頷きながら、
「美咲さん、実は私はあなたが自分を解放し、自由に表現できる姿を見て、とても楽しませてもらいました。そして、それをサポートすることが私にとっても喜びでした。それから、今日のエキストラ全員から誓約書も取っているので安心してください」
と言った。
美咲はその言葉を聞いて、胸がいっぱいになった。
「私のために…そこまでしてくれたの?」
「もちろんさ、美咲。君の幸せが一番大切だから」
と圭介が優しく言った。
「それに、君がどれだけ勇気を持って自分を表現したか、よく知っているからね。」
「そして、何よりも君が自分自身を信じて行動したことが素晴らしいんだ」
優奈も微笑んだ。
「私たちはその姿に感動したの。」
美咲は涙を浮かべながら、三人に感謝の気持ちを伝えた。
「ありがとう。こんなにも思ってくれるなんて…私は本当に幸せ者だわ。」
美咲、圭介、優奈、そして北川は笑顔で抱き合い、美咲の心には、愛と感謝の気持ちが溢れていた。彼女の願望を理解し、支えてくれる人々がいることの幸福をかみしめながら、美咲はこれからも自分の人生を力強く歩んでいくことを誓った。
窓から差し込む夕日が、彼女の表情に穏やかな光を投げかけている中で、舞台の感動や喜び、そして周囲の人々の温かい言葉が心に蘇ってくるのを感じていた。愛と勇気、そして支え合う絆を胸に、彼女は自分の人生を全力で生き抜いていくのだった。
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