玄関に夫の靴がある。
夫はかなり遅くなるようなことを言っていたはずなのに、、、
予想外のことに同様するが、心を何とか落ち着かせてリビングへと向かう。
「ただいま、、、ごめんね、遅くなって、、、優香はご飯食べたよね?あなたは?まだだったら、何か作ろうか?」
リビングには夫と娘がいたが二人とも返事は無い。
黙ったまま美子に視線すら向けてもこない。
イヤな予感がする。
「ど、どうしたの?何か、、、あった?」
思わず、声が震えてしまう。
「どこに行っていた?」
夫の声が何時になく冷ややかなものを感じさせた。
「えっ、、、エリナと逢ってたよ、、、今朝、そう言ったでしょう?でもゴメンね、、、エリナと話し込んじゃって、、、こんな時間になってゴメンなさい、、、」
動揺を悟られないように何とか言い訳をする。
大丈夫、親友のエリナには最悪口裏を合わせるように頼んである。
「じゃあ、エリナさんに電話してみてくれ、、、話したいことがある、、、」
いつもの夫とは思えない執拗さに、不安が更に膨らむが、ここでヘンな態度を見せる訳にはいかない。
しょうが無いわねという態度を見せながら美子は言葉に従った。
「何なの?いいわ、、、今するね、、、」
大丈夫だ、絶対に、、、
エリナはうまくやってくれる、、、
エリナと電話をつなぎ、白々しく辻褄を合わせて会話をする。
それも最悪な場合を考えた想定内だ。
分かったでしょう?
そんな目をして透を見つめる。
「ちょっと俺と変わってくれ、、、」
透は挨拶と今日、妻が世話になったことのお礼を済ませた後、ご主人のユウジと変わってくれるように頼み出した。
それはマズいことになるかも知れない、、、
案の定、エリナも理由をつけて断ろうとしているようだ。
「いいですよ、、、それなら、ユウジさんに直接電話しますから、、、」
エリナは押し切られてしまったようだ。
美子の頭に赤信号が灯っていた。
ユウジは生真面目でウソは絶対につかない。
マズいことになりそうだ、、、
夫はユウジとも挨拶を交わすとすぐに会話を始めた。
「そうですか、、、ユウジさんは今日休日でエリナさんとずっと一緒にいたんですか?美子がおじゃましたと思うんですけど、、、、、そうですか、、、、、来ていない、、、、、すいません、こちらの勘違いみたいです、、、すいませんでした、、、じゃあ、あらためて、また、、、」
夫は電話を切ると、より冷ややかな目つきで美子を見つめた。
つづく
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