翌朝になってもタカヤの機嫌はよくなかった。
そして、それ以上に顔色が悪く見えた。
心配で声をかけたが、返事もせず、詩織を見ようともしないで会社へ行ってしまった。
タカヤのことが気になってしょうが無い。
昨晩、ユキエと逢ったことが関係しているのは間違いない。
今朝の態度といい、自分に絡んだことだとも思う。
だが思い当たる節が無い。
もちろんあれ以来、あの男とは何の連絡も取ってはいない。
途方に暮れた詩織は考えた末、ユキエに連絡してみようと思い立った。
気は進まなかったが、他の手立てがまるで無い。
電話はすぐに繋がった。
挨拶を交わして、すぐに本題に入る。
「実は主人の様子が昨夜から少しおかしくて、、、昨日、ユキエさんとお逢いしたと伺ったものですから、、、その、、、何か、ご存知かと思いまして、、、」
しばらく黙っていたユキエは打って変わって、くだけた口調で話し始めた。
「ふーん、、、ご主人、、、詩織さんに何も言わなかったんだ?」
「何か、、、やっぱり、、、あったんですか?」
「それは、、、わたしからは言えないわ、、、ご主人に直接、聞いたらどう?」
「でも、、、わたしには、、、話してくれる雰囲気では無くて、、、」
「それも、、、元はと言えば、自分自身のせいではなくて?」
「えっ、、、」
厳しい指摘だった。
今までの口調と一変して、突き放すような言葉が詩織の心をエグる。
「あなた、、、あの時もしおらしい態度をしていたけど、、、ご主人やわたしの本当の苦しみなんて分かっていないんじゃないの?」
そうかも知れない、、、
「わたしも見たわ、、、あんな夫婦でもしない、ケダモノみたいな汚らわしいセックスをしておいて、、、好きだとか愛してるとか平気で浮気相手に口にして、、、わたしだったら、、、いいや、、、わたしが言うべきことじゃ無いわね、、、とにかく聞きたい事があるなら、直接ご主人に聞くことね、、、」
その通りだとは思う、、、でも、、、
加害者である自分がこれ以上は、、、
「分かりました、、、お時間を取らせてすいませんでした、、、」
電話を切ろうとした時、再びユキエが話を始めた。
「詩織さん、余計なことかも知れないけど、、、タカヤさんはアナタが思っているより、ずっと魅力的な男性よ、、、しっかりしていないと、今度はアナタが本当の苦しみを知ることになるかもね、、、じゃあ、、、」
電話は切れていた。
そんなことは言われなくても分かっている。
タカヤが本当はモテることも、、、
その気になれば、いくらでも浮気だって出来ることも、、、
でもタカヤはしなかった、、、
そして、、、わたしはシタ、、、
つづく
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