きっとそうだ、、、そうに違いない、、、
あの人がお母さん、、、
父のおかげで、もう憎しみなど感じない、、、
それに今のわたしには、、、
とにかくいろんな事を話したい、、、
何から始めたらいいのか分からないぐらい、、、
時間はたくさん有る、そう思っていた。
二人はなかなか戻って来なかった。
あまりにも遅すぎる。
待ちきれなくなったとき、娘のルイだけが戻って来た。
「おばあちゃんは?」
「うん、、、もう少ししたら、来るって、、、ママと一緒に待っててねと言ってたよ、、、」
「そう、、、」
待ち遠しい、、、
しかし母はいつまで経ったも、戻って来ない、、、
「あのね、、、おばあちゃんの名前、、、詩織って言うんだって、、、」
やっぱり、、、
「それにね、、、これ、ママに渡してくれって、、、」
それは預金通帳と印鑑だった。
シズカの名義になっている。
そして驚くことにその残高は一千万を超えていた。
毎月、丁寧に五万ずつ休むこと無く、貯金されていた。
わたしのために、、、
女一人で楽だったはずがない。
きっと身を削るようにして、苦労して貯めたお金に違いなかった。
涙がこぼれそうだった。
そのとき、ひらりとメモ用紙のようなものが足元に落ちた。
走り書きのようではあったが、温かみを感じさせる優しい文字だった。
その内容は、、、
本当に御免なさい。
シズカのこと、あの人のこと、ひと時も忘れたことはありません。
あの人は庇ってくれたけど、わたしが全て悪かったんです。
わたしは許されない過ちを犯してしまいました。
でもあの人を、シズカを心から愛していた事に嘘偽りはありません。
今日は本当にありがとう。
最後にルイとタイシに逢えて本当に良かった。
このお金はシズカのものです。
遠慮なく使って下さい。
シズカのために貯金すること。
それだけがわたしの生き甲斐でした。
あの人の最後の話、聞かせてくれてありがとう。
これで何の気兼ねもなく、あの人のそばに行くことが出来ます。
これは前々から決めていた事です。
誰にも止めることは出来ません。
最後まで勝手な母を許して下さい。
最後の最後にひとつだけお願いがあります。
もし許されるなら、わたしの骨をいつかタカヤのお墓に埋めて欲しい。
最後になりますが、シズカはわたしのたったひとつの誇り、そして希望です。
幸せになって下さい。
ところどころに涙で滲んだ文字でそう書かれていた。
シズカは泣いた、、、
お母さん、、、わたしはそんなお母さんが誇りに思うほど、立派な娘なんかじゃないんだよ、、、
シズカは涙がかれるまで泣き続けた。
詩織の最後の望みは叶えられた。
つづく
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