「もう店には来ないで欲しいそうだ、、、これはロッカーの中にあったと言ってた、、、お前の荷物を他にも店長が持ってきてくれたよ、、、」
「ごめんなさい、、、許して下さい、、、」
「お前が、、、こんなことまでしているのに、、、なぜ許して欲しいと言えるのか、、、俺には分からない、、、もう本当に終わりにしよう、、、俺はシズカを迎えに行って、そのまま帰らない、、、明日までに出て行ってくれ、、、」
「待って、、話を聞いて、、、」
「聞く必要は無い、、、お前のことはもう何一つ信用出来ない、、、さっきも、お前は平気で誤魔化そうとしてたじゃないか、、、」
「アナタだって、、、ユキエさんと逢ってるんでしょう?」
問い詰めるように詩織が言った。
「何のことだ?」
「分かってるんだから、、、あの女と、わたしの悪口を言って、、、イチャイチャして、、、わたしにはシテくれないクセに、、、ユキエとシまくってるんでしょう?」
「バカだな、、、お前は、、、俺は、あれから一度もあの人とは逢って無いよ、、、誘われたけど、断ったよ、、、」
まさか、、、
「そんなの、、、ウソよ、、、」
わたしはあの女にも騙されていた、、の?
詩織の言葉は震えていた。
「ウソじゃない、、、でも、もうそんなことはどうでもいい、、、」
冷たい目をしたタカヤはそう言うと家を出て行った。
わたしが頼った人はみんなウソをついていた。
でも今更それを責めても遅すぎる。
きっと心の中でセックスしか頭に無い、騙しやすい女と嘲られていたんだろうな、、、
憐れな女の末路を嘆きながら、詩織は荷物をまとめ始めた。
もうひとつだけ、やり残したことがある。
タカヤとシズカを失ってしまった今、それに縋ることしか自分にはもう残されていない、、、
ことのほか荷造りには時間がかかった。
たくさんの思い出がこみ上げてきて、涙が溢れそうになる。
全て自分のせいだとこらえているうちに夜が明けていた。
まだ時間は早すぎるが、ガマンが出来なかった。
やり残したこと、、、
最後の望みの綱、、、
きっとうまくいく、、、
詩織は電話をした、、、
しばらくして電話は繋がった、、、
「ど、どうしたの?こんなに朝早く、、、詩織さん、、、なにかあったの?」
シュウジは戸惑うように尋ねてきた。
「きのうはゴメンね、、、突然、シュウジの部屋にいったりして、、、迷惑かけちゃったね、、、」
「、、、」
「わたし、、、家を出ることになったんだ、、、」
「えっ、、、そんな、、、」
「ううん、気にしないで、、、それでね、、、シュウジと二人でやり直したいと思って、、、誰にも知られない場所に行って、二人だけで暮らさない?」
「えっ、、、そんなこと、、、ムリだよ、、、」
すげなく断られたことにショックを受ける。
でも諦めずに縋りつく。
わたしにはもうこれしか無い。
「わたし、シュウジを絶対に幸せにする、、、何でもする、シュウジのシタいことなら、何だって、、、お願い、わたしにはもうシュウジしかいないの、、、」
「そんな勝手なこと言われても困るよ、、、だいたい、詩織と俺じゃ年が離れ過ぎてるし、、、」
そんなこと気にならいと言ってたじゃない、、、
年上だけど愛しているって、、、
「俺は若いし、、、未来があるんだよ、、、そんなこと出来るわけないじゃないか、、、」
「だって、、、シュウジ、、、わたしを自分だけのものにしたいって、、、わたしさえいれば、、、何も、、、いらないって、、、」
「それは、、、詩織みたいな美人な人妻に、、、あんなにエッチなカラダで迫られたら、そんなことだって言っちゃうよ、、、でも、やっぱり俺、、、彼女のこと好きだし、、、詩織とは、、、無理だと思うんだ、、、」
この若者には何の真実も無かったんだということに、今更ながらに思い当たっていた。
シュウジはわたしという人妻と、単なる火遊びをしたかっただけなんだ、、、
それを見抜けず、家族を裏切り情事に溺れていた自分、、、
全部、幻だった、、、
そして終わりがきた、、、
当然の報いが、絶望という報いが詩織に襲いかかってくる。
最後の賭けはものの見事に崩れ去った。
愚かなオンナ、、、
家庭を失い、何もかも無くしてしまった。
「そんなに深刻にならないでさ、、、旦那さんとやり直しなよ、、、うまいこと言い訳してさ、、、」
まるで他人ごとのようにシュウジは無神経な言葉を口にしていた。
「大丈夫だって、、、詩織はイイ女だから、、、ほら、セックスレスだって言ってたじゃん、、、旦那さんだって溜まってるよ、きっと、、、そのスゴイ体で誘って、一回しちゃえば、何とかなるって、、、、、それに、、、そんな深刻なことは抜きにして、、、もう一回だけ、、その、逢えないかな?」
何をしたいのかすぐに分かった。
「わたしと、、、セックス、したいの?」
「うん、、、ダメかな?あと一回だけ、、、詩織のカラダ、、、最高だから、、、最後に思いきり抱きたいんだ、、、」
この男はクズだ、、、本物の、、、
怒りよりも情けなさがこみ上げる。
わたしは、、、クズな男にばかり、、、外れの男にばかり夢中になる。
「いいよ、、、いっぱいエッチしようね、、、」
口先だけの約束だけをして電話を切った。
誰がお前なんかともう逢うものか、このクズ男、、、
心の中でシュウジを罵るが、いざとなれば逢いに行ってしまいそうな自分が怖い。
そんなとき、来客を告げるチャイムがなった。
タカヤかも知れない、、、
詩織は玄関へと急いだ。
つづく
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